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14+家族って普通に似る。


 トン……トン……トン……


「我ながら下手だな僕」


 朝です、アサキです。駄洒落かよって言った奴僕の前に倣え。

 ただ今朝ご飯作成中。包丁の音が遅いとか言わない、普段はユウヤに任せっきりなんだから。 ……最近食事当番決めのじゃんけんすらしてないな。という訳で……って訳ではないが、たまたま早く起きちゃったし枕元に漫画やらゲームやらあったからテンション上がっちゃって。寝起きなのに機嫌が良いからってのが一番の理由。ちなみに料理は大の苦手だが何か?

 というかもう九時なんだけど、何で起きてこないんだ。


「今日は母さんも居るし、マヒルも帰って来るらしいし……」


 未だ夢の中の休み軍団母と兄と赤の他人、其れに朝方帰って来るらしいもう一人の兄の分も作ろうかと悪戦苦闘中な僕。此の不器用さは一体……。


「ふぁ~……ん~、あったか~い! 朝早くからゴメンねユウく……ってアサちゃん!?」


 あ、起きて来た……って其れはどういうこったいマイマザー? 僕がキッチンに居るのがそんなに珍しい、と?


「……」


「てっきりユウ君かと……ああんアサちゃんそんな泣きそうな顔しないで! ママが悪かったわ!!」


 泣きそうじゃないよ、キレそうなだけだよ。


「でも本当にどうしたの? 不器用とかはともかく、アサちゃんが自分からそんな面倒な事するとは思えな――」


「泣くぞ」


「くもなくもなくもないわよね!」


 どっちだよ、多分否定してる……。ま、それは事実だから構わないさ、料理はどうも得意じゃない。下手な訳じゃない――と信じたい――けど、手際が良くないんだよ僕は。


「お母さん何か手伝う?」


「皿」


「はいは~い」


 スタコラサッサと皿を取りに向かう母さん。すると次の奴等も起床した様だ。


「寝坊したー……ゴメンねご飯作って貰っちゃって母さ――ってうおわアサキ!?」


「うんにゃ、朝飯ゴチりますママ様ー……って違う、アサキ様ー」


 そっくり同じ反応ありがとう兄。手持ちの包丁でどうしてくれようか。カイトは……まぁ許す。


「ちょっ、アサ君がキッチンに居るの見るの久しぶり過ぎるよお兄ちゃん!」


「まぁ、そうだろな。普段はお前なんだから」


 ウィンナー的ソーセージを切っていると隣にやってきたパジャマがわたわたしている、煩わしいぞパジャマ。


「俺代わろうか!?」


「平気だ、とっとと席着いてろ」


「とっとこー?」


「煩い何処ぞのハムスター」


 カイトは未だ眠い様だ。ボケが三割増しで素な様で。


「アーサちゃん、はいお皿っ!」


「ありがと」


 僕の料理は時間がかかるだけでまずい訳ではない。……はず。

 だから奴等を席に着かせて続き続きっと。






「あははは!」


「やぁねぇ此の人ったら~」


 数分で既にテレビに夢中。流石単純親子というものだ。よっし焼けた焼けた、皿を運びましょ。


 ガチャ


「ただ今ー」


 おや、ジャストタイミング。馬鹿が帰っていらっしゃった。


「「誰だ?」」


「兄貴だろうが」


 何故忘れてる、クリスマスに帰るって言ってただろう。リビングにスッタスッタとやってきた今風男児。


「たらいま」


「うお、マヒル兄何を」


「何を」


「いや、帰るっつったっしょ」


 怠そうなマヒルが帰還。普段からそうではないが、見た目怖めな兄ちゃんな我が家の長男。口調もそうだからカイトがカチンコチンだよ、可哀相に……。


「ん、これ誰よ」


「んー? アサきゅんのオトモダチだよー?」


「アサキの? そういやアサキは――」


「こっち」


 カイトを見て、ユウヤの説明を受け、キッチンから手を振る僕を見たマヒルは――とりあえず叫んだ。


「な、――何をしてるアサキ! 其処は母さんかユウヤの居場所だろうが!」


「貴様等皆同じ様な反応すんじゃねぇ!!」


 良いじゃん僕が料理したって! 何がいけないのさ!

 良い加減グレんぞ僕。


「もう出来たから自分等で運べよ馬鹿! 僕は先着替えてくるからなっ! バーカ!!」


 叫んでみた、や、怒ってないよ? 何時もの事だよこいつ等の扱いは。


「ちょ、待てアサキ! 俺が悪かった! 折角離れて暮らしてるのにボケのレパートリが増えてないのは凄く悪かったと思ってる!!」


「僕はんな事に怒ってねぇよ兄貴?」


 何だよ其のツッコミの性。

 そう、兄貴はそういう人。怖く見えても僕等にとってはただのブラコン兄貴。僕の目の前まで来てわたわた、そんな姿はユウヤみたいではあるが。


「平気だ! 兄ちゃんはアサキの料理だってダークマターだって食べてやる!!」


「俺の料理をダークマターと並立の形に並べるなよ」


「僕もアサ君の料理なら次の日動けなくなったって食べるー!」


「だから俺の料理は毒物かよって」


「ママだって食べちゃうー!」


 もう良い。






 ――という訳で改めて朝ご飯。


「普通に美味しいわよアサちゃん!」


「うん」


「腕を上げたねあー君、何かもう……凄く嬉しい」


「うん」


「お前が七歳の時に兄ちゃんに作ってくれたアレと比べると……うまくなったな……」


 何と比べてるの兄貴 。僕覚えてないんだけど。


「な、アサキって大変だな」


 隣に座るカイトがしみじみと言ってきた。一体何が……?


「家での役割とか」


「?」


「ツッコミとか」


 ……何とも言えねぇ。



 そんなカンジな朝ご飯で一日が始まるのだった。


 とにかく、……元気が一番だよね。



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