194+天の神より身近な神。
「めぎゃっぷ!」
「いや、何よそれ」
カイリだ、アサキん家に宿題しに来たのは良いんだけど、当のアサキは毎年のことながら春に当てられているみてぇだし。ろくに話なんざ聞いちゃいねぇんだよなー……ホント、今年も話しちゃくれないんだろーどーせ。ま、気にしねぇけど!
という訳で代わりと言っちゃ何だがマヒルさんにヘルプを頼んだ訳だ、大学は始まったらしいが家戻るのは土日明けとか何とか。俺はそれであってくれて助かってんだけど。
最初に聞こえたのはキッチンに居るユウヤの声。めぎゃっぷ……悲鳴なんだろうな、俺は其処ら辺のことは深く考えないで首を傾げた。
「ユウヤどしたー?」
「何でもないと言えば何でもないんだけど! 何かあったと言えば波瀾万丈!」
遭ったんじゃねぇか。
机を挟んで俺の正面に向かうマヒルさんは立ち上がってキッチンに向かった。――が、その直後。
――バチンッ!
キッチンから凄い音がした。
「え?」
「!?」
「……」
唖然とする俺と慌てるマヒルさん、そして毎度お馴染み無反応なアサキ。とりあえず俺も立ち上がってキッチンの方に来てみたら、三角巾にエプロンと、何処の調理実習生だよとツッコミたくなる格好でユウヤがキッチンにダイブしていた。何してんだ。
「あ、頭を低く」
「地震じゃねぇんだから」
キッチンで頭低くしても逆に危なくないか、降ってくんぞ。
「俺は悪くないもんね! オーブンレンジのオーブンあっためようとして間違えてレンジ回してただけだし! なのに何で火花!?」
マヒルさんはそんな体勢のまま慌てるユウヤから目を離し、問題のレンジを見ている。――中からアルミホイルに乗った冷凍のポテトが出て来た。……アルミホイル? そうか、これがさっきの音の原因か。
「誰だっ、俺が午後からクッキー作りに勤しむと知っておきながら温め忘れた冷凍食品なんぞをオーブンレンジに置き去りにしたのは……!」
午後からクッキー作りに勤しむと知っていたかどうかは定かじゃねぇけど、俺的には現在進行形でリビングに居座るあ奴が怪しいと思う。
当の本人も動かないながらこっちを見ていて、俺と目が合えば呆れた様子で溜息をついた。
「僕じゃないぞ」
「うっそだあ、お前以外誰が居んだよ、つーか何で火花散るんだよ」
「残念ながら。電子レンジは電波を使う、電波も電気、アルミホイルは電気を通す訳だから――」
「もう良い、何言ってっか分からなくなってきた」
とっとと元の体勢に戻りつつ説明されたけど分からないからいいや。
「因みにその電波――マイクロ波はその食品内部の水分子にエネルギーを与えて加熱す――」
「兄貴! 詳しく補足説明すんな! 頭痛くなるから!!」
畜生、頭良いなこの兄弟――かっこ叫んでるユウヤは除く――。
「悪ィ、アレ俺だわ」
苦笑しながらそう言ったのはマヒルさん、昨日の夜に温めようとして忘れたらしい。ほー、神様にも間違いはあるってホントだな!
「カイトくん今何考えた?」
「いんや何にも」
やっぱり神は凄ぇ。
宿題も全部終わったし、人生やっぱり神頼みってやつだなー。