142+限定の人数とその他多数。
「じゃーなー!!!!」
カイリだ!
学校が終わって帰宅だぜ! え、部活? なーに言ってんだよ、俺部活入ってねぇし? というか俺達受験生だっつーの。
さて、今日は帰って何やるかねー。
「アサキー、帰ろうぜー!」
用事がある、とか言って二組に行ったアサキを追ってやって来た俺。其処には案の定アサキが居て、先に帰るらしいユウヤに軽く手を挙げて別れていた。
そして何時も通り急ぐことなくこっちにやって来る。
「うん。……あれ、ユキは?」
其れは俺も思ってたことだ。クラスに居なかったんだよな。左の方――要するに、一組の方――に視線を巡らせて、ユキが居ないことを確認。何だ、先帰ったんかな。
「――私なら此処さっ!」
「ぐふっ!!」
しかしあっかり見付かった。廊下に居た俺の真横に現れた。勿論左側から。しかも何故か俺に激突してきながら。
「ふっふっふっふっふっ、油断していたねカイリ、私が何時でも教室からやって来ると思っていてはいけないよ!」
「普通に教室から来いよ……つーかおま、滅多に激突とかしてこねぇだろーが痛い!!」
そういうキャラだったかお前は!!
最近ユキのキャラが分からなくなってきたのはともかく、脇腹が凄く痛い。ユキ痛い。
「サクライ先生に用事があってね、追いていかれないで良かったよ」
「そうなのか。ま、良いや、帰ろうぜー」
とっとと帰りたい俺又はアサキなので、俺達はそのまま帰ることにした。
けども。
「Let's make a venture!」
ユキが叫んだ。相変わらずヤケに発音が良かった。
校舎を出てまだ数分も経っていない、いや、寧ろ分単位経ったか? くらいの位置の校庭でそうユキが叫んだのだ。
「……今、何て言ったの」
アサキが怪訝そうにユキを見た。完全無欠のアサキだが、どうやら英語は其れまで得意じゃないらしい。……畜生、それでも俺よか出来るってどうよ。
だけど今回は俺は分かったぜ! ユキはこう言ったって訳だ。
「――探険すんのか?」
「その通りさ!!」
探険したいらしい。
アサキを見てみた。
「怠い」
却下された。
「良いではないか!!」
ユキは引き下がらなかった。
「怠い」
却下された。
「何だいアサキ! アサキは私と遊ぶのと家でのんびりとするの、どっちが良いというんだい!?」
ユキは頑張った。
「家」
ユキは撃沈した。
「……」
「……分かったから、分かったから素で落ち込むのやめてよ」
すぐ帰るからね、とアサキはため息をついた。でもどうやら探険に付き合うらしい。……何だかんだで暇だもんな、お前。二人の会話を微笑ましく思っていれば、何故かアサキが俺を見た。
「で、何処行くの」
「何で俺に言うの」
普通其処はユキが決めるんだろ? ――と思いきや、ユキまで俺様を見てやんの。
「早く決めてよ」
「分かったから待てっつの、考えるから待て」
「後五秒、にーいーいーちー」
「カウントちゃんと五からしろよ!!」
「さあカイリ! 頑張って決めるのさ!!」
「だあーっ! 少しは時間を寄越せっつーのー!!!!」
俺の中学校生活にユキが加わって早一年が経とうとしてるけど、やっぱりアレだな、人数は多けりゃ多い程楽しいかもしれない。
――とか思うんだけど。
「じゃ、何か食べて帰ろうか?」
「うん、それで良いよ」
ユキが素を出せる人は少ないだろうし、アサキは元から大勢が嫌いみたいだし。
「三人って、妥当なのかもなー」
「「何」?」
無駄に笑顔だった俺を見て、アサキもユキも不思議そうに俺を見た。
「――何でも!! よーし、帰ろうぜー!!」
皆でやいやいも勿論良いけど、こういうのはこういうので大事だな、って。そう思った俺だった。
平和って素晴らしいよな、結局探険じゃねぇってのは言わないでおく。