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179+遅ばれ進め、修学旅行。/じゅういち


「此処から合流するのも有だけど、カイリがね」


『安心してよ、俺も会いたくないから』


 ユキだよ! 何となく不穏な空気を漂わす電話越しのアサキに、普段とは違う笑みが零れたのは言うまでもないのだけれど。

 しかし通話する最中私の横に座り込むカイリのテンションは、とことん落ち込んでいた訳で。


「やっべぇよ……絶対怒らせた……しかも完ッ璧悪いのこっちだし……」


 普段の理不尽なキレられ方ではなく、自分達が全面的に悪かったと分かっているからこそ、今直ぐアサキに会いたくないんだろうね。アサキはとことん正統派に怒るから。怒鳴るでもなくただただ冷静に、……確かに其れは怖いよ。


「まあまあ、折角の自由行動時間なのだし、私と共に楽しもうではないか!」


「……ああ」


「大丈夫、アサキだって観光を楽しんで少しくらい怒りを緩和するだろうさ? いざとなれば――私も一緒に謝るから、ね?」


「……ユキー!!!!」


 よし、カイリも大丈夫そうだ。アサキだって鬼ではないのだし、ちゃんと謝れば許してくれるだろう。だったら私達は私達で、今をしかと楽しもうではないか!


「よっし、んじゃあどっか行くかー! 二時に集合だもんな!」


 何かを振り切るようにしてカイリは立ち上がる。ユウヤやモモも、落ち込んでいなければ良いのだけれど。しかし其れ以上にもう一人、大丈夫かな――リョウコ。










 リョウコですよっ、はいっ、リョウコですっ!!


「いらっしゃいませー」


 とりあえずお昼ご飯だよってことで、関西に来たんだからお好み焼きでも食べようかってことで適当なお店に入ってみました!

 い、今このお店に居る人達って、私達のことを其の、こ……こ、恋人同士と勘違いしちゃったりしちゃったりしちゃうのかしら……!!!! 制服着てるしねっ、自由時間に一緒してる関東の子達かな? みたいにね!? ふ、……ふふふ……!!


「ご注文決まりましたらお声掛け下さいね」


「……」


「あ、はい」


 ――まあ、浮かれるだけ無駄だって分かってるけどね! だって本人ゲームしてますから!


 手ぶらな癖してゲームだけは手放さないんだから……ていうか何処から出したのよ……!



『カトウ悪い、言いにくいんだけど財布持ってない』


『え、えぇ!?』


『手荷物全部ユウヤに――あ、此れ以外は』


『……ゲームはあるのね』



 数分前のそんな会話。一緒の行動だからって兄貴に荷物押し付けてたってアンタ……まあ、お土産買い過ぎて金欠になるだろうモモの為に多めに持って来てるから良いんだけど。後で返してくれるらしいし。


「ねぇヒコクアサキ、アンタ何食べたい?」


「何でも良い、文句は言わない」


「そういう発言はせめてゲームから目を離して言いなさいよ」


「戦闘中なのに……!?」


「そんなに驚くことなの!?」


 さっきまでの怒髪天を衝いてたアンタは何処行ったのよ……!


「……これじゃあ恋人ってより、姉弟みたい」


「……何か言った?」


「いいいいいいいいいえ何も!!!!!!」









「あうぅ……」


「モモさん、落ち着いて下さい、そんなに怖がらなくても平気ですよ?」


 ユウヤです、路面電車から降りて、何やら某映画村に着きました。やー、俺が行きたかったところだ!

 さっきのアサ君の電話で大分堪えたけど、最後に優しい声音があったからもう大丈夫かな。俺もアスカも大丈夫! 要するに――モモちゃん以外は。



「アサキ君怒ってたよぅ……?」


「それは悪いことをしたからですよ、ですから会った時、ちゃんと謝ればアサキ君だって其処まで怒りませんって」


「そうそう! アサキはああ見えて優しい奴だよ!」


 ちょっと分かりにくい優しさだけど、最終的には世界で一番、アサキが優しいって思ってるから!

 アスカの慰めもあってか、珍しく涙目のモモちゃんは落ち着いてきたらしく、えへへ、っと笑顔になってくれた。うん! 可愛い子は笑顔が一番だよね!



「では、丁度映画村に着いた訳ですし、行きますか」


「うん! あのね、私お化け屋敷行きたーい」


「良いですね、行きましょうか」


 ――笑顔は一番だけどホラーの女王まで戻ってきやがった!


「ふ、二人で行ってくれば……?」


「え……ユウヤ君、行かないの……?」


 はぅ……! そんないたいけな瞳で俺を見ないでくれ……!


「一緒ですから大丈夫ですよ、行きましょう……?」


 こっちは絶対確信犯だけどやっぱり俺を見ーるーなー!!!!


「「……」」


「――分かった! 一緒に入るよ!」


 畜生、俺ってば良い人!!

 俺は此の後訪れる恐怖に身構えながら、此れだったらアサキに怒られてた方がマシなんじゃないかって、真剣に考えた。




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