2+馬鹿と天才は紙一重なんて嘘。
「ねぇアサ君、アサ君の頭は何で出来てるんだい?」
そうやって時折話題を振ってくるのは二:八の割合で圧倒的に我が片割れユウヤである。
こんばんは、きっと夜ですアサキです。また馬鹿が馬鹿言ってる。
「何って言われても」
「アレでしょ、もしかして某アニメーション、略してアニメの中にありそうな改造手術を受けたからそんなに頭が良いんでしょ」
「馬鹿野郎」
サクッ。
「ぐふぉあほぁ!!!!」
変な奇声を上げるな馬鹿。僕が持っていたシャープペンシル、略してシャーペンをユウヤの脳天に突き立てた、いやマジで。
向かい合う様に座っていたユウヤはゴロゴロと地をはいずり回っている、何とはしたない。
「おいユウヤ、とっとと写し終えろ。僕が勉強出来ない」
「ふぁい」
只今僕等は二人で仲良く勉強中――コイツの半強制的に――……の筈なんだけど、大体はユウヤが僕のノート写してるだけ。何故かって? 只ノート提出が近いからだよ。何故近いかって? ――テストがあるからです。略してテスある。……これは略せねぇな。
「お兄ちゃんはアサ君みたいな優秀な弟を持って幸せですよ」
「そうだね馬鹿」
「アサ君が居なかったら今頃お兄ちゃんの成績に煙突が立ってしまう所でしたよ」
「そうだね馬鹿」
「アサ君は運動も出来るし凄いよね」
「そうだね馬鹿」
「……」
WIN、僕。
……流石に可哀相なのでやめる事にした。でも授業中にフルカウント寝てるから最後只の棒球でアウトになんだよ、棒球だって分かってんだから僕みたいにツースリーでバスターしかけろし。……我ながら一部にしか判らない気がすると勘付く僕、野球好きなんだよ。
「でもさ、やっぱ血を分けた双子だというのに不公平だと思わぬかねアサ君」
「何が」
「アサ君は勉強出来て運動出来るのに俺は運動しか出来ない、これを不公平と呼ばす何と呼ぶ!?」
「努力」
「あー君努力なんてしてないでしょ!?」
「だったら僕だってユウヤの大量な体力が欲しいよ」
自慢じゃないが、僕の体力は激皆無だ。バスケでいうなれば、三分程でダウンする自信がある。に、比べてユウヤは持久力に関しては恐らく二年でずば抜けて高い。何、何食ったの? お前こそ改造手術とかした?
「まーまーアサ君、良いじゃないですかアサ君。とりあえず今はテストに向けて勉強を頑張りましょうよ、略してテス頑」
「だったら早く写し終えてよ、僕其れないと何も出来ないんだから、後、その略は無理があんだろ」
其れだけ言うとユウヤはノートを写す作業に戻った。僕は暇な時間で何をしようか迷いつつ、結局無駄にぼーっとしてしまったのだが。
――数時間後。
「アサ君」
「……」
「あー君」
「……」
「アサちゃん」
「ちゃん言うなコラ」
起床。
やばい、寝てた。
「暇だからって寝るのやめようよアサ君」
「ちょっと自分でも油断した。……で、終わったの?」
「うい!」
そう元気に返事をして、僕に其れを見せてくるユウヤ。あらー、何か僕よりカラフリティな気がするけど此の際気にしないよ僕。此の所為でユウヤのノートの点数が僕より高いだなんて事知らないからね畜生。
「じゃ、ノート返すね」
「うん。……じゃ」
「……じゃ?」
「……寝る」
ノートを机の端に置いて部屋を後にする。勉強? 何其れ食べれんの?
一度寝てしまったらやる気が失せた典型中の典型な僕。ユウヤの唖然とした顔、うん、予想されていた反応。
「ちょ、アサキ!? 勉強しないの!?」
「あー君眠くなってきたから明日にする」
自分でも変なテンションだと分かっている。しかし眠いと誰でもこうなっちゃうよね?
「いや、テスト明日だから、何時やる気なの其処のあー君!?」
「休み時間に決まってんだろうがー。……中学のテストなんて高が知れとろう、勉強なんざせんくともどうにでもなるわ!!」
全国のテスト嫌いの中学生様ごめんなさい、本音です。
授業とかちゃんと聞いて、問題集とかやればテストなんてどーにでもなるさ、はははははっ!
「……い、いーもんね! 俺アサ君より沢山勉強してアサ君より良い点数叩き出してやるから!!」
「出来るものならば出してみやがれってんだ!」
そう言って、僕等の勉強会(?)は終わった。ちなみに言うと今回のテストは二学期の期末です。……凄く大事っぽい。
「ようユウヤ、何点だったよ」
「ん? 何の事ー? あはははは」
と、学校の廊下で僕が話をはぐらかされるのはすぐ数日後の事。