149+キリストの誕生日に興味はないけど得するよね。
リョウコです、久しぶりな気がするのは気の所為ってことにしとくわ。
クリスマスか……私は自宅でわいわいやっただけだったけど、他の家はどんなことをしたのかしら? 皆に聞いてみようかな、だなんて今思っても、年明けちゃえば忘れてるのよね。――初詣とかに会えれば良いな。……誰にとか聞かないように!!
「……あれ?」
私は今、某電気屋さんに居ます。お父さんがクリスマスのプレゼントを買ってくれるっていうから色々見に来たんだけど――
「……」
見知った影がひとつ。っていうか一番会いたいような会いたくないような奴が一人。一心にゲームソフトを見ているとすれば、うん、間違いないわ。
「何してるのよ、ヒコクアサキ」
「ん」
しゃがみ込んで真剣にゲームなんか見てる同級生を発見した。ふふん、こうやって冷静に話しかけられるようになったんだからね!!
「ゲーム見てるだけ」
「あらそう」
……。
「……」
「……」
――相変わらず会話は続かないけどね! うわあああ!! 私って少しくらい機転利かないのかしら!! ばーかばーか!!!!
あ、あっちが話を弾ませるなんてことは一生掛かったってないんだから! 頑張れ私! 頑張れリョウコ! ええと――
「ねぇカトウ」
「はい!?」
――人が頑張ろうとするとそうよねアンタは!
「……そんな驚かなくても」
「驚いてないわよ!!」
「……そう。それでさ、聞きたいことがあるんだけど」
「な、……何?」
聞きたいこと……? 私に? 何かしら?
「――今家に凄く落ち込んでて取り返しのつかない生物が居るんだけど、其れを元に戻すにはどうすれば良いと思う?」
「……はい?」
生物? 自宅に居るってことはヒコクユウヤのことかしら……いや、もしかしたらマヒルさんかも……でもマヒルさんが落ち込むとかあまり考えられないからヒコクユウヤね。
「ヒコクユウヤがどうかしたの?」
「昨日、クリスマスだったろ。母さんが早めに帰って来るって言ってたんだけど仕事で無理になって」
「へぇ……」
「マヒルも帰って来るって言ったのに私用で帰って来れなくなって」
「あら……」
「父さんは元々帰って来ない訳で」
「あなた達のお父さんって何なのよ」
家族が帰って来なくて落ち込むだなんて……女の子じゃないんだから。でもまあ確かに可哀相ではあるかも。折角皆で集まれるはずだったのに……ってことよね。
「家で落ち込んでて鬱陶しい」
「仕方ないんじゃないの? ヒコクアサキだけでも一緒に居てあげれば良いじゃない」
「だから昨日は家に居たよ朝から。朝方帰れないことが分かったから、日中うぜぇしあのクソ野郎。ずっとブルーオーラ出しやがってしねばいいんだあの変人」
酷い言い草だわ。
「でも其れでも一緒に居てあげたなんて、……やっ、優しいじゃない!!」
「優しくないし。というか叫ばなくても良いでしょ其れ」
ごめんなさいねっ! 一杯一杯なのよ!!!!
「本気で泣きそうな奴置いてけない、置いてったら余計鬱陶しい」
「……ふふっ」
凄く不服そうなヒコクアサキだけど、何だかんだ色々思っている彼が面白くて笑ってしまった。……余計不服そうな表情になったわ。
「良いじゃないの、あんたが居れば何時か元気になるんじゃない?」
「別に。今は家に一人だよあいつ。帰ったら元気になってることを祈るばかりだ」
「あははっ! そりゃもう、頑張るしかないんじゃない?」
それを最後にヒコクアサキは帰って行った。買う為に来たんじゃないみたい。
「リョウコ、買うもの決まったかい?」
ジャストタイミングでお父さんがやって来る。さっきまでノートパソコン見てたみたいだけど、なんてタイミングなのかしら。
お父さんと別れてから喋ってただけだしな……。
「んー、……あ、じゃあコレ買う」
そう言って手に取ったのはひとつのゲームソフト。さっきヒコクアサキが見ていたゲーム、だと思う。
「ゲーム? リョウコにしては珍しいね、ゲームなんてあまりやらないのに」
「いーの! やってみたくなったのよ!」
たまには良いでしょ? ――好きな人の好きな物、知ってみたくなったって。