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第八十七話 禁じ手使ったら怒られた

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 棘島亀ソーンアイランド・タートルの甲羅の上で暴れはじめると、小型の亀が甲羅の隙間から這い出してきてこちらに向かってきていた。小型と言っても棘島亀ソーンアイランド・タートルに比べての話で、普通のゾウガメ程度の大きさのある亀の割には素早く動き回っている。


「柊っ! このちっこい亀をどうにかしやがれ! 俺は甲羅の付け根に移動する」


 天木料理長は剣を振り抜くことで起こした衝撃波で近寄る亀や構造物を破壊していたが、埒が明かないと思ったのか、棘島亀ソーンアイランド・タートルの本体を攻撃する手段を選んだようだ。


「了解っ! フルパワーでやるんで天木料理長も気を付けてくださいよ」

「お前に心配されるほどの耄碌はしてねえよ。静流も言ってたがパワーだけのお前の攻撃は読み易いからな。危ないと思えばいつでも退避できる」

「そんなものなのですかね」

「そうさ。なんというか。柊は『攻撃するぞ』的なものが漏れ出してるんだよ。その辺は経験を重ねないとスキルじゃどうにもならねえかもな。お前は自分で創り出せるから、今度そういったスキル合成探してみればどうだ」


 天木料理長はこちらを見ずに迫る敵を蹴散らしながら、オレの弱点を指摘してくれていた。スキル合成か……。この害獣を倒せたら戦闘系のスキルを探してみるか。


「この棘島亀ソーンアイランド・タートルを倒したら探してみることにしますよ」

「地道な修練もちゃんとしろよ」


 天木料理長はそれだけ言い残すと甲羅の付け根に向って走り出していった。一人残ったオレは迫ってくる亀たちと対峙することになった。神の眼が新たに現れた害獣のステータスを表示する。


――――


 石亀(ストーン・タートル)


 魔物LV22


 害獣系統:動物系


 HP:1450

 

 MP:940


 攻撃:330


 防御:1540


 素早さ:884


 魔力:245


 魔防:1320


 スキル:自爆 噛み付き


 弱点:氷属性


 無効化:火属性


――――

 

 レベル的には雑魚の領域だった。剣を手に取ると近寄ってきている石亀(ストーン・タートル)を一気に斬り伏せていく。一体一体は大した強さではなかったが、数が半端なく多かった。数千に近い石亀(ストーン・タートル)に取り囲まれた所で一匹が自爆すると、周りが連鎖して自爆し爆風がオレの身体を打ちのめしていった。咄嗟に張った障壁で多数のダメージはカットできたものの、手痛いダメージを負った。すぐに回復魔術で痛みを癒すが、また石亀(ストーン・タートル)が多数こちらに向かってくるのが見えた。


 これじゃあ、埒が明かねえ……。雑魚をいくら狩っても、棘島亀ソーンアイランド・タートル自体が弱らないと活動停止に追い込めないんじゃないか。


 次々と湧き出てくる石亀(ストーン・タートル)の群れを見て持久戦に持ち込まれると、こちらが先に根を上げてしまいかねないほどの物量で押し込まれる。ことがここまで至っては自制していたスキルの発動も解除せざるを得ないと判断するに至った。そのスキルは雑魚と棘と突起物を一気に破壊し尽すのにとっておきのスキルであるのだが、一度も使ったことが無く、威力の想定がまったくできないものである。


 多分、地面が消え去るほどの高威力とかじゃないと思うけどなぁ……。このままだと、海上での迎撃に失敗して街に上陸されてしまう可能性もあるし。今、使うしかないでしょ。


 禁じ手にしていたスキルである『終末の雷霆』を発動させるため、一旦上空に上がり甲羅全体が視認できるよう位置取りをする。そして、スキル欄から『終末の雷霆』を選択するとおもむろに発動させていった。体力の表示を示す赤いバーが一気にゼロに近い位置まで減ると、快晴だった空が黒い雲に急速に覆われていき、ゴロゴロと雷を孕んだ雷雲に成長していく。


 オレの視認した範囲にいた害獣及び、棘島亀ソーンアイランド・タートルの構造物が一斉にロックオンされていくと、腹に響く雷鳴が次々に鳴り響いて雷が対象物を連続して落ちていき、害獣を黒焦げにしたり、周囲丸ごとを感電させたり、構造物を破壊して暴れ回っていった。おかげで棘島亀ソーンアイランド・タートルの甲羅の上は稲光と爆炎が連続して上がり、大規模な火災まで発生して黒煙をたなびかせ地獄の様相を呈していた。


「馬鹿野郎!!! お前は俺を殺す気かっ!」


 甲羅の付け根付近で戦っていた天木料理長が『終末の雷霆』によって引き起こされた爆炎にあおられてぶっ飛ばされて俺の近くにまで来ていた。


「だって、全力でいいって言ったじゃないですか!」

「攻撃範囲がデカすぎるわ!」


 オレが放った『終末の雷霆』は最後に使用者の体力を回復するといったチート仕様のスキルなので、実質ダメージゼロの状態でピンピンしているオレを恨みがましい眼で天木料理長が見ている。全力でいいっていったじゃんか。


 あとで食堂に出入り禁止にされるのも嫌だったので、すぐさまゴマすりの回復魔術を放ち、天木料理長を回復させていく。


「こういったデカブツを退治する時は連携が一番大事なんだよ。デカイ範囲スキル使う場合は事前に声かけしろ! 今回はまったく不意を突かれたぞ」


 天木料理長は爆風で少し焦げた制服をはたき煤を払い落としている。


「す、すみません。以後、気を付けます」

「だな。まったく。お前と組むと命が幾つあっても足りない気がするぜ。だが、今のので棘島亀ソーンアイランド・タートルの方もかなりのダメージを負っているみたいだ。この機会を逃さずに静流とも連携して一気に沈めるぞ!」


 オレの攻撃を受けた棘島亀ソーンアイランド・タートルの動きが一気に鈍重になり、弾幕や棘を飛ばしていた甲羅からは大きな火災と黒煙が上がり、迎撃用の弾幕は撃ち上げられなくなり、静流さんが戦っている頭からも熱線が放出される回数が極端に低下していた。オレ達は頭部を集中して攻撃するために静流さんが戦闘している場所へ飛んでいった。


「柊翔魔っ! あたしの間合いに入ってくるなっ! あんたが来ると危なくてしょうがない」


 静流さんもさっきの『終末の雷霆』の惨事を見ていたようで、犬を追い払うように手を振っていた。そんなに邪険に扱わなくてもいいじゃないですか。ちょっと、予想より威力と範囲が高かっただけなんですよ。それにキチンと敵味方の識別しましたし。そこまで毛嫌いしなくてもいいんじゃないかと思うんですが。


 オレを追い払う仕草をやめた静流さんは構え直した薙刀で動きの鈍った棘島亀ソーンアイランド・タートルの首筋を狙い、次々に連撃を叩き込んで出血を強いていく。最古参の派遣勇者である静流さんの害獣との戦闘経験は一番長いものと思われた。


「すげえ……ただの変人じゃなかったんですね」


 オレは見事な攻撃を見せる静流さんの姿に目を奪われていた。


あいつはなんていう凶悪なスキルをもっている奴だ。あんなの持っているのが分かったら、簡単に喧嘩を吹っ掛けられないじゃないか。 (西園寺静流)

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