119+これの食べ方。
「いっただっきまーす」
「はい、召し上がれー」
そう言って手を合わすのはユウヤで、笑って返事をするのは勿論マヒル。夕飯開始ですアサキです。
夏休み中居る兄貴のお蔭で普通に夕飯にありつけるってもので。――だが。
「おい」
「アサキはいただますを言わないだけでなく兄ちゃんを“おい”呼ばわりか」
「いただます」
「よし――違う何かが足りない」
じゃなくて。
「今日のご飯は何だ」
「……見ての通り、スパゲッティだが」
「味はー?」
「勿論トマトとチーズだぜ」
「黙れ馬鹿共見て分かれ」
ユウヤが首突っ込んで来て話題が逸れた……! だから、僕が言いたいのは――
「此れは何」
――其の横に付属されている食べ物について、だ。
「――納豆」
――ですよねー。って、だから。
「何でスパゲッティに納豆なの」
完璧なるミスマッチじゃないか。
僕の確実に的確なる指摘に、マヒルもユウヤもフォークを止めてその四角い箱に納まる某納豆を見る。――そして二人して一言。
「「駄目?」」
「いや、駄目じゃないけど」
不思議そうに首を傾げるな、僕が馬鹿みたいじゃないか。……あれ? 僕がおかしいのか……?
「いやぁな、賞味期限が多少過ぎちまってて」
「本音は其れか」
良かった、僕は正常だったようだ。マヒルが本音とばかりに其の納豆を指差す。だからって今出さなくても……。
「いーじゃないかアサ君! 納豆は体に良いんだぞー!!」
そしてその横のノリノリの方は、冷蔵庫から卵を取り出して来て僕に見せ付けてくる。……いや、別に羨ましくも何ともないんだけど。
そしてユウヤは話題の的、納豆と其れを混ぜて、残っていたらしい白米にかけてしまった。
「――スパゲッティあるのに白米食うのかユウヤ」
「兄貴、ツッコミ所が違う……!」
随分神妙にツッコむものだからびっくりしたよ僕は。確かにユウヤの食欲は問題だけど、其れ以上に――
「納豆に卵……?」
――という事実だ。
「え? 納豆には卵でしょ?」
「いや、納豆には醤油だろ」
「醤油もかけるけど、やっぱり卵だよ!」
「絶対無い」
「あるよ! 美味しいもん!!」
「ありえないね、第一、今の此の不況に卵がどれだけ高価な品かお前は分かってるか? 昔は安ければ百円で買えた卵が今じゃどうだ、なのに納豆を食べる毎回卵を使っていたらどれだけ金がかかると――」
そんな会話を続けていたら、何時の間にかエスカレートしてこんな話題に。いや、エスカレートした訳じゃないな、僕が勝手に話し出しただけか。其の証拠にマヒルもユウヤも唖然としている。
「ち、ちょいアサキ」
「――何?」
「中学生にしては話題が深い」
それはごめん。
「ユウヤがついていってないから」
よりごめん。
ユウヤは何やら停止して、愕然と此方を見ながら目を見開いている。……何にショックを受けているんだ貴様。
「兄貴……卵が家計の負担になっているって本当かい!?」
「アサキも其処まで言ってねぇよ」
今の話題で其処まで考えられるなんて凄いなおい。ある意味一種の才能だぞ。
結局ユウヤは美味しくそれを頂き、スパゲッティも美味しく頂いたらしいです。凄い。
「でもさ、アサ君って納豆どう食べる?」
食後の休暇中、ユウヤが再び納豆をネタを振ってきた。
「……僕は普通に醤油」
「納豆のたれとか、からしは?」
「たれは使うけど、それに醤油を足す。そしてからしは絶対に入れない」
それが僕のポリシーだ。……何だそのしょっぼいポリシー。
「マヒル兄はー?」
「俺? んー……普通に中のぶち込んで、葱刻むだけだな」
「普通だね」
「悪いかこら」
悪くないとは思うけど。要するに、兄貴は無難な訳だな。
「母さんって確かたれだけ派だったよね」
「だなー。父さんは俺の葱抜きだったか」
「家族なのに皆食い方違うって面白い」
何故なんだろう。食生活の違い……? 確かにうちは皆違うけど、僕とユウヤがこうも違うのは凄いと思うな。永遠の謎だ。
さて、アナタはどう食べる――ってね。
休日に遊びに出掛けた時に出た話題。
友達はユウヤ派の食べ方らしく、素でびっくりした作者でした(←
不況についての話を説いたのもまさに作者、馬鹿か。
ちなみに自分はアサキの食べ方ですね。朝夜内の人達は色んな食べ方しますが一人っ子コンビは納豆が嫌いです(どうでもいい話)