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143+似た者同士に気付いた時。


 今日の夕飯何にしようかなー、なユウヤです。皆は俺をただの家庭的な人だと思ってるんだろうけど、結構多忙なんだからね! 家事やりながら学校って結構大変なんだから!! ――とは思うけど、まあ好きでやってんだから良いよね。



 ガシャン!!



 ただ今俺はカートを押しながら歩いています。要するにスーパーに居る訳ですね。うちの暴君は嫌いなもんがないから良いんだけど、逆に好きなもんもあんまないんだよ。作り甲斐がねぇぜ! と騒ぐ方々もきっと居るんだろうけど、俺はそんなアサ君をぎゃふんと言わせる為に日々精進ってことで。

 と考えていたのは良いけど、今どっかで音がしたような……?


「た、助け……」


「――わー!!!!」


 スーパーの曲がり角の先に、男の子が何かに埋まっていた。どうしたんだ此れ!! 恐らく棚の上のものを無理して取ろうとして、バランスを崩しちゃったんだろうなぁ……――冷静に解説してる場合じゃねぇ!! 掘らなければ!!




 数分後。


「あ、ありがとうございました……バランスを崩しちゃいまして……」


 男の子はペコペコと俺に謝罪をした。今時の子供なのになんて礼儀正しいんだ……! んー、小学三年生くらいかな?


「良いよ良いよ! たまたま居合わせただけだし、棚から落ちたのは店員さんがやってくれたし!」


 要するに俺、掘っただけだしねー。彼が埋もれていたのは何やら粉系のものだった、薄力粉やら強力粉、お母さんか何かのお買い物だったのだろうか?


「本当にありがとうございました、大きいサイズの薄力粉って、何であんな上にあるんだろ……」


「お母さんの買い出しか何か? 偉いねー」


「あ、違います。俺が自分で使うやつです」


 え、自分で?


「俺、お菓子作るのとか好きなんですよ」


「へーえ! 今時珍しい小学生だね! 男の子なのに!」


 お互い買物袋をぶら下げつつ、俺は笑顔で男の子の横を歩く。お菓子作りが好き、か……本当に珍しいと思った、将来はパティシエかなぁ?


「ケーキとか作るの?」


「ケーキはよく作ります、今日も暇なんでタルトでも作ろっかなって」


「凄いね……! でもお金とかかからない?」


「母さんが出してくれるんで」


 非常に理解のあるお母さんなんだなぁ……うちの母さんもそうだけど、やっぱり子供の夢やらを支えるのって、親の役目なんだよね。最近よく思う。


「俺も夕飯の買い出しに来てたんだよねー、ご飯作りは俺担当なの」


「凄いですね! 俺料理とかめっきり出来ないからお母さん任せで……」


「両親の帰りが遅くってねー」


 何やら初対面の小学生と世間話を繰り広げる俺、我ながら順応性高いなー。


 そして話題は何故か兄弟の話。


「兄貴が別居しちゃってるから、弟と二人暮らしも同然なんだよねー」


「大変ですね……俺は夜には両親が帰って来るから……。弟さんが居るんですか?」


「うん、そうそう」


 間違いではない、同い年だけどアサ君は弟だ。


「俺も姉ちゃんが居るけど、見てないとなんか危なかしっくて」


「あははっ! 可愛いらしいお姉さんじゃない!」


 ため息を混ぜてそういうのを見て、随分と大人びてるなー、と思った俺。ため息かー、俺ため息なんて滅多につかないけどなぁ。


「俺の弟もそうだよ? 俺より頭良いし俺より冷静だけど、見てないと何もしなさそうで逆に怖いんだよねー」


「何も、しないんですか?」


「うん、食事すら摂らなそう」


「そ、そりゃ大変だ……」


 男の子は苦笑した。実際見せてやりたいね、此の子くらい表情豊かであってくれれば、お兄ちゃん何も心配しないのに……。お姉さんのことを心配する男の子――アサ君も少しは心配してくれるかな?



「あ、其れじゃあ俺こっちなので、本当にありがとうございました」


「いいよいいよ! またスーパーで会おうね!」


「はい!」


 ひらひらと手を振れば、彼もひらひらと手を振った。うん、実に良い小学生だった。










「たっだいまー、――って姉ちゃん何してんだよ!!」


「ふぇ? 夕御飯の仕度だよー?」


「違う! 知ってっから!! 鍋の方だよ鍋!!」


「えー? ――わー、噴いてるー」


「動きが鈍い!」


「ユズが早いんだよー?」


 今日会ったあの男の子のお姉ちゃんが、ランモモ其の人だったことに俺が気付くのはきっともっと先の話。




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