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199+何だか騒がしいクラスの一角。


「――へぇ、お前地元なんだー、じもてぃーだな!」


「じもてぃーってふっる! 其れ死語だろ!」



 ――という感じでクラス中が目指せ友達百万人☆ 計画中の中、相変わらず席を動かない根暗です、間違えたアサキです。誰が根暗だゴルァ。

 百万人は言い過ぎたが皆の勢いはそんな感じ、ちなみに僕の勢いは其れの零剰といったところか、要するに一、――今零剰を零だと思ったやつが居たら出てこい、笑ってやる――。所謂可もなく不可もなく、ぶっちゃけどうでもいいんだよ。



「す、すみません、通りますー……っと、危ない危な――うぎゃ!」


 とか何とか考え耽ってると大抵色んなことが起こるんだ大丈夫僕学習してる。

 教卓に(たむろ)する生徒の間をすり抜けようとした推定身長百五十センチ代の男子生徒は一度躓きそうになり、体勢持ち直し――たと思ったらまた躓いて本格的にズッコケた。油断大敵を身を持って教えてくれた感じだ。

 其の男子生徒は教卓でこけた、のだから当然こけ倒れてるのは教卓真ん前の席――僕の真横。放っておくべきだと僕の中の何かが言っているが其処まで人で無しになった覚えも謂れもなく。



「……大丈夫?」


「――……」


 返事はない、ただの男子生徒の骸なようだ。


「はう!」


 あ、動いた。久しぶりに使ったな、屍ネタ。


「頭打ったっす……痛い……」


 起き上がった彼はそう言って脳天を押さえている、馬鹿みたい。……つい本音が。此処はひとつ、気分を紛らわす為に。


「見事な二度返しズッコケだった」


 紛れてねぇよ僕。


「ありがとうございますヒコク君! 超痛いけど!」


 だが凄く嬉しそうだから放っておくことにしよう。僕の苗字知ってるってことは、どうやら彼はうちのクラスらしい、ぱっと見印象が薄いから僕は知らなかった――というか担任くらいしか印象ない――けど、誰だろうこいつ。名前の順遠いんだろうな、知らないから。


「席に戻ろうとしただけなんすけどね!」


 がたん。

 ――どうやら僕の真後ろの方のようだ、先の話は聞かなかったことにして欲しい。


「ええと、ヒコク君でいいんすよね?」


「うん、まあ」


「変わった苗字っすよねっ! あ、ボクも言えた義理はないんすけど」


「へぇ」


「……ヒコク君、ボクの名前知ってます?」


「残念ながら知らない」


「あははっ、そうっすよねー!」


 元気な奴だなこいつは、名前何ていうんだろうか。苗字すらも知らないとなると此れはやばい。でもまあ此れなら聞いちゃっても構わ――



「――所詮ボクの名前なんて誰も覚えてないっすよねー……あはは」



 ――なくないようだ。なんだこいつ、急に雰囲気がネガティヴになったよおい。流石の僕もびっくりだ。


「実はボク、クラスに友達誰も居なくて、ホント友達作りとか苦手で苦手で昨日なんて通常日課始まるってんで不安過ぎてほぼ完徹っすよーあははははっ」


 顔が笑ってないんだけど。


「今こーやってヒコク君と話せたのはすんごく嬉しいんすけどね? 偶然の産物っていうか怪我の功名っていうか? えへへ、でもきっとヒコク君はボクみたいなのと友達にはなりたくないだろうなーとか考えちゃうお年頃なボクはですねー――」



 落ち着け僕、高校入って最初に会話した奴がこんなキャラ濃いと思わなかったが落ち着け。翻弄されるなんて向いてないぜ、という訳で――



「黙れフドウ」


 まずは黙らせましょうか。


「――はい!」


 実に素直な良い返事、根は良い子みたいだ。


「て、ていうかヒコク君、ボクのこと知ってたんすね」


「まぁな」


 横に掛かってた鞄の名前見たとか口が裂けても言わないが。


「すみませんっす! 一度入るとどーしてもマイナス思考抜けなくて……」


「別にどうでも良いけど、興味無いし」


 鞄によれば彼の名前はフドウ シギ――確かに変わった名前だ。

 慌てた様子のフドウ、どうやら嫌われたとでも思ったみたいだが……まぁ良い、僕の嫌いな人種ではない。


「フドウ」


「はいヒコク君!」


「一年宜しく」


「は――は、はい!」


 視線は前に戻してしまったけど、声音的にフドウは、満面の笑みを浮かべている様子だった。






「まあ、一年だけだろうけどな」


「そんなぁ……!! 末永くが良いっすー!!!!」


 からかい甲斐もあるみたいだ。




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