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第八十八話 手柄の横取りはもめごとの元

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 見事な連続攻撃で動きの鈍った棘島亀ソーンアイランド・タートルを斬りつけていく静流さんであったが、棘島亀ソーンアイランド・タートルの方も力を振り絞って熱線を放つ。だが、ひらりとかわした静流さんによって片目を一つ斬り伏せられてしまっていた。


 ウボォオオオオオオ!!


 痛みを感じた棘島亀ソーンアイランド・タートルは頭を振り回して暴れ回る。


「もらったっ!」


 暴れている隙に白いオーラのようなものをまとった天木料理長が棘島亀ソーンアイランド・タートルの首の付け根に向って思いっきり急降下して斬撃を放つと、剣先から迸った衝撃波が皮膚を深く切り裂さいていき、大量の体液を噴出させていった。


「おおぉ! すげえ……。オレもああいった剣技を身に付けたいんだよな」

「柊っ! ボサッとするなっ! お前も攻撃を続けろっ! ただし、範囲スキルは無しだぞっ!」


 天木料理長は先程のことを根に持っているようで、攻撃の指示をしつつも範囲スキルの使用許可は出なかった。しょうがないので、単体を狙えるスキルを探すとちょうどいいことに『水晶化ブレス』のスキルが単体攻撃スキルとしてあったため、水晶化して足止めすることにした。


 動きを遅くした棘島亀ソーンアイランド・タートルの顎の下に入り込むと、呼気を最大限吸い込み『水晶化ブレス』のスキルを発動させていく。オレの口元から呼気とともにキラキラとした結晶が放たれると、棘島亀ソーンアイランド・タートルの首元が徐々に水晶化して固まっていく。それとともに首の動きを制限された棘島亀ソーンアイランド・タートルは回避行動ができなくなっていき、静流さんや天木料理長の攻撃を喰らってドバドバと体液を噴出させては悲痛な鳴き声を上げて身体をのたうち回らせる。


「柊翔魔っ! お、お前は本当に派遣勇者か!?」

「ですよ。ただちょっと、特殊な戦い方をしているだけですって!」


 静流さんが水晶化ブレスを放ったオレを若干怯えた眼で見ている。今までに害獣からスキルコピーして使った人なんて皆無なんだろうけど、そんなに変なスキルだったかな。割と優秀なスキルだと思うんだけど。


 尚も水晶化ブレスを再発動させて棘島亀ソーンアイランド・タートルをドンドンと水晶化させていく。膨大な体液と身体の一部を水晶化された棘島亀ソーンアイランド・タートルはビーチへの歩みを止めた。


「二人とも、棘島亀ソーンアイランド・タートルが動きを止めたぞ。回復させる時間を与えるなっ! ありったけの力でコイツをねじ伏せるぞ」


 ふたたび白いオーラを纏った天木料理長が先程よりも巨大な衝撃波を剣先から飛ばして首の付け根を切り裂く。放たれた衝撃波は棘島亀ソーンアイランド・タートルの首筋を切り裂き首の皮一枚だけ残して半ば切断状態になった。


「志朗っ! お前も抜け駆けは許さんぞっ! こいつはあたしの獲物だと言ったはずだっ!」


 気合を入れ直した静流さんが一気に棘島亀ソーンアイランド・タートルの頭部に近づくと、身体がブレて見えるほどの速さで斬撃を次々に繰り出していく。そして、攻撃を終えると頭部から棘島亀ソーンアイランド・タートルの体液が大噴出して肉が切り落とされて骨がむき出しとなっていった。


「ちぃ、これでも死なないのか。こいつは桁違いの生命力ね」


 シュウシュウと黒い靄の煙を上げながら、切断されかかった首や斬り落とされた頭部の肉が復元を始めると、二人に焦りの色が見えてきた。このままではじり貧になると思い、オレは水晶化させた首元を切り落とすことに決めた。


 さすがに生物である以上、頭と胴体が切り離されてしまえば活動停止するよな。それでも復活するとかだと、ほんとにマジで活動停止するまで見守るしかできなくなっちまうぜ。


 驚異の回復力を見せる棘島亀ソーンアイランド・タートルにトドメを刺すべく、近くに転移すると腰だめに構えた剣を水晶化した首元にフルスイングで叩き込んだ。固い手ごたえが剣を通して伝わってきたが、その感触に逆らわず力を籠めるよりも素早く振り抜くことを意識して剣を動かしていく。


 ズバン!


 確かな手ごたえと共にフルスイングで振り抜いた剣が棘島亀ソーンアイランド・タートルの首元を綺麗に断ち切っていた。ズズズと音を立ててずれた首元がバランスを崩すと頭部ごと海中へと落ちていった。頭部を失ったことで甲羅もひび割れとともに崩壊が始まっており、次々に海中に没して水柱を上げ始めていた。


「おおっ! やったか。今の感触……バッチリ仕留めた感満載だったな」


 首を断ち切った感触を確かめるように剣を持つ手をみていたオレの背中を静流さんが足蹴にしてくる。


「な、なんで、お前がトドメを刺すんだっ! あたしの獲物を横取りするなんて! 百年早い! 返せ」


 なんだか、文句を言っているが足蹴にされるのは気分が悪いので、飛空魔術をキャンセルさせてもらった。


「はわわぁ!?」


 急に飛空魔術の支えを失った静流さんを両手でお姫様だっこして抱きかかえる。この態勢でなら文句を言われても余り腹が立たないのだ。


「オレも先輩とはいえ足蹴にされると、割とカチンとくるんで、この格好でよければ文句はお受けしますよ静流主任」

「おや、いいのか? エスカイアと涼香に怒られるぞ」


 刀を鞘に納めながら戻ってきた天木料理長がオレと静流さんの恰好をみてからかってくる。


「ば、バカ者っ! これは柊翔魔が勝手にやったことだっ! あたしのせいじゃないぞっ!」

 

 お姫様抱っこで抱えられた静流さんが先程まで見せていた攻撃性を潜めて、腕の中でワタワタしているのを見ると、ちょっとだけ可愛いかもと思ってしまった。(株)総合勇者派遣サービス一番の暴れん坊である静流さんもこうなってしまえば、小動物みたいな可愛さを感じられる。


「足蹴にはされたくないんで、抱えさせてもらってます。どうやら、オレがトドメを刺したのが気に入らないようで話し合いをしようと思いましてね」

「そうか。SSランクは初めてだったからな。討伐査定はどうなることか……。それに凄いでかいサイズの魔結晶もあるみたいだしな。今回は三チーム均等割りにしてくれよ。うちも稼がないと嫁がうるさいんでな」

「お金に関しては社長決裁に任せればいいですよ」

「そうだな。それにしても水際で撃退できて良かったな。こんなのが街に侵入したらどれだけの被害が出たかわからんぞ。SSランクとSSSランクがいてなんとか討伐できるくらいだからな……。こんなのが何十匹も出てきたらどうしようもないな」

「そうですね。それと、コイツも例の『改二』表示が出たんで、詳しく調べてもらいます。もしかすると、また人為的に作られた可能性もあるので……」

「マジか!? それはきな臭いな……。ところで話は変わるが、柊はわざと静流の胸を触っているのか?」


 天木料理長の指摘でオレは自分の手がどこにあるかを確認した。確認した左手が見事に静流さんの胸を触っていたのだ。抱きかかえられた静流さんが顔を真っ赤にしてフルフルと震えていた。


「わっ!? これはわざとじゃなくて――」


 バシンっ!


 オレの左ほおに鈍い痛みが走った。


「お前は! 一度ならず二度までもあたしの胸を許可なく触りおって! 絶対に叩き斬ってくれるわっ!」


 オレの抱かれたままの静流さんは怒りを宿した眼でこちらを睨みつけていた。その視線に命の危険を感じたオレは咄嗟に転移して静流さんから脱兎の如く逃げ出していた。


一度ならず二度までも触るとはけしからん奴め・・・絶対にゆるさないんだからね (西園寺静流)

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