155+もう今週にまで迫りました。
入試近過ぎる、ユウヤです。
「ユウヤ、此の漢字違いますよ」
「うぇ、マジ? あ、此れ骨折じゃなくて骨接になってる、何すんだろ此れ」
自宅リビングでの上の空な勉強、アスカに指摘を入れて貰えば消しゴムでごしごしとノートを擦る俺。
「ユウヤ、フライ返しが無い」
「右下の棚ー」
其の後ろではキッチンをうろうろするアサ君。……キッチンにアサ君が居るだけで心配になるんだけど。何してるんだろ、今フライ返しって言ったけど何作るの……?
「ユウヤ、手がお留守ですよ」
「ふーい」
くすり、と笑うアスカだけど、俺は凄くキッチンが心配だったり。
大丈夫かな……少し前まで其れなりに料理出来てたはず――クオリティはさておき――なのに、何時の間にかマイナスに拍車がかかったアサ君がキッチンに――いいや、ダメダメ、私立入試もう間近なんだから勉強しなきゃ!!!
「アスカー、此れってさぁ、どうしてこー、ばっくとぅーざふゅーちゃーするの?」
「未来には帰ってませんが此れは――」
――ガシャン! どだだだだだ!!
「――……横の記号が――」
「続けるの!? 今の効果音で続けるの!? 前から薄々気付いてたけどアスカって色々勇者だよね!!!!」
キッチンからあからさまにすんごい音がした気が……!
「気にすんなよユウヤ」
「や、そんなこと言われてもねアサ君、アサ君の姿が大分前から見えなくなってたから心配してたんだよ、何したの」
「そうですよユウヤ、気にしちゃダメですよ、アサキ君なら大丈夫ですって」
「そうそう大丈夫、綺麗に整理された道具を根こそぎ崩したりしてないから。適当に突っ込んでないから」
「ちょ、姿が見えないから何とも言えないが鍋か!? コンロ下の鍋一式か!? アサキ自分とは無縁のコーナーに嫌気でも差した――」
「刺すよ?」
「ごめんなさい」
んなことより勉強しろよ、と最後に言って、アサキはひょっこりキッチンから顔を出した。しゃがんで鍋整理でもしてたのかな――ま、アサ君がちゃんと整理出来てる保証は零だけど。あとで片付けるの俺なんだろうな……。
暫くして。
「英語むつかしいよう」
やる気失せた。
「頑張って下さいよユウヤ、あと少しでおやつですから」
其のおやつを出すのは俺だけどねアスカ。
「幾ら確約を貰っていても、酷い点数なんて取ったらパー、ですからね」
「パーかー……」
確約ねぇ? ぶっちゃけそういうの全く知らなくて、たまたまマヒル兄と、
『ユウヤー、お前自分が行く私立校の説明会ちゃんと行ったよな?』
『……え?』
『……え?』
とか話したから(※話せてません)行った訳で。ちなみに公立の方には説明会すら行ってませんが何か?
「アスカはもう決まったようなもんなんだよね?」
「はい、俺は単願ですから」
「あーあー、でも此れで、アスカとは違う学校なんだよなぁ……」
「ふふっ、此の身体ですからね。出席日数が重要になりかねない国公立は無理ですから、私立校を選ぶ他無かったんです」
相変わらず苦笑なアスカを見て、若干しょんぼり。学力的に俺が受ける私立はカイト君と同じな訳で。アスカは俺よか少し上のところ。アスカの頭ならもっと上に行けたみたいだけど、体調のことに理解ある学校を選んだって言ってた。
ユキちゃんは確か、アスカよりも上の学校を単願。リョウちゃんとモモちゃんは公立狙いだけど私立は同じ学校受けるんだって。私立なら同じだけど公立なら別々、……なんか寂しい二人だ。
「でもユウヤ、国公立は空高でしょう? 受かればアサキ君、それにカイリ君にリョウコさんとも同じでしょう?」
「んー、まあね」
アサキは一番近いから、カイト君は近いし学力的に、リョウちゃんは……まあ、うん。二択まで絞ってこっち選んだんだってねー、理由が分かり切ってらー。
「でも」
「?」
「受かれる自信が無さ過ぎる」
「の為に勉強してんだろうが阿呆」
ため息と同時に出た弱音に、キッチンより無事――あくまで本人は、だけど――帰還したアサキ。
其の手には何やら皿が、てか超ホットケーキ盛られてる。その皿をどかりと机に置けば、無駄に器用に加えたり脇に挟んだりしてたフォークやら何やらをばらばらと置く。
「うわぁ、美味しそうですね、おやつですか?」
「うん、そう」
「え、うぇ、アサキこんな上手く作れたっけ?」
超失礼発言だけど、最近のアサ君の歴史を遡ればそうでもない。……嗚呼、そういえば昔からホットケーキを上手く焼くことに関してだけは得意だったっけ。面倒な時は基本ホットケーキだったもんね。……後片付けは俺だけど。
「食ったら直ぐ勉強、以上」
「はーい」
「頑張りまーす」
踏ん反り返るアサキに、アスカと二人で返事をする。珍しいこともあるものだなぁ、とか思いながらも、何だかんだ応援してくれる同い年の弟に感謝。
はてさて! ラストスパートだっ!