173+遅ばれ進め、修学旅行。/ご
「ご馳走様でしたーっ!」
旅館の料理ってマジ美味しなんですけどっ! なユウヤです。ちゃんと残さず食べました! 旅館の料理って炭水化物とか主菜とか被ってきたりして量多いんだけど、好き嫌いオール零の俺としては美味しな限りだよー!! 途中アスカが、
「無尽蔵ですね、もはやブラックホールです」
とか呟いたんだけど、アスカの其の笑顔の方がブラックだよとは言えなかった。……や、口に物が入ってたから、とかじゃなくてね?
俺は一人ご馳走様とか言ったけど、周りはまだ食べ終わってないんだよね。どうしよ、暇だ。
「ソウ、もう食わねぇの?」
「僕にはもう限度だよ、コウスケ食って良いよ」
「え、マジ? ラッキー」
「…………あ、ダブルだ」
「「今俺(僕)達の名前考えてただろ」」
「そっ、そんなことねぇし!」
つい呟いてしまった! 別に忘れてたとか無いぞ! ただ出番無さ過ぎで瞬間的に記憶から抜けてただけなんだからね!?
「同じ班なのにな……」
「僕此れでも班長なんだけど……」
(俺の所為で)落ち込んでいるダブルはまあ置いといて。……なんか落ち込んでるのがデフォルトみたくなってきてるしね。
で、そんなことより。
「ねぇアスカ」
「はい?」
「――アサ君、居なくね?」
つい癖ではたと一組を見たら、アサ君が居なかった。席的に微妙な遠さで気付かなかったんだけど……夕飯終わるまでは席立てないはずなんだけどな……トイレ?
「はい、先程からずっと居ませんね」
「え? 先程って?」
「食事始まる以前からですよ」
……ぅえ?
暫く五月蝿い静寂で考えてみたけど、結論はひとつ。
――心配だ……!!!!!!
「何でも気持ち悪いやら何やら」
「え、ちょ、何でアスカ知ってんの!? つーか気持ち悪いって何!? アサキ大丈夫なの!?」
「ふふっ、俺には文明の利器が着いてますから――ってユウヤ、揺さないで下さい、首がー」
文明の利器――嗚呼ユキちゃんか。携帯って便利だよね。――じゃなくて!
「本人曰く、寝りゃ治るって言ってたそうですよ」
「……」
……うん? そうなの? 要するに――
「なあんだ、寝不足か」
ってことだよね。……良かったー。
「でも、寝不足ってことは……アサキ君、柄にもなく修学旅行前日に夜更かしですか?」
アスカは口元に拳をやり、可笑しそうに笑う。様になるなーとは思うけど、ちょっと違うんだな此れが。
「アサキ九時に寝たけどね」
「え?」
「普段最近は夕方寝るしねー、一日歩き回って疲れたんだよ、多分」
アスカは首を傾げるけどぶっちゃけ、最近のアサキに一日をまともに過ごすだけの体力は無いんだよね。やばいよあの根暗……流石の俺でも思うもん。
「其れ、病気とかじゃないんですか?」
アスカも若干心配そうにするけど、これまたタチの悪いことに健康なんだよねー。
「まあ、そんじゃ其処らの根暗とは違うんだよアサキは」
「……嗚呼、其処らの根暗よりも根暗って訳ですね、なら良かったです」
何が良かったのかは分からないけど、とりあえず後で様子見に行こーっと。