178+遅ばれ進め、修学旅行。/じゅう
「という訳で捕獲です」
『ご苦労』
アスカです、路面電車の駅で騒ぐ班員をユキ君と共に捕まえました。
「なっ!? ユキすっげぇだろ!?」
「確かにね! 私も路面電車は初めてみたよ」
本気なんだかよく分かりませんが、ユキ君もあちら側に行く傾向にありますので、俺はいち早くリョウコさんの電話に電話を入れました。出たのは案の定としか言えないアサキ君でしたけどね、返事が重役過ぎる。
『ユウヤ共は何処に居たんだ?』
「路面電車の駅ですよ、馬鹿みたいにはしゃぐ中坊が行きそうな所くらい予想出来ますからね」
『流石アスカ君、今のドス黒発言はツッコまないでやろう』
「ありがとうございます」
「アスカッアスカッ! 少し中見てみようよっ! 後払いでも良いみたいだから中を見るだけでも!」
「……はい、今行きますよ」
電話からではない楽しげな口調につい苦笑してしまった俺、此の二人ホントに血が繋がってるんでしょうかね。電話を繋いだまま車両に入ってみれば、はしゃぎっぱなしのユウヤ、モモさん、カイリ君が居ました。ユキ君ははしゃぎはしているらしいけれど、保護者的立ち位置で外に居ます。……何かムカつくけれど、まあいいでしょう。
『僕等も其処行くから、全力で動かないように言っておいて』
「はい、分かりまし――」
「ユッキー! すっげぇよ、お前も体感してみろってー!」
カイリ君が外に出た。……あれ? 今カイリ君の大声に被って車掌さんが何か喋った様な……――ッ!
「ユウヤ! 早く出――」
シュー、ガタン
あ…………しまった。否、分かりにくいからちゃんと言いましょう。――車両の扉が閉まった。
「「あ」」
モモさんとユウヤの声。再び音を立てて動き出した路面電車。――やっちまった。
「あ、アサキ君……?」
『ユウヤに代わって』
「え、いやあの今のは――」
『アスカ君は悪くないから良いんだよ、――代われ』
全部聞こえていて尚且つ、俺は悪くないとか言ってくれるのは嬉しいですが。……ごめんユウヤ、代わって。柄にも無く久方振りに恐怖を感じた俺は、携帯をユウヤに手渡した。
「えーっと、アサキ……?」
「あのさ、死ねよ」
『ごめんなさい』
経費削減の割にはハンズフリーモードまで付いた携帯に向かいつつ、ヒコクアサキは此の上なく冷めた口調で一言呟いた。横に居る私にはダイレクトに伝わるんだけど、怖いんだけど。
「何人様に迷惑かけてるの? 団体行動って知ってる? 探しに来てくれたアスカ君やユキに迷惑かけて、何其れ楽しい?」
『いえ、楽しくありません』
「楽しくないよね? うん、俺も楽しくないよ。今もう十一時だよ? 確か旅館出たの九時だったよね、二時間も経ってるのに俺等がしたことって何だと思う? お前等の捜索だよ」
『ほ、本当に申し訳ありません、でした』
「ちなみにラン、お前も聞いてる?」
『はっ、はい!』
「ユウヤ一人を責めてる訳じゃ――というか別にお前等を責めてる訳じゃないんだけど。ちゃんと理解して、今後こんなことがないように、其れくらい、君の無ぇ頭でも理解出来るよね?」
『はいぃ……』
『まあまあ、アサキ君そこまで言わなくても――って二人共? マジ泣き五秒前みたいな表情ですよ!?』
あちらもハンズフリーなのか、三人の声がわらわらと聞こえてくる。ごめんねモモ、今回はアンタの味方してやれそうにないわ、――だって怖いんだもん。
「何事も泣いて済むなら警察は要らないって言うじゃない。俺だってマジ切れ二秒なんだから、少し考えて欲しいかな」
『『ごめんなさい』ぃ』
ぴくりとも動かない表情に怒られてない私も背筋凍ったわよ。
――どっ、どうしよう、電話切れた後、コイツとまともな話が出来る気しないわ……!
「謝れば済むと思ってるの?」
『え、うぇ』
『あううぅ……』
「ひっ、こくアサキ!? そろそろ許してあげてもいいんじゃない!?」
流石にこのままじゃ色々アレだし、口を出してみたんだけど! 声裏返った!
「悪気は無かったんだから、ね!?」
「……」
目茶苦茶睨まれてる、本人に其の気はないんでしょうけど睨まれてる! お、怒らせた、かな……? いやしかし!
「これは班長命令! 許してあげて!」
めげちゃ駄目よリョウコ……! 目が座ってるからってめげちゃ駄目!!!!!!
「……ユウヤ」
『……何……?』
「仕方ないから二時まで別行動、此れ以上アスカ君に迷惑かけないこと。良いね?」
『ッ! ……うん!』
「それじゃ」
そして静寂が訪れた、と。
――訪れちゃ駄目よ! 街中の癖して静寂って何よ!? この後どうすれば良い訳!? 強気に班長命令とか出しちゃったら何言って良いか分からないだけど!
「ユキに電話する」
「え!? ええ!」
「電話してはみるけど、昼過ぎまで別行動にしたから、……もしかしたら二人で行動になるけど、そしたらごめん」
「え……ええ」
相変わらず表情は変わらずに、ヒコクアサキは電話に向かった。サキネユキ達に状況を伝えなきゃだもんね。
にしても……あれ、また二人とか聞こえたんだけれど。此れは夢なのかしら、私の都合の良い夢?
え、と……えええええええぇ!!!!!!?




