124+誰だって楽しいことが好きだから。
「へぇ、アサキは今日お泊り会か」
「うん、カイト君家でユキちゃんと三人でだって。ユキちゃんから電話で言われたー」
「――嗚呼、完璧にアサキの意志無視っぽいな」
ユウヤだよ、ユキちゃんから「はっはっは、今日はアサキを預かったよ! 何かあったらカイリの自宅に連絡をくれたまえ!」と電話があったんだけど――アサ君、大丈夫かな。
未だ夏休みな大学生、マヒル兄にそんな話をする俺。畜生、何時まで夏休みなんだよ、羨ましいなぁ。
「ユウヤ」
「何ー?」
「お前淋しくないのか?」
「え? やだなぁマヒル兄、俺だってもう直ぐ高校生なんだよ? ――淋しいに決まってるじゃん」
「……」
あー、アサ君達何してるのかなー。
「はい、上がりさ?」
「ぐはっ! またユキが上がりかよ!! 何なんだよお前!!」
「あー負けたーじゃあもう寝ていいかなー」
畜生! 全く勝てない!! どんなにいいカードが来ても、全く大富豪でユキに勝てないのは何故なんだ!! あ、カイリッス。
約一名この上なくやる気がなく既に毛布に包まっているが気にしちゃいけない。いや、気にしなかったらマジで寝ちゃうんだけど、頗る自由だよなコイツ。てかお前、大富豪強くなかったか?
「ふふっ、未だ十時だというのにアサキはもうおねむかい? 今時小学生も寝ていないぞ?」
「どうせ僕は小学生以下さ、だから寝かせてくれ」
ユキはユキで真逆に、全く眠気を感じさせない清々しい笑顔を見せている。――まぁそうだよな、今日うちに泊まるのを楽しみにしてたのはユキなんだから。
『私は今一度、誰かの家にてお泊り会のようなことをしてみたいのさ!』
そんなことを言い出すもんだから、じゃあうちどーよ、と言ったら笑顔で来た。ついでにアサキも引っ張ってきた。というか学校帰りに来るくらい楽しみだったらしい。
少し前にアサキの家に泊まったのが凄ぇ楽しかったんだろうなー……ユキってそういうところが餓鬼っぽいと思う俺。普段はずば抜けて俺が餓鬼なのに――いや、それは認めねぇが――とか考えてる間に、本格的にアサキが寝ようとし始めました、おい。
「アーサーキー! 早ぇよ!」
「眠らないと人間機能しないって」
そりゃそうだけども。人の部屋で人の服で、しかも人のベッドで寝る気かお前! 引いてある布団はからっきし無視か!!
「まぁまぁ、良いじゃないかカイリ、私達もたまには早く寝るというのはどうだい?」
私達も、という台詞からお前が夜更かししまくりだということは分かったけど、まぁそれも良いか。俺は散らばっているカードを適当にまとめる。
ベッドはアサキに取られてしまったんで、仕方なくユキと並んで敷き布団に入る。普段と違う天井だな。
「カイリ」
カチッ、と音を立てて電気を消せば、反響するようにユキの声が聞こえた。
「今日はすまなかったね。私の我が儘で」
「いやいや、俺ん家いつでも大丈夫だからな、姉ちゃんしか居ねぇし」
「ははっ、それじゃあまた来るとしよう。アサキの気が向いてくれた時にね」
普通の一軒家で此処まで喜んでくれるなら、別に悪い気はしないな。アサキの気が向くのが何時なのかは分からないけど、結構楽しみだな、と思った訳で。
「休みの日」
あれ、アサキが未だ起きてたのか。
「せめて休みの日にしろ、あとユウヤも誘ってやれ、後が面倒臭ぇ」
「あー、それは確かに」
「ユウヤがグレそうだね。アサキを取ってしまったことに対して」
だな、今度はユウヤも誘おう。アスカも来れたら良いんだけど。うちは何人だってOKだもんな。
「じゃ、お休み」
「おー、お休み」
「お休み、また明日」
明日も学校で、全然疲れが取れてそうにないけど、それもまぁ良いか。