195+明日からの再出発に向けて。
「あ、す、かー!」
「はい?」
呼ばれた通りアスカです。本日はお日柄も良く――嘘ですけどね、今日は雨ですから。春休みも最終日、という訳で久しぶりにユウヤの家に来てみたのですが――もしユウヤが居なくても、アサキ君は絶対居ますからね――、買い物に行くというので着いて来ました。
「カートでどーん!」
「はいはい」
良い歳して買い物カートで遊ばないで欲しいですね、俺は微笑ましいと思いつつも知り合いと思われたくなかったで返事をしつつあらぬ方向を見ました。
――どん、がしゃん!
――見ておけば良かった。
「ユウヤ!」
「缶詰の波に呑まれるぜ!」
「その波を作ったのは何処のどいつですか」
ユウヤを乗せたカートが過ぎ去った方向を見れば、缶詰タワーをぶち壊したユウヤが何故か堂々としていました。まあ、怪我は無かったようなので何よりです。
店員さんにペコペコと頭を下げてタワーを直してからのユウヤは、普通にカートを押してましたが。
「でもアスカ、何で着いて来たの? 俺が買い物行くって言うと何時も家で待ってるのに」
「たまには良いじゃないですか。……それともユウヤ、俺と居るのは嫌……?」
「んなことないけど! 寧ろウェルダン!」
其処はウェルカムの間違いですね、何でそんなにこんがり焼かれなくちゃいけないんですか。
まあぶっちゃけてしまいますと、アサキ君とマヒルお兄さんが一緒んなってあれだけゲームに集中していたら居にくいじゃないですか。何なんですアレ、恐過ぎますよ、無言のコントローラータイプ音程怖いもんはありませんよ。しかも異様に早いっていう、画面上では凄い迫力でキャラが動いてるのにアサキ君とマヒルお兄さんぴくりとも手以外の他が動かないんですから。そしてより怖いのが二人共パジャマだったってことなんですよ、どれだけ集中し切って――というか一日中やってる気満々じゃないですか。
「アスカー」
「何ですか?」
「んーん、今日夕飯食べてかない?」
「はい、是非とも頂きますよ」
「やた!」
あの環境で笑顔で居られるユウヤに、少しだけ尊敬の念を抱きました。
「明日から学校かー、楽しみなような嫌なような」
ビニル袋をぶら下げてユウヤが呟く。確かにそうだ、明日から学校、ユウヤ達は自転車通学でしょうが、俺は明日から電車通学です。体調管理を怠らないように気をつけなきゃいけませんね……。
「ね、アスカ」
「はい」
「学校違っても、一杯遊ぼうね」
「ええ」
「何時でも夕飯食べに来て良いし、俺すっげぇメールしちゃうから!」
「ありがとうございます」
メールは程々に、と言いたかったけれど、何とも憎めないユウヤの笑顔に、つい言いそびれてしまいました。
きっと心配なんでしょうねユウヤは、毎日俺や友達と会えなくなるのが。明日から再出発といった感じですし。……でも心配してくれなくたって、俺はユウヤと離れるつもりなんてさらさらないんですからね?
ま、口には出さないでおきます、何時かまでお預け、ってことで。