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107/500

107+暑い日は本当に暑いことしか認識出来ない。


「ご注文はお決まりですか?」


「俺ドリンクバーのみ」


「そう、じゃあ俺も」


「じゃあそれドリンクバー三つにチーズケーキでお願いします」


「かしこまりました」


 笑顔の素敵な店員さんが去った後、適当な飲み物を持ち込んで落ち着いた俺達。ちわっす、マヒルだ。


「あー、ファミレスって涼しいよなぁ……」


「そうねぇ……もう外になんて出たくないわよねぇ」


 何だよ此の二人は。

 セツとウミは机に俯せるようにしてファミレスの涼しさを満喫している。そりゃあ確かに外は暑いけど、其処までならなくとも。

 ただ今俺達はレポート提出の為、大学にやってきた。だがその帰り、暑さに色々やられたので昼飯と元気を取り戻す為に今に到る。


「夏休みももうちょっとねー」


「あーだなー。高校ん時はどうなるかと思ってたけど、大学もどうにかなりそうで良かったよ俺……」


「もう二年なのに今更ねぇセツ? 第一貴方、マヒルが居なかったらレポートなんてまともに出来ないじゃないの」


「お前だって人のこと言えないだろうがよー」


 ストローでコーラを啜っていれば、二人はのんびりとそんな話題を話していた。別に俺は手伝ってるだけで、あとは自分等で出来てると思うんだけどな。


「でもそっかー、もう一年も経つんだよなー」


「そうねぇ……始めの初々しかったアサキ君が懐かしいわ……」


「え、そっち?」


 そういえばウミは、俺と初めて会う前からアサキを知っていたんだよな。逆に俺はウミに会う前からカイト君を知っていた訳だが。不思議な縁だよな。


「うふふっ。でも、マヒルに最初苗字を聞いた時、珍しくても絶対アサキ君のお兄ちゃんじゃないと思ってたわよ?」


「まぁな、俺とアサキは似てねぇから」


 探せば兄弟だから結構似てるところもあるけれど、見た目とか性格とか、全然似てないもんな。其処にユウヤも入れたら余計って感じ。


「そうだなぁ、確かに俺も双子な弟見た時は似てねぇと思ったけど、今はそうでもねぇな」


「あら、例えば?」


「色々ズバ抜けてるところとか」


 嗚呼、それは断トツでユウヤがずば抜けている。そりゃもう色々断トツに。


「んなこと言ったらウミもセツも兄弟似てねぇだろうが」


 ウミの場合姉弟だが補足は要らないだろう。


「何よ! カイちゃんと私は激似よ! 可愛いじゃないカイちゃん! 私に似て!!」


「待てウミ、お前自分が可愛いと思ってんのか……!?」


「あらぁセツ、私の何処がブスだっていうのか・し・ら?」


「いたたたたた!!!! ウミ此処公共の場だから! 痛いです!! はい女王様!! 女王様は可愛いです!!!!」


 公共の場で何やらかしてるんだこいつ等は。何をして、されているのかはあえて言わないでおくことにする。


「――って、セツ貴方兄弟居たの?」


「あれ、言ってないっけ」


「初耳よ。貴方みたいなタイプは大抵一人っ子なパターンが高いのに珍しいわ」


「上に一人居るんだよ。……ほら、お前の弟とマヒルの弟'sが通ってるところの二組の先生」


「……あら、そうなの? 私サクライ先生しか把握してないわよ」


 ちなみに俺もでした。この前少しお会いして見たが、セツの比でなく優しい人だった。弟'sは此のことを知ってるのか? ……つかアサキとユウヤの略され方が新しい。


「まぁ兄貴の話はどうでも良いだろ? 今は涼むのだよ」


「それもそーね、あ、ケーキが来たわ」


 其処で頼んだケーキが来て、話題はかなり戻って懐かしむ話題に。


「ていうか私達、何で知り合ったんだったかしら」


「俺が覚えてる訳がない」


「んー、確か食堂と駐車場、それだけは覚えてるわ」


 ――食堂で俺が一人のんびりと飯を食っていた時に、たまたま隣に座ってたセツが金欠で瀕死だったところを俺が助け、話している間に大学の食堂だというのにも関わらずウミが殴り飛ばした男子生徒が俺達の場所に飛んで来て――という物凄い鮮明に覚えている記憶は、彼等の為を思って黙っていることにしよう。この後が酷いから。


「マヒル覚えてるー?」


「いや全く」


「あらそう……。……ってよく考えればマヒル、貴方って私達と居る時口数少なくないかしら」


「あ、それ俺も思った」


 そんなことない、と言おうと思ったのだが、よく考えれば否定が出来ない。確かに内心で色々考えたりするものの、特に口に出すことは少ないかもしれないからだ。


「もしかしてマヒル、私達と居ても楽しくない……?」


「な、何だって!? そんなことないよな! な!?」


 血迷った質問だなー。嫌いだったら一緒に居ないだろうが。

 しかし其れだって言わない、笑顔で笑えば其れだけで。確かに俺は、口数少ない方だけど。自宅ではそんなつもりないけど、外だとあまり喋らない方だ。


「んー、マヒル、本当に一緒に居ることが負担だったりする?」


「……」


「返答がない、うわぁどうしよう俺に悪いところが……」


「そうよセツ、悪いところを直しなさい」


「俺だけかよ」


 あたふた、とまではいかないが慌て出した二人。今までポーカーフェイスを気取っていたが、つい――本当につい、俺は吹き出した。


「ふっ、あはははっ!! バッカじゃねぇのお前等」


「「……」」


「別に、嫌いとか負担とかねぇよ。ただ、お前達のやり取りを見てるのが面白いだけ」


 其れが正直な気持ちだ。元々喋る方じゃねぇんだから、聞いてる方が面白いことだってある。


「本当?」


「本当」


「でもマヒル、あまり笑わないんですもの」


 内心で笑うタイプなんだよ、気にすんな。


「話さないでいられる方が楽だしな、喋んなきゃいけない時はしっかり喋ってるだろ? だから無い頭で深く考えんなよ」


「「はい」」


 主に無い頭ら辺のことについて頷いた様に感じるが、まぁ良いか。






「そろそろ帰ろうぜ」


 数分しても俺達のやり取りは同じだけど、それを言い出したのは勿論俺。こいつ等は止まったりしないから。


「じゃあ会計俺持ちー」


「あらセツ、珍しいわね?」


「今日は金があんだよ」


 年中金欠――というか財布すら持ち歩いていない――なセツだもんな。笑顔でレシートを取る姿も珍しい。



「じゃ、またな」


「ばいばーい」


 セツの家は近いから歩きで帰るらしく、ひらりと振られた手にウミが返事をした。


「マヒルー?」


「嗚呼、おう、じゃなー」


 いちいち挨拶を求めんな怠ぃ。

 でも、そんなことにいちいち面倒なダチも、悪くはないと思った。



 っていうか俺達、昼飯食いに来たのに食ってないな。




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