127+秘密のお誕生日計画?/後
「という訳で、レッツだお買い物たーいむ!!!!」
周りがワイワイキャイキャイイェイイェイ騒ぐのは構わないが此処店の中だから、公共の場であまり騒がないでよ、アサキです。引き続いてます。
「一週間以上誕生日が過ぎ去ったリョウコはきっと『はぁ、モモったら、きっと私の誕生日なんか忘れちゃったのね……友達だと思ってたのに、ぐすん』となっているはずさ!」
うん、ユキ気持ち悪い。
「そんなリョウコに今から渡すプレゼントを皆で決めようじゃないか!!!!」
「「おー!!」」
「お~♪」
「……」
意気高らかなのはもう慣れたよ。
だけど気になることが約二つ。ひとつはカトウの誕生日が一週間以上過ぎているにも関わらず普通にプレゼントを渡すだけじゃ確実に忘れてたことを誤魔化せないこと。後ひとつは――
「ねね! リョウちゃんってお人形とか好きかな!?」
「うん、リョウちゃんはお人形とか凄く大好きだよ~。可愛いものが好きなのー、可愛いでしょー」
――何故お前が居る、ユウヤ。
「おい」
「キラリン! 何だいアサ君!」
「今のキラリンなんだよ」
「効果音☆」
じゃなくて。
「何で居るのよ」
僕等は学校帰りに来たはずなんだけど。お前に声掛けた記憶はないんだけど。そんなことを思いながら言ったら、物凄く――は? みたく変な表情をされて、
「何言ってんのアサ君……俺が面白そうな企画壁越しに察知出来ないと思ってたの……?」
と言われた。
……ん?
「出来るのかよ……!!」
おま、双子の兄貴の知られざる裏技だよ此れ、気持ち悪ッ!!
更に笑顔なユウヤがムカついたので、僕等はちゃっちゃと買い物に移ることにした。というか僕は早く帰りたいんだ。選び方はこう、一人ひとりが良いと思ったものを持ってその中から選ぶ。無難だ。だが、
「あ、アサキ君は後でやってもらうことがあるから、選ばなくても良いよ?」
と、ランが満面の笑みで言うものだから、僕は勿論お言葉に甘えて其処ら辺の室内ベンチに座った。
「俺が絶対良いの選ぶからね!!」
「はん! この俺様に決まってんだろ!?」
「皆、頑張ってね~!」
「はっはっは、モモ、君は頑張る気ないのかい?」
そういや抱いていた最初の疑問を残したまま、そんな台詞を吐きつつ各々散らばっていったけど――あれ、後でって、僕何するのさ。
まずはラン。
「こんなのはどうかな?」
持って来たのは大きなテディベア。でかい、極限でかい。ランとテディベアどちらがでかいかと聞かれればテディベアでかい。
「モモちゃん! 何時からテディさんになったんだい! こんな毛むくじゃらになっちゃって!!」
「テディーさーん!!」
ユウヤとカイトが五月蝿いから却下。というか持って帰るのが困難過ぎるから。人形抱えてる人だか人形に引っ付いてる人だか分からねぇよ。
次、ユウヤ。
「ででーん」
洋服。
可愛いらしい洋服。純白でレースの透き通る、光に当てればキラキラとスパンコールが光りを放つ――
「此れ、何歳用だよ」
――シンデレラのドレス。
「おもちゃ売り場にあったのさ」
「リョウちゃん流石に着れないよ~」
まずおもちゃ扱いされている服を持ってくるな。
「しかし可愛いといえば可愛いね」
「ユキちゃん! でしょ、でしょ!?」
「ユウヤ趣味良いな?」
「うん、ただ俺が昔だったら欲しかぐはぁ!!!!」
ユウヤが何か世間体でバレてはいけないことをバラしかけたので却下。
「ちょ、あ、アサキ死ぬ――!!」
聞こえない。足元から何も聞こえない。
「見事な飛び蹴りだったよ、アサキ」
「日頃からあれくらいアクティブならなぁ……」
他の野郎の言葉も聞こえねぇよ。
次、カイト。
「ほい」
「……」
「あー君、反応して」
「いや、反応しろと言われても……」
カイトが持ってるのは蛙の人形。
「……げこー」
蛙。
「蛙だね」
「蛙だねー」
「蛙だねぇ」
「何故に蛙」
「やっとツッコミやがった!!」
ツッコんで欲しかっただけかよ。
「いやさ、探し回ったんだが……――どれも破壊力に欠けるというか……」
「お前は誕生日に破壊力あるもんしかあげられないのか」
照れたように頭を掻いているが、誕生日に破壊力は要らんと教えた方が良いのだろうか。一般教養の中に無いのか、それ。
「リョウちゃん、蛙嫌いだよ~。この前『この軟体め!!』て怒ってたもん」
「マジ? やりィ!」
「何がだ。というか怒り方に問題有な――」
「この蛙野郎!!」
「お前は黙ってろ」
蛙は軟体動物じゃないだろってことが言いたかっただけなんだけど。なんか落ち込んじゃった飽和馬鹿ことユウヤは放っておいて、破壊力抜群の蛙は却下だ。
最後がユキ――ろくな物持ってきそうにないが……。
「こういうのは可愛くないかい?」
ユキが持ってきたもの、其れは――簡易的でシンプルで、同系統な言葉を二度言ってしまう程質素な指輪だった。黒と白がクロス状で交わっている、僕が見るに綺麗な指輪。
其れを見て言った最初の一声は、
「「ユキにしては普通」」
というカイトと僕の言葉だった。
「おや? 君達は私をどんな人間だと思っていたんだい?」
「いや」
「まぁ」
「「変人」」
「あっはっは! 二人共、殴っていいかい?」
爽やかなユキを眺めてから、其の指輪をランに渡す。うわぁ、と感嘆の声を聞く所、――気に入ったみたいだ。
「リョウちゃんにぴったりだね! うん、ユキ君のにしようよ!」
「さんせー!!」
ランとユウヤが騒ぎ立てて、無事此れで決まった訳だ。やっと開放されるんだと思えば身体が軽くなるもので。
「じゃ、帰る」
スタスタと先走って帰ろう。そう歩き出した僕の腕を掴んだのは――常識を逸脱するくらい珍しく、ランモモ、といった普段は大人しい女の子であって。
「アサキ君、アサキ君の役目はこれからだよ!」
普段の柔らかな笑みというよりは、意思を持った元気な笑み。是が非でも離してくれなさそうな其の腕を見てから、僕は諦めてため息をついた。
何、何する訳?