183+遅ばれ進め、修学旅行。/じゅうよん
「アスカ、体調の方は大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
三日目、最終日となって旅館を後にしてから。
最後となった見学場所、清水寺まで坂を登る俺達空乃中学の面々。アヤメ先生に心配して頂きながらも連なって寺を目指しますアスカです。
「疲れたらちゃんと言うんだよ、俺がおぶうー」
「ありがとうございますユウヤ、ですが平気ですよ」
隣を歩くユウヤもそう言ってくれるけど、本当に大丈夫な俺。俺の身体は平気な時はとことん平気なんですよね、駄目な時が駄目なだけで。そして駄目な時が多いだけで。
第一、結局朝方に帰って来たユウヤにおぶわせるだなんて出来ません。寝不足甚だしいですって、さっきから眠そうじゃないですか?
「清水め、待ってろよ!」
「ふふっ、清水寺は何処へも行きませんよ」
眠くても、ユウヤはユウヤみたいです。
「清水の舞台から飛び降りる!」
清水寺に着いてのユウヤの第一声はそれだった。多分意味は分かってないんでしょうね。
「あ、ねえねえ、アレ何かな?」
「嗚呼、あれは確か――」
恋愛成就のおみくじ、でしたっけ? 成就というか、まぁ恋に関するおみくじが引けるって聞いたことがあります。ですからあんなに女の子が集まっているんですよね――一通り説明してあげたら、何故か興味を失ったユウヤ。
「恋愛事を神様に頼るなんて間違ってる」
「……あれ? ユウヤそんなキャラでしたっけ?」
飛び付いていくかと思ったんですが。……まあ、確かに俺もそう思いますしね。一種の願掛け程度だと思って、結局は頑張るのは自分なんですから。
「面白そうだとは思うけどねー。今は眠過ぎてどうでも良いや」
本音は其れだったか。なんか良い事考えた自分が馬鹿みたいじゃないですか。
「ねぇアスカ」
「何ですか?」
「下行ってお土産買って、バスで寝ても良い?」
「……」
苦笑いをしてそんなことを言うユウヤ。ふふっ、バスは駐車場に留めてありますもんね、未だ未だ時間はあるのですが――
「そうですね、俺も寝たいです」
ユウヤがそう言うなら、たまにはそうしましょうか。
「音羽の滝?」
カイリだ。なんか階段があったから下ってみたら、そんなちっさい滝についた。隣のアサキが、
「オトワ……従弟の名前だ」
とか呟いたけど恐らく意味ないんだろうから無視した。オトワ……嗚呼、あの餓鬼か。
ちなみにユキは其の下り階段を上ったり下ったりしている。何がしたいのかは聞いちゃいけない、何故ならあいつに理由なんざ存在しねぇからな。
「三つある中で一つだけ叶うらしいぜ、アサキはどれにす――」
「金運」
「悪ィ聞いた俺が悪かった」
無駄にキリッとした表情で答えられた。そうだよな、恋愛健康なんてお前にとっちゃアウトオブ眼中だよな。ちなみに俺は健康だ、免疫力欲しい。
其の滝を後にして、ユキを拾ってお土産売り場に来た俺達。
「わらび餅が買いたいね」
と実に婆臭ぇ一言を吐いたのは勿論ユキであって。キョロキョロと探し回るユキとは裏腹に、俺とアサキは其処ら辺のお土産を適当に見ていた。ちなみに俺様は買わない、だって昨日買ったし。
「なぁ、赤の他人」
「うわあ超懐かしい呼び方、何?」
「兄貴達に、こういうの似合うと思う?」
「どれどれ」
アサキが指差したのは携帯置動物仕様。チョイスが可愛過ぎるのは良いとして、別にあの三人なら何でも良いと思う。特に姉ちゃんなんてアサキからだっつえば宝物にすると思うぞ。
「いんじゃね? 買ってくんか?」
「うん、セツさん誕生日だったはずだし」
「え、マジで?」
三月だったのかあの人。修学旅行中に過ぎちまったらしいが、なら俺もお土産とは別に何か買おうかな。――の前に一言。
「お前、結構律儀だな」
「うっせ」