190+無駄遣いは我が身を滅ぼすのでやめましょう。
「アサキ、カイリ君から電話だよ」
「五分待たせて」
アサキだよ、あの野郎なんて時に電話してきやがる、捕獲中だぞ(※ゲームの話)。
「こらこら、お友達を待たせちゃ駄目だよ?」
「トモダチじゃないです、赤の他人です」
ユウヤならあっさり「あ、カイト君? 大分待ってー」となるのだが、今日は父さんだ。仕方なく受話器を受け取れば肩で持ってゲームを続ける。
「何、用無いなら切る」
『未だ何も言葉発してねぇだろうが!』
まぁ最もだが僕は忙しいんだよ。
『ふっふっふ、アサキよ』
「何」
『俺は今携帯から電話してる訳だぜ!』
「あぁそう、で?」
『……』
「じゃ」
『ままままま待ったっ!!!!』
何なんだよ、僕はどうすりゃ良かったんだよ、教えろよ。
「アサキ、父さん買い物行って来ます」
「おーう」
『ええと、ほら、携帯だぜ?』
「は?」
『だーかーらー! 俺携帯買ったんだって!!』
「……其れが?」
高校に上がるからだろうか、確かに高校上がると同時に買う人って多いよな。だが其れでカイトが僕に電話をしてきた理由が良く分からない。
『……まあ、ぶっちゃけ試しに電話してみただ――』
ブツッ、ツーツーツーツー……
やっぱりどうでも良い用事だったじゃねぇか……!
僕は雑に逆手で通話を切れば子機をそのままソファに投げ付けた。さて忙しい、今から僕は――ゲームの――自宅に帰らなければいけな……はあ。
Prrrr...
「チッ……――ただいま留守にしております御用のある方はピーッという音の後に御名前と御用件を御話下さいファクシミリの方はそのまま転送――」
『そういえば貸してた漫画の最新巻を買った』
「貸してください」
ついつられた。
『今切ったろ!? 此の俺様の電話を切りやがって! 携帯の電話料金馬鹿になんねぇんだからな!?』
「るせぇよ、じゃあ何でかけ直して来たんだよ」
『お前が切るからだろうが!』
嗚呼面倒臭い。仕方なくゲームをやめればソファに上がり、ただ今誰も居ない家でのびのびする。
『初めての電話なんだから少しくらい話させろよー』
「ユキ君とやって下さい」
『なろっ』
カイトは文句たらたらだけど、僕は特にありません。このまま寝たっていいんだもん、暇って素晴らしい。
『な、アサキは携帯買わねぇのかよ?』
「はぁ? あの人間を時間や他人と言うしがらみに縛り付けると有名な携帯を……?」
『解釈の差だろ其れは』
まぁ確かに。でも僕買ったって使わないと思うよ。
『何だよ買わねぇのかよー、つまんねー』
でもまあ――
「――買わないだなんて誰が言ったよ」
「たっだいまー!」
噂をすればなんとやら。相変わらずの元気な声でリビングにユウヤとマヒルが現れた。
「じゃーん! 俺赤にしたんだーっ! まあ赤って言ってもワインレッドっぽいけどね」
「んでお前のがこっち、本人来ねぇとか前代未聞なんだけど」
人が電話してることに気付いてるのか否か、ユウヤはそんなテンションのまま僕にワインレッドの新しい携帯を見せてくる。普通箱とかに入ってるんだけど……嗚呼、車ん中でもう出したの、荷物はマヒルが持ってるの、嗚呼そうなの。
マヒルは僕の横に紙袋ごと持っていた物を置いて、つっかれたー、と愚痴を漏らしている。
『もっしもーし』
「はいはい」
『今買い行ってたんだな』
「そういうこと」
『何故自分も行かない、普通携帯とかは自分で決めないか?』
「怠かったからユウヤと一緒で良いって言った」
『……そ』
携帯を掲げてうろうろするユウヤを見遣りつつ、そのままカイトと数分電話した。僕の携帯の色はネイビーブルーとか書いてあるから青だな。
……ま、今度設定しよ、怠いし。寧ろ其れも任せるか、ユウヤに。