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1+朝と夜。


 こんにちは、初めまして。

 ええと僕はヒコクアサキという者で、中学二年生の人間です。……まぁ其れだけ。


「アサ君アサ君アサくーん!!!!」


 よく人からクールに見えると言われますが、あれは絶対無気力又は根暗の同義語なんだと思って疑わないません。


「アサ君てばー!!!!」


 だって仕方ないよ、自分は凄く苦労人だと惜しむ事なく言い張れる自信があるから。

 ……だから、まぁ、とりあえず――


「うるせぇ!!」


 ――先程から前に居る五月蝿い我が兄をどかそう。

 さっきまで電話してたじゃないか此の人。……いや、兄と言っても双子なので年とか変わらないけれど。名前はユウヤ、まぁ気軽にクソ野郎とでも呼んであげてクダサイ。


「んで、何」


「俺のお話聞きなさい」


 そう言ってよく分からないが差し出す手に僕はとりあえず飴をひとつ置いておいた。


「それあげるからちょっと黙って」


「俺は餓鬼か何かですかいアサ君や」


 我が兄ながら彼は餓鬼だと思う。だって違うクラスの癖に毎休み時間弟に会いに来るってどういう事?

 しかも滅茶苦茶、飛び抜けて、かなり、完璧に五月蝿くて、僕と少しも合わない部類の人間だから、出来ればもうちょっと大人しくして欲しいと言うのが本音だったり。

 巷じゃブラコン兄貴とは有名な話だ。……今は家だけどさ。


「ていうか君は何故今お菓子を持っていたの」


「ユウヤ対策ザ・ベスト」


「意味分からないよ」


 ご尤も。僕もよく分かってない。

 という訳で僕は結局ユウヤの話を聞く羽目になる、其れが何時もの日常だ。


「今日さ、俺は凄く怖い夢を見たんだ」


「さよならそのまましねばいいのに」


「何いきなりお兄ちゃんの人生終わらしてるのアサ君。ちゃんと聞いてよ」


 相変わらず五月蝿い兄だ。いや、双子だけど。


「聞いてやる、どんな夢だ」


「何とですね、聞いて驚き(おのの)くなよアサ君。何と……何とあのアサ君が笑顔で俺に駆け寄ってく――」


「――しねば?」


「ああん! やっぱり夢は夢で終わるのね!!」


 何か此の兄貴は素でしねばいいとか思う今日此の頃の僕。理由は二十三個くらいあるけどもう一概にまとめりゃ“五月蝿いから”の一言に尽きる。二十三は何処から弾き出した数字なのかは自分でも分からないから聞かないで。


「たまにはいーじゃん、お兄ちゃんって呼んでくれたって!」


「気持ち悪いし。ユウヤが兄貴とか、学校じゃ知られてないからね」


「嘘ぉ」


 其処は素でびっくりしたらしいお兄ちゃん、ふっ、言葉には絶対してやんね。

 学校でよく、「アサキ君がお兄さんだよね?」と聞かれる事早複数回。


「俺ってばこんなにあー君の事思ってるのに……」


 とりあえず部屋に戻ろう、ビバ・逃走。

 しかし着いてくるのは目に見えているのでもう気にしたら終わりだよねこういうのって。


「んであー君」


「何クソ野郎」


「もう気にしないよ此の際」


「で?」


「――母さんがアサキに代わってって下の受話器で待ってる」


 ――此の人大事な用件は先に言わないんだよね。

 僕はユウヤを足蹴にしつつ、上ってきた階段をダッシュで駆け降りた。


 ……そして母さんにやんわり怒られたのは、なかなか出なかった僕でしたと。


 絶ッ対理不尽!



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