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115+ばーさす夏祭り。


 何か変じゃないわよね……。私は鏡を前にくるくると見なりを確認する、リョウコです。ほ、本当に変じゃないわよね……!?


「お姉ちゃん……」


「な、何よ! ねぇコトナ、変じゃないわよね!?」


「安心して、変なのはお姉ちゃんの頭よ――」


「安心出来ないわよ!!」


 相変わらずな妹ね……。し、仕方ないじゃない! 変じゃないかって不安なのよ! そりゃあ鏡の前で浴衣着て二時間も居れば変かもしれないけどさ!!


「そろそろ時間なんじゃないのかしら、モモちゃんと待ち合わせているのでしょう?」


「そ、そうだけど……」


「大丈夫よお姉ちゃん、世界にはこういう言葉があるわ」


 我が妹は私の肩に手を置いて、普段通り笑顔のない無表情でこう言った。


「“馬子にも衣装”――って」


「アンタ喧嘩売ってるのね!? 買ったわその喧嘩!!」


 この馬鹿妹が! 時間があったら殴り飛ばしてやるところだったわ!!


「あとで覚えてらっしゃい!」


「お姉ちゃんは知らないのかしら、私の記憶力はお姉ちゃんの約五分の一……」


「黙らっしゃい! 勉強しろ!」


「いってらっしゃい、死体さん」


「死体!? ちょ、待ちなさいよお姉ちゃんになんてことを――」


「あらお姉ちゃん、気付いてないのかしら――浴衣の着方、逆よ」


「……」



 ――先に言いなさいよ馬鹿ぁ!!!!











「リョウちゃん達遅いねー」


 ユウヤです。皆の待ち合わせの場所にやってきて早十分。待ち合わせ時間は五分程過ぎてるんだけど、リョウちゃんとモモちゃんが未だ来ない。


「何だ何だユウヤ、リョウちゃんっていうのはリョウのことか?」


「うん、勿論」


 今日は待ちに待った祭りの日。夜だからこそ楽しい祭りだからそれらしい時間に待ち合わせをしたのに、肝心の言い出しっぺがまだ来てないんだよなー。相変わらずユウリは五月蝿いし。



「なぁアサキ、あの子ってユウリちゃんなんだよな?」


「うん、何でよ」


「大分前会った時と、雰囲気違くない?」


「……嗚呼、あれとは別物と考えて、初めましてでやりとりしていいよ」


 後ろで嫌々来させられたアサ君と、ユウリを見て首を傾げるカイト君の会話が聞こえてきた。……あの時のユウリは俺だからなー。適当にアサ君に任せよう。

 その横にはオトワも居る、何だあれ、背後霊みたい、怖いなあれ。



「あ、来たじゃないか! おーい、リョーウー!!」



 お、来たみたいだね。見慣れた二人組がこちらに向かってくる。


「ご、ごめんなさい、準備に時間が……」


「ごめんね~」


 申し訳なさそうなリョウちゃんにニコニコなモモちゃん。格好は二人共何時もと違っていて、――何だか可愛さ三割増しだね!


「うわぁ、浴衣着てきたんだね!」


「わ、悪い!?」


「リョウちゃん、誰もそんなこと言ってないよ……」


 リョウちゃん真っ赤だー。きっとアサ君に見せたくて着てきたんだろうけど――


「アサキ、浴衣って着たことある?」


「無い、祭りにもあまり来ない」


 見てないっていう。残酷だぜ、我が弟。


「きゃー! 可愛い! 何なのさリョウ! それに此方の、ベリーキュートな子誰!? あたしに紹介なさい!!」


 そしてこっちのあまり見てなくていい奴が見てたりする。ユウリはマッハにテンションが上がってリョウちゃんとモモちゃんに食いついてるよ。


「え、あ、ユウリ」


「ようあたしだ! というかリョウ! お前可愛過ぎるぞ! 惚れるぞ!!」


「あ、ありがとうね……」


 寂しそう!!!! リョウちゃん超寂しそう!!!!


「リョウちゃん、此方の方は?」


 きっとその寂しそうなリョウちゃんを悟ってるモモちゃんが、持ち前の笑顔で横入りしてくる。其処でユウリの標的が変わってキラキラキー、とモモちゃんを見た。


「あたしクガユウリ! ユウヤとアサキの従姉なんだ! あ、今アサキの横に居る背後霊みたいのがあたしの弟な?」


 弟を背後霊呼ばわりしやがったよ姉ちゃん。というか、俺と同じこと考えてたのかよ。


「わぁ、ユウヤ君とアサキ君の? 私はランモモです、宜しくお願いしますね」


「おう! うわー、マジ可愛い、何此の可愛いさ……君達二人高校行ったらモテモテじゃん……!」


 モモちゃんの笑顔にやられたユウリがブツブツと呟いて戻って来たが気付かないことにする。とりあえず揃った訳だしね、計七人、多いかな。


「アサくーんカイトくーんオートワー! 行くよー?」


「おーう!」


 三人に言っても帰って来た返事がひとつって寂しいよね。まぁ、慣れたからいいや。

 此処からが本番なんだしね!


「リョウちゃん」


「何よ」


 だからそう思って、笑顔でリョウちゃんに言っておいた。


「頑張ってね、本当頑張らないと――アサキは振り向いてくんないよ?」


 本当、気難しい弟だもの。

 そう言ったら、リョウちゃんは一瞬ポカンとして、――みるみる内に赤くなった。


「は、はぁああ!?」


「でしょ?」


「ば、馬鹿言ってんじゃないわよアンタ!! い、行くわよモモ!!」


「え? う、うん」


 図星だったんだなー、と思う反応をして、リョウちゃんは行ってしまった。



 ――ははっ、楽しみ。




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