151+自宅に居ることの不自然さ。
「さあって! おせちには何を入れたいかな、ユウ君!」
「伊達巻きー!」
そう言って買い物に出掛けた親と弟を見送った俺。こんにちは、昨日唐突に
『明日帰って来なかったらコ ロ ス』
という物騒なメールが自宅のパソコンから入っていましたマヒルです。俺、何かしたかな……。
恐らくアサキの仕業なのだろうが、未だ起きてねぇから真相は聞けず。朝一で帰って来たはずなのに其れより先に父さんと母さんがリビングに居たりして、其処に起きてきたユウヤが喜び勇んだのは言うまでもない。
「……はあ」
もう、一時なんだが。
「ため息をつくと、幸せが逃げるんだよ?」
「んな迷信知るか」
久しぶりに見た父さんは元気そうだった。ていうかアンタ確かそろそろ四十だよな? テンションが若過ぎねぇかオイ。
「酷いなぁマヒルったら。奥さんやユウヤだったらすかさず、『じゃあ幸せを捕まえる!』くらいのことは言ってくれるのに」
「とりあえずそんな妻と息子なことに後悔しろ」
ボケ夫婦も良いところだよこん畜生。
――ていうかそうじゃなくて、だ。リビングでのうのう年末番組を見ている場合じゃねぇ。
「父さんよ」
「何だい?」
ソファから後ろに乗り出して、食卓机に座る父さんを見る。
「何故に今日、自宅に皆居るんだ?」
「分かりません」
わお。
「昨日夜に突然――」
『シンヤ君! 明日は絶対お家に帰ること! 良いわね!?』
「――って奥さんから電話が来て」
「アンタは何処の餓鬼だ」
「四十だよ?」
「知ってるわ」
母さんの差し金? まあ、どうせ大晦日には帰ろうと思ってたから良いんだが。クリスマスは都合で帰れなかったし仕方あるまい。
「だけどやっぱり自宅は良いね、皆の温もりを感じるよ」
「父さんの言い回しって何で全て胡散臭いんだろう」
「きっとマヒルの中の僕がそういう人間としてインプットされてるからですよ」
「嗚呼、成る程」
「納得されると複雑だよ」
だって親に見えないんだから仕方ないじゃないか。どちらかと言えば友達感覚なんだよな、アンタは。
暫く何時までもほやほやな雰囲気な父さんに呆れていれば、二階から足音が。やっとうちの暴君のお目覚めらしい。
ちなみに午後二時だ。
がちゃ。
「よう、おはよ」
「おはようございます、アサキ」
「……気持ち悪い」
第一声目から其れかい。
「確かに、朝っぱらから野郎二人に迎えられるのはどうかと思いますけど」
「父さんそれ言っちゃう? つーか親と兄貴なんだから良いだ――」
「そうじゃなくて」
「「……え?」」
つい声が合ってしまったが。
そういえば何だか、アサキの顔色が――
「僕の体調的な意味で、――凄く気分が悪い」
「大丈夫かっ!?」
「お、お医者さん行きます!?」
「や、アンタが医者だろ!!」
「そんな大袈裟にしなくても――」
「「しますっ!!」」
半苦笑気味のアサキを尻目に、しっかり意気の合う俺と父さん。さっきまであんなに抑揚のないテンションだったのに双子絡むと父さんのキャラも変わるなー。……俺もだけど。
帰って来る二人も交えれば、余計騒がしくなるのはあと数分後ってとこかな。
アサキはただの食あたりです、多分。食事に文句をつけることも時には大事かと。