108+夏休みはクーラー命。
「うにゃーん」
「そんな可愛くもない擬声を上げるな」
だって暇なんだものユウヤだよ、夏休みに入ったけど其れは其れで暇だよう。うむむー、クーラー様のおかげで部屋は涼しいけど、アサ君はゲームに夢中で遊んでくれないし。
「ユウ君アサちゃーん」
おお? 珍しく自宅に居る母さんが下から呼んでいる。楽しいことでも持って来てくれたかい? ――まぁ下から声が掛かっただけで来る気配はないので、俺が行く羽目になるんですね分かります。アサ君は動かないから。
「何ー?」
あっつい階段を下って涼しいリビングにやって来ました。やべぇやっぱりクーラー涼しい。
「ラブレターだよん」
「ラブレター?」
可愛いらしい手紙を渡してきた母上。確かにシールはハートだけど、誰からですか。
「……あ、ユウリだ」
受け取ってみればあら不思議。遠い従姉の名前が其処にはありました。
「アサちゃんとユウ君宛てだから渡しておくわね」
「はーい」
俺は刹那に二階にバックするけど、アサ君は無反応でした。
「ユウリから手紙だって」
「ふーん」
興味ねぇなおい。
分かってたことだけどさ! 仕方ないので独りで読みます、くすん。
あ、やべ、破いた、……いっか。
『親愛なる 我が従兄弟殿達へ』
マヒル兄に渡してやろうかと思った始まりだった。
『 やっほー、元気? あたしはすっげー元気だぞ! そっちは暑いだろー? 勿論こっちも暑いが、お前等はクーラーガンガンにしてるんだろうからいいよなぁ、あたしん家はリビングにしかないんだからな! 心して使いやがれよアサキ!!』
一枚目はアサ君一人にダイレクトアタック文で終わった。二枚目。
――行こうと思ったけど字が多いよう。
「アサ君」
「ん」
「パス」
「手紙くらい自分で読めよ阿呆」
だって字が多いんだもん。アサ君はうだうだ言いながらも読んでくれました。
「《――いや、そんなことはさておき。用件に行くよ。八月の最初の日曜日から、弟と一緒にそっちに行こうと思うんだ。お前等ん家伯母さんと伯父さん滅多居ないだろ? そんな中厚かましいだろうけど、夏休みの間泊まりに行ってもいいか? 実はお母さんとお父さんがよく分からないけど旅行に行くらしいんだよな、あたし等置いて。だから腹いせにお前等に会いに行ってやろうかと思ってさ。手紙が届いたら電話でもくれよ、合否もそれで伝えて欲しいな。そういうことで宜しくー。》――という訳だそうで』
要するに、ユウリとオトワがこっちに夏休みの間に来るって訳らしいです。おお、そりゃ楽しみだ。
「とりあえず母さんに言っとけよ」
「言わなくても結果が分かり切ってるよ」
「一応だ」
アサ君はゲームに戻ってしまったので、再び下界へバック。母さんに言えば「是非……!!」とキラキラした目で言われてしまった。どっちが子供なんだよって感じだけどそれがうちのマミー。
「ユウリちゃんとオト君が来るのは初めてだから、駅まで迎えに行ってあげなさいね?」
「うん、分かってるよー」
母さんが今からうきうきする意味も分からないけど電話電話。ユウリ達の自宅に電話をする為に三度二階にバックすれば涼しいクーラーな自分達の部屋で電話する、手紙で注意されたけど知るものか!!
電話先の音は、ワンコールで一度途切れた。
『はい、クガですけどもっ!!』
「あ、ハザラさーん? ユウヤだけどユウリ居るー?」
『わうわ! わうわうユウヤくーん!! お久しぶりだねっ! ユウかい? んー、今出てるんだよねぇ……オトなら居るよ!!』
「じゃあオトワに代わってー」
相変わらずなハイテンション、父さんの妹には思えないハザラさんだった。叔母さんって歳にも見えないから、ハザラさんって呼んでるけども。電話越しに『おっとー! ユウヤ君から電話ー!!』と大きな声が聞こえた訳だしね!!
『――……』
――あれ、代わった……?
「……」
『……ユウヤお兄?』
あ、代わってた。
「オト気配が欲しい」
『無理難題』
おい小学生。
『で、何……?』
「あ、うん。ユウリから手紙届いたんだよ」
『……嗚呼。そっち、行ってもいい?』
「うん、かむおーん!」
『そこはカモンでいいじゃん』
……小学生に駄目だし喰らった。
「多分マヒル兄も帰って来るだろうから寝る部屋とかは俺達と同じになるかもだけど良いかな?」
『良いと思う。前日辺り、お姉にまた電話させるよ』
「うん分かった」
あのハザラさんから生まれた気配が毛ほどもないオトはそう言って電話を切った。すっげぇまともな小学生。
でも、ちょっと来週から楽しくなる予感。
「宿題」
「雰囲気ぶち壊しだー!!」
忘れてたのに!! アサキの馬鹿!!