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11+正しい知識を身につけよう。


「避難訓練!」


 凄く楽しそうな兄が居ます、何が楽しいのかさっぱり分からない僕としてはうざったいこと窮まりない。こんにちはアサキです、今日は肌寒い校庭にて、避難訓練があるらしいです。


「楽しみだな~、早く給食室燃え上がらないかな~」


「楽しみ其処かよ」


 どうやら訓練の楽しみでは無くて、其処が楽しみな様だ。放火魔は皆そう思うんだろうな。


「三分で避難! 目標!」


「……」


「そして守るべきは“おかしも”の魔法!」


「そろそろ止めろ、恥ずかしい」


 人のクラスで騒がないで、というか三分目標にしてるならとっとと自クラスに戻ってくれ、頼むから。


「そんなユウヤに問題! “おかしも”の“か”は一体何でしょーか!」


 其処に馬鹿ことカイトが加わった。畜生、僕にはもう対処不可能だ。という事で聞き流す事にした。


「そんなの簡単! “おかしも”の“か”は――悲しまない」


 死ぬ前提か。


「ははっ、何になのかは分からないけど正解は“駆けない”だぜ?」


「え、そなの? マヒル兄に聞いたんだけど」


 あの馬鹿野郎、馬鹿に何馬鹿なこと教えてんだ馬鹿兄貴。

 ……分かりにくいとか言わない、どっちも兄貴なんだから仕方ないだろ!


「じゃあ“お”は?」


「起きない」


 死ぬぞ。


「し」


「自殺しない」


 大事だけどさ。濁点付いてるけどいいのか。


「も」


「揉めない」


 だから何に。

 ……起きない悲しまない自殺しない揉めない……これは一人暮らしのおばあさんの火事発生から葬式後の遺産相続についての見解までの話か何か?


「うん、其れ面白いからサックラ先生に言って来いよ」


「よしきた」


 カイトがそう言うと何によしきたのかユウヤは、一人暇そうに火事発生合図のサイレンを待つサクライ先生の元へ行った。


「さっちゃん先生」


「誰がさっちゃん先生だ馬鹿野郎、せめていっちー先生にしろ」


 よく分からないよ先生。


「んじゃいっちー先生」


「何だ」


「起きない悲しまない自殺しない揉めない」


「誰かの祖母さんでも死んだのか」


「いや、火事に必要な“おかしも”なのですよ!」


「帰れ」


「よしきた」


 帰ってきた馬鹿、上手い具合にあしらわれたらしいな。まぁ、まともな人はそう言うでしょうよ。


「言ってきたぜ!」


「ご苦労だぜ!」


 僕と彼等の間には何かフォッサマグナ的線があると思う、あって欲しいと僕は願う。

 ……すると。



 ウー――――――……


 サイレンが鳴った。


「わー!」


「キャー!!」


「カイリ、ユウヤ、お前等地震じゃないから机の下に入るな!」


「ちょ、お二人さん、僕の机は二人も入る要領ないんだけど。カイト、お前は隣の机使えよ、自分のだろ」


 もこもこする、下がもこもこする……! 僕が座ってる下に入ろうとするな!


『――ええと訓練、訓練。ただ今、給食室よりカサイ君が発生しました』


「「誰だよ」」


 見事な僕とサクライ先生のハモり、下の二人とクラスの奴等は皆机の下に居ます。……馬鹿の影響って怖い。


『失礼しました、今回発生するのは一年二組のお馴染み給食泥棒カサイ君ではなく、火災でした』


 どんな間違えをしているんだ先生、この声は多分二組のアヤメ先生だと思う。……流石ユウヤの担任。そしてそのカサイは毎回何をしているんだ。


『皆さん、クラスの担任の先生の指示に従って避難して下さい』


 普通にそう言えば良いじゃん……。という事で僕は一人立ち上がって、未だわーわー机の下で騒ぐクラスメイトを放って避難をしよ――


『尚、二年二組の生徒は担任が私なので一組のサクライ先生にたかって下さいね、以上』


「なろっ、アヤメの奴……!!!!」


 ――うと思ったのに二組の奴等が沢山廊下に居て出れなかった。


「「先生ー!」」


「うるせぇよ、とりあえずさっさと避難する事! 二組の奴等は先に並んで校庭行け!!」


 投げやりだが指示を出したサクライ先生、二組の方々はわらわらと一組を後にし始めた。良かった、このままじゃ出れない所だった。


「じゃあ一組! 一組は反対側の螺旋階段から下りるからな!!」


「「わーわー」」


「ちゃんと着いて来なかったら――数学の成績落とす」


「「はい!!」」


 職務乱用? 此の先生にそんな言葉通用しませんよ。だってうちのクラスはそんな事を此の人に抗議出来る程勇敢な戦士は居ませんから。


「せんせ、俺二組だけど成績落とされますか?」


「いや、お前のは落とさん」


「やた!」


「もう落としようがないからな」


「――じゃねぇ! 聞き捨てならぬ台詞が!! 俺もしかして煙突!?」


 ――兄の不甲斐ない成績が聞こえてきた所で、螺旋階段をぐーるぐる。こういうのって普段は使えないから少しだけ端の一組って得だなと思う。


「うはー、ぐーるぐるぐーるぐるー」


「ぐーるぐるなのはカイトの頭だよ」


「あー君、お兄ちゃん何か煙突立てられちゃったみたい」


「ドンマイ」


 一人で二人を捌くのは辛いものがある、つかユウヤ、落ち込み過ぎだろ、さっきまでのテンション何処行った。今更成績1が何だ。

 校庭には沢山の生徒、僕等もこぞって並ぶとやっとユウヤが二組に戻って行った。


「学年委員、点呼」


「はーい」


 面倒な作業だよな、学年委員。僕は未来永劫絶対やる気はない。よくやるよ、うちのクラス委員め。……嗚呼、カイトだったっけ。


 そして長ったらしい話を聞き捨てて、僕等は教室に戻る訳だが。やっぱ面倒だよ訓練は……。でも無事に終わったなら良いか。


「……あれ、おいコラ奉仕委員! 下駄箱に雑巾用意しとけって言っただろうが!」


「……あ」


 僕だった。


 そして皆、地域差はあるが本当の“おかしも”は“押さない”“駆けない”“喋らない”“戻らない”だからな、間違えてもあの馬鹿のことを信じるなよ! 



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