126+秘密のお誕生日計画?/前
「はぁ……」
アサキですが、今のため息は僕じゃない。僕とカイト、ユキの他に一組に居る奴と言えば――ランしか居ないのだけど。
「んぁ? どうしたよモモ」
ため息の主にカイトがそう言うと、普段の此方が幸せになるくらいニコニコな笑顔が曇っているランがカイトを見た。
「んーんー? 何でもないんだよ~?」
「嘘つけ、何かなきゃモモがため息なんかつかないだろ?」
「そうだね! 何時だってニコニコなモモが何も無しにため息をつくだなんて、世界が一日五回転したってありえない話さ!」
「ユキ君、私に恨みでもあるの……?」
ユキが話すとややこしくなるな。
「んで、何かあるんだろ?」
「んー……実はね――」
結局何かあったのか、僕等は全く気付かなかった。
だからランは少し溜めてから苦笑、といった笑顔で言う。
「――リョウちゃんの誕生日、忘れちゃってて」
………………だから?
「アサキ君、今だから? って顔したでしょ」
「何故バレた」
「知らないのかいアサキ!!」
何故バレたんだよ、教えてくれよ。僕ってそんなに分かりやすいのか。
とか考えてる内に阿呆が反応しやがった。座っていた椅子をガタンとぶっ倒し立ち上がりやがる。
「女の子にとって誕生日とは大切な行事なのだよ? 忘れてしまっていたのは仕方ないが、さして心配するはその後、いかにして相手を祝うか――ということさ!」
「わぁ、流石ユキ君だね!」
「ユキは野郎だけどな」
僕の周りはこんなのしか居ないのか。
「私の誕生日は、リョウちゃん大きな可愛い犬のぬいぐるみをくれたのー」
「モモって誕生日何時なんだ?」
「四月だよ? ロクジョー君は?」
「あ、俺二月」
「ちなみに私も四月なのさ!!」
「わ~、ユキ君近いね~」
「お前等、話題逸れてるぞ」
僕の指摘でハッとする三人。こいつ等は絶対徐々に何話してたか分からなくなるタイプだ。
「でね、SW中ずーっと何が良いか考えてたんだけどまーったく浮かばなくて……」
「へぇ……」
「うわ、アサキ全く感情篭ってねぇ」
仕方ないだろ、やる気ないんだから。
「でもアレだね、女の子という種族は何故そんなにも誕生日を気にするんだい?」
さっきまで力説してた野郎が何を。ユキは再び席に着いてランに尋ねた。
……それもそうだな、誕生日なんて結局只の生まれた日、僕にとっちゃゲームの発売日の方が気になって仕方がない。
「――特別、なんだよ?」
ランは普段と同じにっこにこの笑みでそう言った。
「女の子だけじゃなくて、大切な人が生まれた日は、ちゃんとお祝いしたい。だから私はリョウちゃんだけじゃなくて、こんな私と友達になってくれた三人の誕生日もお祝いしたいよ?」
「「……」」
凄く深い良い話だ―。
しかし三人の誕生日、といってもユキは既に去っているらしいし、カイトは確か――
「カイト」
「あん?」
「お前の誕生日、今回来るっけか」
「ああ、来ねぇな」
――閏年だったよな。
「いいんだよ~、そうしたら前日に祝うの~」
何でも良いのか。まぁ、カイトもそれで満足みたいだからいいか。
「で、カトウの話は何処行った」
「「あ」」
また逸れた訳だ。
「私に良い案があるよ!」
ガタン。ユキはどれだけ立ち上がるのが好きなのだろうか。いちいち立つな、煩わしい。
「話が盛り上がったのだから、豪勢にいこうじゃないか!」
ユキの笑顔が何かを含む笑みに変わった。くすり、と笑みで歪ませる感じに。
まあ要するに――僕が巻き込まれるのは、必須事項だとでも言うかの如く。




