19+続・生きる意味 思う事。
「兄ちゃん」
「いきなり昔の呼び方で呼ぶの止めない? 兄ちゃんびっくりするから」
こんばんは、ユウヤです。今日はマヒル兄と母さんから頼まれたお使いです。おせちの材料買い出しですよ。え、アサ君? 朝からカイト君ん家に行ってますよ。駄洒落かってんだ、何してんだか。
「じゃあクソ馬鹿兄貴がいい?」
「其れはアサキの呼び方だから、ユウヤに呼ばれたら傷付く。てか兄ちゃんで良いよ、やっぱ兄ちゃんが憧れ」
「どうでも良いから気持ち悪い」
爽やかな笑顔で言ってやると何かショボンとした。マヒルの前だとやっぱりツッコミは俺だよな。ま、リバースしますが今は俺だね。
「んでね、話は昨日にまで遡るんだけど……――思春期って何なのかな?」
「話が読めない」
だよね。
「実は昨日――」
――昨日の会話を話し終えて。
決してサボった訳じゃないよ?
「あぁ、アサキと喧嘩したのな」
「してないよ、人の話ちゃんと聞いてたのかな」
「聞いてたぜ? でもお前等の会話があまり噛み合ってなくて大変だった事も分かった」
一歩間違えたらお前等が喧嘩する所だったんだろ? ……とマヒル兄は続けた。
何も言えない俺。
「大変だよなぁ……お前等くらいの年頃ってのはよ」
「そなの?」
「おう、アサキが話した通りに思春期は大変なんだよ。男子はあまりないんだがな……女子に良く見るよな、そういうの」
ほう、やはりそうなのか。……ま、女子との交流多いけど良く分からない。
「俺はアサキが多分そうなると思ってた」
「は?」
「だから、その、アサキの言う、中二病?」
なぬ、アサ君が? そりゃまたどうして。
「性格暗いし友達少ないし」
「何か色々無関心だし根暗っぽいし」
「アサキは良い子だ!」
「アサ君を悪く言うな!」
何だよ俺達。馬鹿みたいじゃん、店でそんな事叫んで。夕方頃で人も多いスーパーだった、ごめんなさい奥様方。
「話戻す。……アサキは分かりにくい可愛さがあるんだよ。良い子なのも分かりにくい、憎まれ口ばかり叩くしな」
「確かに」
「だーかーら、中学くらいまで来たら何かしら陰口とか叩かれたりして、そうなるんじゃねぇのかなー……と、兄ちゃんは思っていた訳さ」
「其の心配はなっしんぐーよマヒル兄。アサ君ああ見えてかなり強い子だもん」
中一の時に虐められっ子を助けた経験だったあるんだぞ! よく喧嘩した友達の仲介だって――嫌々――するし! 友達って言っても、アサ君がそう思っているかは知らないけど。
「そっかー。そっかそっか、ならいいんだけど……」
「うんうん」
「……アサキは――抱え込むタイプだからなぁ……」
……うん? 最後が聞こえなかったんだけどな? アサキは……?
……ま、いっか。
「おしユウヤ、伊達巻き買って帰るぞー」
「よしきた、政宗!!」
「分かりにくいボケかますな」
アサ君はアサ君だし何でも良いや。生きてるんだし、アサ君は分かりにくいとこあるけどさ、俺は絶対見逃さないもんね。きっとアサ君もそう思ってくれてるし……うん、何か全部晴れた!
そして今は何よりおせちー! さっ、行くぞー!
「……ユウヤ、アサキはお前が居れば大丈夫だ」
一人で走った俺には、マヒル兄のそんな台詞が聞こえてる訳はないんだけどさ。




