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163/500

163+ツッコミは基本鈍感らしい。


「ただいま~」


 モモです、ただいまお家に帰ってきました。今日お家にはお母さんもお父さんも居ないけど、弟のユズ君だけは居るはずなんだよね。


「お帰り、――じゃなくて! ……こんな時間まで何処行ってたのさ」


「え?」




 ――ただいまの時刻、夜九時です。




「中学生がこんな時間まで出歩いててどーすんだよ、それじゃなくても姉ちゃんトロいんだから」


「あー、酷いなぁユズったら。お姉ちゃんだって何の考えなしにこんな時間になった訳じゃないんだよー?」


「じゃあ何さ、聞いてやんよ」


「――バレンタインのチョコを何作ろうか考えながら買い物してたら、こんな時間になりました~」


「受験を一ヶ月以内に控えた人の台詞じゃねぇな其れ、つーか、そんな優柔不断にリョウコちゃんを巻き込むなよ」


 うぅ、何でリョウちゃんと一緒だったのバレたんだろ……。でもよく考えればそうだよね、毎年そうだったら気付くよね。さっすがユズくーん、あったまいー。


「……何かごめんなさい」


「何故謝った、つーか何に謝ったえぇ?」


 何処ぞの不良みたいに脅してくるなんて、そんな風に育てた覚えはないよー? ――なんて言ってもどうせツッコまれちゃうし、何も言いません。



「じゃ、僕はもう寝たいんで寝ます」


「ふぇ? まだ九時なのに?」


「小学生ナメんな、今時の小学生が皆夜更かし大好きだと思ったら大間違いだかんな」


「えぇ、待ってよう、ユズ君だってそろそろ中学生だよう。お姉ちゃん寂しくて死んじゃうよう」


「勝手にどーぞ、姉ちゃんはそろそろ高校生でしょ? 僕だってバレンタインケーキを作る予定を立てなきゃいけないんだから」


「ユズのばかぁ、家庭的ー」


「ダレが馬鹿だこら、そしてありがとうございます」



 という私の説得もあって、パジャマなユズ君は未だ起きててくれるみたいです。料理下手なユズ君が死ぬ気作ってくれた夕ご飯を食べる私の前で、ユズ君はぐったりとしてテレビを見ています。


「ユズー、今年はどんなケーキ作るの?」


「んぁ? 今年はシンプルにベイクドで」


「そんな軽口で作れちゃうユズ君って怖いよね……」


「へ?」


 本人は到って真面目に言ったみたいで、素っ頓狂な声を上げた。小学生がそんな簡単に『ベイクドチョコレートケーキ作りますっ』だなんて……我が弟ながらあっぱれだよ~。普段はすっかり真面目ちゃんなのに、何処か抜けてるのがユズ君だよね。


「誰かにあげるの」


「そりゃ勿論」


「え……? ゆ、ユズキ君何時の間にやら春が来ちゃったの……?」


「別にそういう意味じゃねーよ」


 少しくらい照れてくれたって良いのに……少しの照れもなく実のお姉ちゃんを馬鹿にした表情を見せてくる。


「毎年のことだし、クラスの友達に渡すんだよ」


「なあんだ、俗にいう友チョコだね~」


「其れ其れ」


 そう言ってから、幾つ作るかを指折り数え始めたユズ君を優しい眼差しで見守る私。

 そっか~、クラスメートにか~、未だ未だそんなだよね、小学生だし。

 嗚呼、でも其れと――





「コトナちゃんにも?」


「おう、ちゃんと渡すよ」


 ――コトナちゃん、うちのユズキが、こんなでごめんね。




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