148+彼を揺るがす為には金銭的取引を。
「るんるるる~……」
久しぶりにユウヤが上機嫌だ、いや、別に今まで不機嫌だった訳じゃないんだけれど。何やら机に向かって書き散らかしている、こんばんは、アサキです。
「年賀状なんか書いてどうするの」
「勿論出すんだよー」
そりゃ分かるけども。
「誰に出すの?」
「えとね、まずはアスカでしょ、カイト君でしょ、モモちゃんとリョウちゃんにー」
そんなに出すのかお前は。全然これっぽっちも出す気の無い僕は呆れた風にユウヤを見た。未だカウントは続いている。
「あとあーや先生にも出す!」
「そう、まあ頑張れ」
「そういえばアサ君、アサ君は出さないの?」
「面倒」
「でしょうね」
それで納得されちゃうのも納得いかないけど仕方ない、今僕に課せられているのは書くことではないのだから。僕が今しなければいけないこと、それはプレイすることだ!!(※ゲームです)
という訳で。テストも終わって残るは数日、クリスマス・イヴに二学期も終了する訳だが――やべぇ、真面目に早く終われ。え、テストの結果? まあ大体返って来たけれど、数学だけは未だ返却されていない。――だってほら、あの担任が動かないから。
「早く返せよいっちー」
数日前に真顔でユウヤがそう言ってたけど、相当出来が良かったからなんだろうな。僕も楽しみにそれを待つことにしよう。
「ふーふふー」
しかし此の野郎、黙って年賀状書けないのか。
「ねぇアサ君」
「何」
「今年の冬休みは何しよっかー?」
「別に。何もする気ないけど」
「やっぱり!」
……やっぱり……?
「アスカと話してたんだけどさ、冬休み中に皆でスケートしようよ、って話してたんだよ」
「断る、寒い辛い痛い嫌い怠い」
「酷い断りようだな今」
いや、だってスケートなんて寒いだけだし、行きたくないし。僕にはプレイする義務が――
「ちなみに、もう皆に話通しちゃったから☆」
「お前いっぺんデスれ」
「酷い!!」
「酷いはこっちの台詞じゃ阿呆。何故何時も何時も僕は事後報告なんだ……!」
「だって先だと断るじゃん!!」
「断るわ!! ――とにかく、寒いのは嫌だ」
ユウヤがむくれるが気にしない、此処で優しくしてしまえばこいつは確実に隙を見る。其処を逃さない辺りが僕の兄貴といった所だろうな。
「遊んでれば寒くないよ?」
「寒い、遊ばない」
「そんなこと言わずに! きっと楽しいよ?」
「いーやーだ」
「――じゃあ、お年玉半分あげるって言ったら」
「――行きますけど何か?」
僕とユウヤの手が同時に止まった。え、そりゃ行くでしょ、人生金だろ。
ユウヤは何やら切羽詰まった表情をして僕を見た。
「駄目だアサキ此れ……! 何処の亡者さん!?」
「金の亡者さんだコラァ」
という訳で、条件はそれでスケート行きが決定しました。
異論? 認めないよ。




