141+使い過ぎは程々に。
「もうっ! 本ッ当ーにッ!! 怖かったんだからね!?」
「分かった分かった、悪かったって」
ファミレスからこんにちは、マヒルだ。聞いての通り今、俺は再びハロウィンの時のことでウミに怒られている。
「あ、あ、あんな怖いの初めてよ……今ならどんなお化け屋敷に行ったって怖くないわ……!!」
「なら行くか?」
「行かないわよ!!」
何だ此の理不尽は。でもウミがこんなに言うんだから相当怖かったんだろうなぁ。確かにセツは半泣きだったし、流石はませ餓鬼トリオといったところだな、侮れない。
ちなみに今の今まで、というか未だ一度も喋っていないのだが、この場にはちゃんとセツも居ます。一人でもぐもぐと租借してます。
ファミレスということで、今日は二人に昼飯を奢ることになったのだ。罪滅ぼし――とでもいうのだろうか、だから俺は主犯じゃねぇっつーの。ま、良いんだけどな。
「でも流石アサキ君ねぇ……即興であんなものが浮かぶだなんて凄過ぎるわよ、ねぇセツ?」
もぐもぐ。
「もし今度またやる時は、アサキ君やユキちゃんに演出を頼もうかしら?」
もぐもぐ。
「その時、セツは脅かされる方に回してあげるから安心してね?」
もぐもぐもぐもぐ。ごくん。
「それは嫌だ!」
「相変わらず喋んねぇな」
やっと喋らなきゃいけない事項になったからか、咀嚼のスピードを若干上げて飲み込み、セツはひと言叫んだ。そして俺が呟く前にまた食べた。……嗚呼、面倒な奴。
見た目は不良なこいつだが、何故かマナーだけはちゃんとしている。口に物を入れながら喋らない、何時でも挨拶は欠かさない、など。
よくセツは俺に向かって「お前不良な癖に不良らしくねぇ」だなんて言うが、俺からしてみればお前の方がらしくねぇだろうが、つーか、俺は不良じゃねぇっつーの。
「何よー、じゃあまた脅かしたいの?」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ、ごっくん。
「つーか、やりたくねぇ!!」
もぐ。
食べる毎に喋らないなんて面倒だな、とは思うが、昔からのことらしいからとやかく言うつもりはない。第一、行儀が良いのは良いことだしな、つーか普通だし。ウミも俺ももう慣れた。
「だから飯食ってる時、ウミばっか喋ってんだな」
「あらマヒル、だったらあなたが喋れば良いじゃない? そんなに飲み物ばかり摂取してないで」
「いや、其れは無理だ」
面倒というか、柄じゃねぇ。未だ隣でもぐもぐするセツを見遣り、何か面白さを感じた俺だった。
ま、たまには奢るのだって良いよな。
「あ、アサキか? 俺俺」
『俺俺詐欺……?』
「違うわ、兄ちゃんだ」
『知ってる、何』
「いやあ、母さんに伝言が。――今月、金足らないから頼んだ」
『……』
あの野郎共にファミレスとはいえど好き勝手に使われた結果、今月の生活費がやばいことになった。――何人分食ったんだあいつ等……!!!!
『兄貴』
「ん?」
『ごめん、ガンバレ』
……うん、兄ちゃん頑張る。