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106+有言実行、無実行?


「先生、やはり二十八℃設定を守るべきです」


「いやぁ、無理だろう、俺は十八℃を貫く」


 夏休み前ということで、授業をやる気がないサクライ先生と授業中にクーラーの温度設定についての討論を繰り広げていたら。




「アサキ聞けやコノヤロウ!!!!」




 と、我が兄が教室に侵入してきた。もう一度言おう、――授業中だ。

 バターンッ! と盛大に扉を開けてくれたものだから、クラス中がそちらを着目してしまった。ついでに言えば寝ていたカイトとユキまで起きてしまった。


「アサキー!!」


「分かった、そんなに望むなら苦しまずに殺ってやろう……」


「ごめんなさい! 別に騒ぎに来た訳じゃないんでゆらりと立ち上がらないで下さい!!」


 この展開に慣れっこになってしまったのか、其方を見たクラスの連中は無反応である。畜生。


「おいユウヤ、テメェは俺の授業を妨害するのが趣味なのか……?」


「ふお!? アサ君を回避したらば先生が敵に!!」



 対して授業をしていなかった癖に――口が裂けても言えない。



「そうじゃなくって! 此れ此れ! 此れ見なさい!!」


 慌てた様子、というか自慢気な様子で一枚の紙をたたき付けて来た。……何其れ、え? ……英語のテスト――はぁ?


 僕はパシン、とそれを奪い取ってみる。


「どうだちきしょー!! 俺だってやれば――」


「お前、カンニングしただろ、そうでもしなきゃ――お前が七十四点なんて有り得ない」


 そうだった。ユウヤが持って来たのは数日前の英語のテスト用紙、しかも今まで見たこともない――平均点十以上も上を行くテスト用紙、だった。


「か、カンニングだなんて進学な!!」


「心外な」


 ありきたりなボケをかますな。……いや、ありきたりでもないだろ。


「ちゃんと実力だよ! テスト始める前にあやちゃんに言ってカンニングじゃないことを証明してるんだから!!」


「だったら何で――」


「俺様のお蔭様だぜ!!」


 背後を見れば、何様俺様カイト様が居た。己を親指で指差す姿は――何とも憎たらしい。


「此の俺様が、ユウヤの前日に英語を全部叩き込ませたんだよ」


 何してくれてんだよ。


「俺の此の点見たらあーや先生びっくりして笑顔になってたよ~」


「あいつは何時でも笑顔だろ」


 サクライ先生のツッコミも入ったところで、一旦冷静になろう。

 え、ユウヤが高得点を取った?


「――先ず、母さんに報告だな」


「だね。――じゃなくて! アサ君言ったよね!? 約束は守って貰うから!」


「お前さ、弟との賭けの為だけにそんな勉強出来るなら始めからやれよ」


「無理だよ、無理。何か……ほら、本気にならないと」


 なれと言いたい。



「と・に・か・く! この点数分かったね!! よーし、お祭りやっほーい!!」


「ちょ、おい!!」


 ユウヤは其れだけで教室を後にした。残るのは僕の掻き消えた制止と、クラスの話し声。


「今回は、アサキの負けなんじゃないかい?」


 其れに続く、ユキの声。

 ユキを見れば、思った通り笑っていた訳で。


「約束は約束さ。たまには、付き合ってあげることも大事なのではないかな?」


 諭す言い方で僕にそう言うユキは、何処か大人っぽく見えた。……いや、大人らし過ぎるが。


 分かってるけど、嫌なものは嫌なのさ。――だけど――まぁ、致し方ない、か。


「――分かってるよ、そんなこと」


 本当にまぁ、仕方ないよ、そんなの。

 っていうか、ユキに話したっけ、此の話。




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