133+戦後の廃人を目覚めさせる為には。
アサキです。
「ただいまー」
だが今のは僕じゃない。テストが終わって目の前で本気の落ち込みを見せるユウヤはソファだし、他に帰って来るといえばまあ一人しか居ない訳で。
「お、二人共居るじゃん」
「お帰り」
「……」
珍しく僕が返事をして、ユウヤは全く反応しない。そんな様を不思議そうに声の――、マヒルが見ている。
「テストが悲惨だったんだよきっと」
そう言ったらやけに納得した表情をしたマヒル。其れで納得されるユウヤってどうよとか思ったけど、当の本人は体育座りで座っている。
「で、兄貴どしたの」
「ん、特に理由は無いんだが」
無いらしい。
「だけど今からセツとウミが来る、構わないだろ?」
あるじゃないか。
「まあ。でも其の前に」
「?」
「――此のネガティビアンを二階に運ぶべきだよ」
兄貴は此れにもあっさり納得してくれました。
「――という訳なのよっ!」
それから数十分後、何の話かはよく分からないけど何か白熱して語るウミさんと、
「へー」
的確な位置で相槌を打って話を流しているセツさんがやってきた。セツさん何やらレベルが上がった気もする。
「アサキおかわりー」
――プラスα。
「何でお前が居るの」
「え? だって姉ちゃんがお前ん家行くっつーから」
「だからって付いて来るなよ」
飲み物のおかわりを要求するカイトが付いて来た。何だお前。インフルエンザ何処行った。まぁ、治ったのなら何よりだが。
「――だからセツも気を付けなさい、分かった!?」
「おう」
「――で、何しに来たんだったかお前等」
そしてウミさんの話が終わったのを見計らって的確に話題添加を加える兄貴、何事に対しても一番器用なのが此の人なんだろうな。
「あ、そうだったわね! ねぇねぇマヒル――ハロウィンパーティーしない? 昨日セツと話してたのよー!」
「そうそう、パーティー良くね?」
「ソノハナシノタメダケニウチニキタノカオマエラ」
まさか兄貴が片言になるとは思わなかったけど、確かにそんな話なら他所でも出来るだろうに。さっきまでの白熱話は何処へやら、wktk気分でマヒルを見るウミさん。
「だって最近寒いんだもん」
「寒いからと言って人自宅を使うのかお前は」
「でね!!」
マヒルの反論は見事にスルーされた。
「カイちゃんやアサキ君達も混ぜて、皆でパーティーしましょ! って話なのよ」
だからカイトを連れて来たのかもしれない、そんな思惑が――と思ったんだけど、ひたすらにコーラを飲み続けるカイトを見ていたら完璧に違うと分かった。
「アサキ達も? つーと、アサキ達の友達も入る訳か?」
「ま、そういうことになるわな、どうだよアサキとカイリ君、君達友達で来そうな奴居るか?」
セツさんにそう声をかけられ、ふとカイトと目を合わせる。
「「――まあ、確実に」」
先ずユキとかな、あとアスカ君とかユキとかユキとかユキとか――(※エンドレス)。
「絶対ユキは来る」
「ユキ? ――嗚呼、あの可愛らしい子か」
マヒルが少し考えてから頷くが、其の解釈でちゃんと男だと分かっているのだろうか……? 気になる点だがまあ今は良いとしよう。
「大勢でわいわいだなんて楽しそうじゃない! 此処の家だったら沢山呼んでも大丈夫でしょ?」
未だwktk状態のウミさんはニコニコと僕等を見遣る。まあ、家でやるなら楽で良いけど、そういう騒がしいイベントは本来――
「その話、此の俺に声を掛けずに進めるだなんて許さない!!!!」
――このお祭り男爵の役目だと。……うわあ、部屋に押し込んで来たのに、復活しちゃったよこの野郎。
「あ、ユウヤ」
「皆呼ぶからね! 俺に任せてよ!!」
「うん分かったわ、流石ユウヤ君ね~!」
乾いた声でユウヤに気付いたマヒルの声は、ハイテンションな大声に掻き消されたのだが。
ハロウィンパーティーだというのに、日時は其の一週間後らしい。何やらウミさんが準備したいことがあるらしいから。
――ま、楽しみにしておいてあげるよ。とりあえずは。