128+秘密のお誕生日計画!
リョウコです。15歳です。
中学三年生です。誕生日が過ぎました。
誰にも祝ってもらってない私。
「――淋し過ぎるわっ!!!!」
何よ! 年頃の女の子が誕生日だってのに誰にも祝われないって!! 私淋し過ぎるじゃない!!
「お姉ちゃんのこと? まぁ確かに――独りで騒ぐだなんてなんて淋しいのかしら――」
「アンタは黙ってなさい!!」
こんな妹はおろか、両親ですら誕生日忘れやがって……! まさかと思って待ってみても、一週間以上経ったら流石の私も忘れたんだって気付くわよ!?
「仕方ないわね、何がなんだか分からないけど、邪魔な私は出掛けてくるわ」
「いってらっしゃい二度と帰らなくていいわよ」
「あら酷い、ちなみに行くのはユズのところだから……ふふっ」
「うわ! 今なんか凄く勝ち誇った表情したでしょ!? ムカつくわね真面目にアンタって子はあああああ!!!!」
あの子が居なくなって。
自宅に一人ごろんごろん。周りの人形を触ってみるけど、何の変哲もない綿入りふわふわ人形だった。――ムカついたから投げた。跳ね返ってきて顔面に直撃した。……はぁ。
誕生日なんて、正直どうでも良いんだけど。でも。
「はぁ、モモったら、きっと私の誕生日なんか忘れちゃったのね……友達だと思ってたのに、ぐすん」
――モモに忘れられちゃったのかもしれないってことに、ちょっとだけ淋しい気分になる。
毎年ちゃんと祝ってくれてたのって、あの子だけだから。そう思うと、
「――私って、友達少なっ」
と思えて泣けてきた。
――ぴーんぽーん。
「……人が落ち込んでいる時に誰よ」
ネガティヴにネガティヴが重なるなんて嫌なんだからね。誰も居ないから仕方なく出るけど、これが宅配便のおじさんとかで、「お隣りの荷物預かってくださーい」とかだったら全力でやる気が萎えるわよ。せめて若いお兄さんであって欲しいわ! ――そういう問題じゃないわよ!!
「はーい」
私はやる気なく(※でも律儀に)返事をして、ドアノブを捻った。インターフォン? そんなの後で誰だか分かるんだから良いじゃないの。
「お届けものです」
うわ、案の定。私ってもしかして超能力者? かなり参っていたのかはよく分からないけど、よく分からなくなっている思考回路にため息をつきながら、私はまっすぐに向き直った。
――一瞬で、思考回路が吹っ飛んだ。
「どうも」
「――は……? な、何で、なななななななああああ!!!!」
「お届けものですって」
バタン。
――とりあえず閉めました。
ちょ、ちょっと待ちなさい。今、今のって配達員のお兄さん……? にしては若くなかったかしら……? あ、あの身長じゃどう見ても中学生よ。
「え、閉めないでよ」
しかも、帽子被ってて見えなかったけど、こ、此の声って……まさか……。
「ひっ、ヒコクアサキ!?」
ガチャン!! ガツン。
我に帰って扉を勢い良く開けたら、何やら渇いた音がした。……あれ? ヒコクアサキの声だったと思――
「い、いったぁ――」
きゃあああああああ!!!!
「ごめんなさいっ! 頭ぶつけたの!? ごめんなさいごめんなさいそんな近くに居るとは思わなくって!!」
慌て過ぎた! 滅茶苦茶痛がってしゃがみ込んでた!! キャップの帽子め! ちゃんと彼を守んなさいよ!!
「閉めた君の所為だ……」
「ほ、本当にごめんなさい……なんか、その、変な人かと……」
アナタだと思ったらテンション上がり過ぎて――とかは言えないわよ。
にしても、何よアンタその格好、キャップに作業着みたいな服着くさって。本当の宅配便にでもなるつもりなの?
「――というか、何か用……?」
家まで着、……着て、くれちゃって……。
「だから、“お届けもの”です」
「え……?」
「ランモモさんから、君へのお届けものですって。僕宅配便だから」
お届けものにしては無造作だったけど、放るようにして自称宅配便は私にお届けものとやらを渡した。
……モモからの、お届けもの……?
「ただいま戻った」
「ど、どうだった!?」
カトウの家から徒歩三十秒の位置、家の影で僕を待っていたのはランと、その他数名の野次馬。
「略すなよ」
「心読むなよ」
慌てたように僕に駆け寄ったのは、珍しくもランで。きっと、カトウが喜んでくれたかを心配してるんだろうけど――飛んだ無駄足だな。
「カトウからの伝言」
「?」
「“後で私の家に来なさい、以上”」
「ふぇ!?」
あ、ビクついた。怒られるとでも思ってるのだろうか。
そんな訳あるはずがないのにな、カトウのあの嬉しそうな表情を見る限り。
「リョウコ、気に入らなかったのかな? やっぱ蛙の方が――」
「それはねぇよ」
カイトとユウヤの茶番劇は放っておいて、僕は未だ続くカトウの伝言を続ける。
「“五分で来なさい”」
「えぇ!? 早いよ!?」
そう騒ぎながらも、ランは慌ててカトウの家へと走って行った。大丈夫、お前の足でも一分かかるまい。
「アサキ、リョウコは喜んでくれていたかい?」
ユキのニコニコ顔、久しぶりに見た気する。頭が未だ痛い所為だろうか。
でも後一つだけ言わせて、
「そうみたいだけど、ねぇ――僕が行く意味あった……?」
其れが一番気になるんだけど。其処に残る三人は皆苦笑いで頷いてたけど、さっぱり分からない僕の利点。
でもまぁ、呼び出されたランはきっと――カトウと二人で笑い合えてるんだろう。
其の片棒を担げた――良い意味でな――なら別に構わないかと、被り直した帽子を手に、僕は思った。




