177+遅ばれ進め、修学旅行。/きゅう
旅館を出て早くも全力を出し切った感がありふれるカトウに代わってアサキです、が。
「……」
居るメンツ、僕を合わせて四人。居ないのはユウヤとカイトとラン、か。
「――……殺すか」
「ははっ! 考えが即決過ぎるよアサキ!」
「殺す前に見つけるのが先じゃないですかね」
生粋のツッコミが堕落しているから此れは此れで大変だ。え、僕? 七人中五人ボケなのにツッコむ気なんざ起きないよ。
「とりあえず探しに行こう、四人でぞろぞろ探していても埒が明かない。二手に分かれて探すよ」
「了解さ」
「ふふっ、なんとも班長らしいですね」
「班長はこっち。おらカトウ、戻って来い」
「ふふふふふ、どうせ私なんて数人すら捌き切れないツッコミですよ……」
落ち込み方からツッコミ目線だ、大丈夫なのかこいつ。
けど待っているのも時間が惜しいし、僕以外は携帯持ってるからどう分かれても問題無いし、じゃんけんでもして分かれよう。余りに加えりゃいいよね。
「はい、じゃーんけん――」
「うっはあ! 何て美味しいお団子なんざましょ!」
「おいユウヤ、とても気持ち悪い口調になってんぞ」
「ほんとだね~」
ユウヤでっす! 濃厚なみたらしの匂いにつられてついお団子を買ってしまった! 畜生! 此の商売上手め!
「つーか良いのかよー、俺達完璧逸れたぜ?」
カイト君が溜息混じりにそう漏らした。そうなんです、ふらふらしてたら迷いました。あれだけ迷わないでよ! ってリョウちゃんに言われたのに迷いました。……俺達の阿呆。
「どうしようか、お団子も食べ終わっちゃったし」
「リョウちゃん達を探すって言っても、手段がないもんね~」
「携帯にかけるっつっても、流石に覚えてねぇぞ俺」
十一桁なんて誰も覚えてないよ! 俺が覚えてるのなんて母さんのくらいだって! ……そんなの完璧に覚えてるのはうちの兄貴くらいなもんさ。あの人の記憶力は寧ろキモい。
「けど……このまま離れ離れも駄目だよね?」
「だな。しっかしどうすっ――」
「あー!!!!!!」
割と真面目に考えていた俺だったけど、目の前に現れた物につい叫んだ。モモちゃんもカイト君もびくってしたけど仕方ないじゃないか。だ、だって――
「見てよ二人共っ、――路面電車っ!」
関東じゃ拝めない素敵乗り物が路面を進むんだから――!
「うおおっ! すっげえ! 何アレ、どうやって走ってんだよ!?」
「うわあ……!」
ほら、二人だって凄いはしゃぎ様。
俺初めて見たかも! 路面電車ってすっげー! 電車なのに信号に引っ掛かるってことだよな!? 見ーてーみーたーいー!
「なあユウヤ、あそこがもしかして駅じゃねぇか!? 行ってみようぜ! モモも俺様について来ーい☆」
「路面電車の駅だって……? 行くに決まってるじゃないか!」
「私も行く行く~!」
道端に駅があるなんて……関西とはこんなにも奇妙で素敵な所なんだね……!
よっし行くぜー!! と張り切って、俺達はその駅に向かった。
……あれ? 何考えてたんだっけ? まいっか。
「ふ、ふふふ、何なのかしらもう、京都来たっていうのにもう疲れた」
「おいカトウ」
リョウコです。何か全身から力が抜けてます。何なのかしら今のこの脱力感、テストで悪い点取った時のアレに似てるわ……。
「カートーウー、ってば」
「え?」
何よヒコクアサキ。私が地べたに座り込んでるから文句付けるのかしら? 目線合わせてしゃがんでくれてるみたいだから、普段なら絶対叫ぶ距離感覚だけれど今日は其れすらどうでも――あれ?
「早くユウヤ達探すよ」
「え、あ、それより、ニカイドーアスカとサキネユキは?」
「はあ? さっきの僕の話聞いてなかったの? 二手に分かれるっつったじゃん」
「二手?」
ごめんなさいね、今の私は右から左へ受け流す状態なのよ。そう、二手に分かれたのね。ニカイドーアスカとサキネユキ、そしてヒコクアサキと私に――私と、ヒコクアサキ?
ということは……今、二人っきり?
「――――きゃあああああああああああ!!!!!!!!!!」
「うわびっくりした」
「探すわよヒコクアサキ! アンタの馬鹿兄とその他諸々をぉおおおおおお!!!!!!」
「うん。って、ちょ、走んの? 京都に来てまさかの全力疾走? ……うん、まぁとりあえず一言言わせろ――待て!!!!!!」
とっとと探すわよおおおおおおおおお!!!!!!!!!!
リョウちゃん全快。