153+このまま休みが続けばいいのに。
「――ま」
「……今、声しなかった?」
「え、マジ? ちょっと見てくるー」
玄関を指差してアサ君が言った。こんばんはっ、ユウヤだよ! 新年だって気にしなーい!! アサ君は指を差してはいるものの視線は完璧にテレビです、まあね、そうだよね、ゲーム中だもんね!
リビングを出れば直ぐの玄関、ひょっこり顔を出す俺。
「――うわあ」
――玄関に死体があった。……違う、アレはマヒル兄だ。
「マヒル兄、お帰りー」
「た、だ……いま」
何故切れ切れなんだろう。ぐったりと床に伏せる兄貴に歩み寄ってみたが、一向に動かない。
「……寝るな! 死ぬぞ!」
「死なぬ……此処……家……」
訳:死なねぇよ、此処家なんだから。雪山でもあるまいし。
俺は急いでリビングに戻る。
「アサ君大変だっ!!」
「何」
「マヒル兄のツッコミのキレが無い……!!」
「仕方ない、今はボケなんだ」
「そっか」
再び玄関に戻る。
「ねー、今はボケなのー?」
「……」
返事がない、ただのマヒル兄のようだ。
「ユウヤ」
「はい」
「とりあえず、俺を敬え」
「はーい」
という訳で、冗談はさておき。
「ぐぁー、疲れ、た……」
マヒル兄がご帰還です。冬休みはバイトしないつもりだったらしいけど、人が足りないって電話が来て午前中から出ていたマヒル兄。ソファを全て使ってぐったりであります。アサキが迷惑そうだ。
「疲れた……」
「お疲れ様ー」
ぐったりし過ぎなマヒル兄だけど、今日って何時間労働だったっけ?
「八時間半で休憩三十分て意味分かんねぇ」
「労働基準法無視?」
「労働基準法って何?」
アサ君がこっちを見て唖然としたのはさておき。うん、ほら、知ーらない!
「お前達、宿題終わったのかよ?」
冷静さを取り戻したマヒル兄が、凄く聞いて欲しくなかったことを聞いてくる。超デリケートゾーンだ、あのままぐでってくれてれば良かったのに……!!
「おわた」
「そりゃお前はな」
「おわたよー、色んな意味で」
「おい」
ええ終わりましたけど? もう何も考えたくないくらいに。漢字数学英語やーい!!
「宿題なんて終わらなくてなんぼだーい!」
「真面目になるんじゃなかったのか?」
「それとこれとは別っす」
マヒル兄までそんな目でこちらを見やがりなさって……! 仕方ないじゃん! 向かってったって出来ないんだからさ!!
「ま、ちゃんとやれよ?」
「はーい」
「大学が二月で終わる貴様に言われたくないがな!!」
「こういう時だけ声張るよなお前は」
画面に向かいながら叫ぶアサキ。マヒル兄も言ったけど、声張る場面が滅多にないのにそういうとこだけ本当……。
「そして兄ちゃんに貴様とか言わない」
「兄上、共にゲームなぞどうですか」
「やる」
「あ、俺もやりたいー」
貴様から兄上に呼び方が変わったから、という訳ではないけど、このままゲーム大会に発展。三人でゲームなんて久しぶりだなー。他二人が強過ぎて勝てない時多いけどさ。
楽しければ其れで良い、ってあるよねー。