189+なんてことないただの平凡な日。
ユウヤです! 卒業しちゃったけどユウヤです! やっぱり未だ寂しいけど、数日経った今じゃあどちらかと言えば高校に向けてうきうきしてます!
「――だって受かったんだもん!」
周りから見れば何の脈絡もなく叫んでしまった。けど今は自宅だしね、だあれも反応しないよ、何だよ此の拭い去れない寂しさ。
「そういえば兄貴」
「あん?」
そしてそんな俺を差し置いて会話が始まった、ちきしょー。
「兄貴って大学何時から?」
「あー……お前達よか数日早ぇはず。何でだ?」
「車出して」
くううっ、そして平凡な会話が成り立ってやがる。
「どっか行くんか」
「うん、なんかスケート行くんだって」
「はーん、皆でってか?」
「その通り、電車とか怠いから車出して。どうせ暇なんだから一緒にスケートしときなよ」
「兄ちゃんの予定を完全無視した自由なお願いだな、まぁ構わねぇけど。だけど珍しいな、お前がスケート行くなんて」
「其処の馬鹿が勝手に決めたんだよ、巻き添えだよ」
「はは、どんとまいんど。ってユウヤ、聞いてるかお前」
「ふ?」
そんな会話の中でも平然としてる父さんの元にダイビングしてやろうか、とか考えていた矢先、マヒル兄から声が掛かった。何、何の話してたの? いじけてたから知らないよう。
「スケート、行くんだろ?」
「え、あ、うん行くよ。冬休み行こうと思ったんだけどアスカの関係で行けなくて」
予定日付近でアスカが熱にぶっ倒れたんだよね確か。たまには病人らしさが滲み出るアスカ、今回は大丈夫かな?
「車出すのは良いんだけど、何時もの七人……そんな乗れねぇぞ」
「ご安心を、カイトに言っといた」
「嗚呼、ウミか。……つーとセツ呼ばねぇといじけんなー……」
せっちーは相変わらず子供らしい。や、俺が言えた義理じゃないんだけど。っていうか車出してくれるんだね、やったーい!
「ふふっ、うちの兄弟は相変わらず仲良しさんなんだね」
「とーさんだ」
「父さんだ」
「父さんだっけ?」
「何でマヒルは何時もお父さんをそうやって……」
別にさっきから其処に居たんだけど、そうやって呼んでみたらアサ君とマヒル兄が続いた。マヒル兄の父さんに対しての扱いも相変わらずだよね。
「あれ、父さん暫くうちに居るんでしょ? 一人で大丈夫?」
「大丈夫だよ、アサキじゃないんだからご飯くらい自分で出来ますよ」
「ちょ、それは暗に僕が料理出来ないこと言ってるでしょ、ねぇ父さんってば」
父さんは明るい笑顔でアサ君を無視した。
「其れに、其れって四月の話でしょう? 四月になったら奥さんも春休み期間くらいは帰って来るらしいので、二人で楽しみますよ」
「あーはいはいバカップルバカップル」
「マヒル、バカップルじゃなくて馬鹿な夫婦だ」
「アサキそれ直訳しただけだよね、しかも何かより酷い表現だよね」
普通の家族とか知人なら「仲の良い夫婦だね」くらいで済むのになぁ。うちじゃ無理だ、兄貴もアサ君も未だ仲良しな両親を毛嫌い、又は面倒臭がってるから。俺は良いと思うんだけどな……?
「ま、とりあえず其の日は空けとくから安心しろよ」
マヒル兄はひらりと適当に手を振って座っていたソファから立ち上がった。
「んじゃ出掛けてくらァ」
「「いってら」っしゃい」
「気をつけてね」
そしてそのまま何処かに出掛けてしまった。父さんはにこにこで見送ったけど、場所を聞かなかったなー、……まあもう大学生だしいっか。
「ユウヤ」
「なーに?」
「飯」
「はいはい」
そういや昼飯まだだった。マヒル兄も居なくなったし、久しぶりに作るか。




