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186+普段通りが必勝法!


「いってらっしゃい、僕はどちらのパターンにも対処出来る様にパーティー開いておきます」


 あの父親は……。

 修学旅行から帰って来れば久しぶりに居やがった父親にそんなことを言われて見送られた僕等、否、正確にはユウヤなんだけど。つか発表でもないのにもうパーティーな訳?

 暇だから着いていってるアサキです。実は本日後期入試当日。修学旅行終わって即だよ、此の日程はハードだわ。



「……」


 当の本人こと隣のユウヤは珍しく、凄く緊張した面持ちで黙っていた。何だこいつ面倒臭い。


「アッサキー! ユッウヤー! おっはよう☆」


「……ユウヤ、あれくらいやる気出せよ」


「ええぇ、無理だよ今はー……」


 そんな中、背後から物凄く爽やかに走って来たカイトを発見。そういやあいつもだったか、というかあいつ、緊張っていうものを何処に落としてきたんだ。


「今日が終わったら休み同然! とっとと終わらせて遊ぼうぜ!」


 何此のお気楽。誰か彼に自重という言葉の概念を教えてあげて下さい。


「遊ぶ? も、もう卒業なんだよ!? 皆と会えなくなっちゃうのに遊んでなんかああああああああ!!!!!!」


「っるせぇよ、今は集中しろって」


 このままカイトのペースに呑まれそうだな。そんなユウヤに溜息ひとつに一言言えば、直ぐさまシャキッと戻った。


「カイトもだよ、枠少ないんだろ?」


「ふっふっふ、それはそうですけども、此処で慌てちゃあやってらんないんだぜ! この俺様ならば楽・勝☆」


 キラッ、と決めポーズまで決めてくるカイトだが、このたっかいテンションはもしかして――こいつも緊張してるのか……?



 そんなこんなでぎゃあぎゃあやっていれば、何時の間にやら受験校に辿り着いた。其の頃にはカイトのテンションもガタ下がりで、ユウヤの表情も曇っていた訳だ。校舎を見上げつつかっちかちな二人。こんなんでどうすんだか……僕は再びひとつ溜息をついて、効果音にするなればあわわわわ、な二人に向き直った。


「やるべきことはやったんだろ、だったらとっとと行って終わらして来い」


「お、おう、分かってるぜ……!」


「いえっさ!」


 そして二人はテンパったまま受験会場に向けて歩き始めた。

 ……ああもう。



「お前等!」


 冷静に挑んだって馬鹿なのに、そんなんでどうするんだよ。ええと、こういう時何言えば良いんだったか、不思議そうに僕を見遣る二人を見返して考えるけど、何一つ掛ける言葉が浮かばない。


「何アサキ」


「どしたのアサ君?」


 キョトンとしてる二人。やっべぇ、やはり慣れないことをするもんじゃない。でも普段は何時だって支えてもらってる側としては――こういう時に何も言えない自分が歯痒い。

 だから少し俯き加減になっていた表情を少しだけ二人に戻し、腕を組んでただひとつ。



「ガンバレ」



 そう言っておいた。

 二人はキョトンとした表情をよりキョトンとさせたけど、顔を見合わせれば笑って、


「「勿論!」」


 そう一言残して走り去ってった。

 ……大丈夫、だな。カイトは確かに馬鹿だけど、英語っていう強味があるし。ユウヤは、……うん、だってほら、誰の兄貴だと思ってんの?




 僕は一人満足そうに、自宅に向かって歩き出した。

 此の僕が此処まで着いて来てあげたんだから、受からない訳、無いでしょう?




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