182+遅ばれ進め、修学旅行。/じゅうさん
時刻は飛んでもユウヤです、へへん。
「他所見すんな」
「ふぁい」
ただいまの時刻は二時だけど、決して明るい時間じゃなくて、AMで二時なんでした。
「な、ん、で、こんな時間まで起こされてっか分かってんのか?」
「自由行動で一人先走ったからです」
嫌に笑顔ないっちー先生。しかし此れは確実にキレてる顔であることくらい俺にだって分かるやい! 俺の反省文が終わるまで起きてなきゃいけない訳だからね!
「その通りだ。同じ時間に呼び出したカイリとモモは終わって部屋に戻ったのに? なーんでお前だけ終わってないんだ?」
「へへん、馬鹿だなぁ先生! 俺に作文能力が無いからに決まってんじゃん☆」
「……」
「ごめんなさい謝るからせめてツッコミを入れて下さい寂しくて死んじゃう!」
滅茶苦茶冷めた目で見んといて、俺こあくて死んじゃう。
「テメェはアヤメのクラスだっつのに、何で此の俺が面倒見なきゃいけねぇんだよ……つーか寝んなよアヤメの野郎」
まさかのマンツーマン体制で監視されている俺は、目の前でため息をつくいっちー先生を見る。ペンが進んでないのは言うまでもない。
俺が居るのはいっちー先生の部屋、何か知らないけど横ではあーや先生が惰眠を貪っている。何でも、
『僕の部屋、酒盛りして惰眠する方々で一杯なんです』
だそうで。携帯の話もそうだけど、新人なの逆手に取ってやりたい放題だな此の人達。……あれ? 方々ってことは酒盛ってたのは二人じゃないから、キクカワせんせと……校長とか? ……考えんのやめよっ! 学校の将来が不安になるから!!
「おらユウヤ、とっとと書かねぇと怖い話すんぞ」
「いやあっ!」
今二行進んだ。丑三つ時に怖い話なんて馬鹿なこと考えちゃいけませんよ先生!
「まあしないけどな、俺そういうの好きじゃねぇし」
「……え、先生怖いもの苦手?」
「はあ? 此の俺がか? 苦手なんじゃねぇよ、嫌いなんだよ」
……うん? どういう意味? 苦手じゃなくて嫌い……あ、苦手の上か?
「何か意外、いっちー先生はなんか普通に怖いのとか行けそうな気ィしてたー」
「馬ッ鹿お前、言っとくけどな、俺は誰に何言われようとお化け屋敷には入らない性質だぜ」
「……強がりもしないんだ」
「強がって怖くなくなんのか? 残業は一人じゃぜってーしねぇ」
こう自信満々に言われると、逆に清々しいよこれ。ちょっと憧れるってば。……うん、確かに強がる意味なんてないもんねー、カイト君とリョウちゃんは超強がってるけど、そんなの意味ないよね!
「つー訳だユウヤ、俺は丑三つ時とかこういう時間はめっぽう嫌いだ、早く終わらせてくれ」
「あいあいさ!」
少しだけ先生に親近感沸いた二日目だった。明日は修学旅行最終日! 旅行来ると絶対に反省文書かされてる気がする俺、……はあ。




