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第八十六話 経験の差って中々埋められない

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「余計なことを。これで前の件を水に流したと思うなよ」

「あの件は事故ですって。それにそんな下心はありませんよ。オレ達の目下の目標は棘島亀ソーンアイランド・タートルを協力して討伐することですよ」


 もろ肌脱ぎの着物を着て薙刀を棘島亀ソーンアイランド・タートルに向けて構えた静流さんが顔だけこちらに向けて睨みつけてくる。入社式でのことを未だに根に持っているらしく、視線がとても厳しい。あれはワザとじゃなかったというか、むしろオレが被害者のような気がしたのは気のせいだろうか。


「フン。そんなことは分かっている。適性だけのハリボテ勇者にはできない戦いを見せてあげるわ」


 静流さんはオレを一瞥すると、直ぐに棘島亀ソーンアイランド・タートルの頭部に向けて降下していった。


「柊も攻撃に加われよ。三人でも狩れるか怪しいからな。最悪、聖哉や大鳳のおっさんも参加させる。それに赤沢親分や他のチームももう少ししたら駆け付けるはずだ。(株)総合勇者派遣サービスの全戦力を投入してコイツを狩ることは社長決定だからな」


 天木料理長にもバフ系の魔術で能力を上乗せしておくが、いつもの調理服ではなく、戦闘用の鎧を着込んで腰に二刀を下げた姿は歴戦の派遣勇者としての趣を漂わせていた。


「分かってます。あの甲羅はオレの全力攻撃でもヒビを入れるのが精いっぱいでしたから気を付けてください。それに棘が追ってくるし、熱線も飛んでくる。天木料理長は魔術使えないから棘に押し包まれないように戦ってくださいよ」

「小僧。俺を舐めるなよ」


 天木料理長は不敵な笑みを浮かべると、先行した静流さんのあとを追っていった。二人を見送ったオレも再度青い刀身の剣を担ぐと棘島亀ソーンアイランド・タートルに向かう。


 ウォオオオオオオンン。


 オレによって甲羅を割られた棘島亀ソーンアイランド・タートルは怒り狂ったように熱線を撃ち放っていたが、先程まではなかった黒い靄が身体を包み始めており、周囲の海水がその靄に触れて蒸発し水蒸気が盛大に上がって姿の視認が難しくなり始めていた。そして、爆発的に黒い靄が膨れ上がると甲羅の破片が砕け散り、先程よりも大きな甲羅と身体に成長した棘島亀ソーンアイランド・タートルが姿を現した。


「な、なんだこれ……」

「あいつは何なの、さっきと姿が違う」

「デカくなったな。この亀でスープ作ったら何人前できるだろうか」


 棘島亀ソーンアイランド・タートルが、ヒビの入った甲羅を破り新たに大きな甲羅を作り出した上に、自らの身体も大きく成長させていた。先ほどの状態ではなかった甲羅に筒状の突起物が多数生えてきている。新たにディスプレイに表示された害獣のステータス値を見て驚いた。


――――


 棘島亀ソーンアイランド・タートル改二


 魔物LV90


 害獣系統:動物系


 HP:94450

 

 MP:49340


 攻撃:13390


 防御:19360


 素早さ:8040


 魔力:14800


 魔防:13400


 スキル:熱線 攻撃阻害 棘矢 硬質化 弾幕射撃 HP自動回復


 弱点:氷属性


 無効化:火属性


――――


 例の『改二』表示だ。まさかとは思うが、この『SSランク』害獣も誰かの手が加えられて作り出された害獣ではないだろうか。それにしても、最高クラスの派遣勇者三人揃えても討伐できるかがいよいよ怪しくなってきていた。


「静流さん、天木料理長、こいつパワーアップしましたよ。不用意に近づかない方が……」

「強いだろうが、害獣を処理するのが派遣勇者の仕事だろ。それを放棄するのであれば、派遣勇者は名乗らない方がいいな。ビビったんなら、そこで見ておけばいい」


 天木料理長は、害獣のステータスを見てたじろいだオレを一瞥するとスキルを発動させて、巨大化した棘島亀ソーンアイランド・タートルに飛び込んでいった。


 棘島亀ソーンアイランド・タートルは天木料理長の接近を察知すると、甲羅に生やした筒状の突起物から黒い雷を放ち始める。すると、筒の先に大きな黒い光球が発生して次々に上空へ撃ちあがっていった。それと同時に先程、オレに向って放たれた棘のミサイルを同時発射されていたようで、濃密な弾幕が甲羅から撃ち上がってきていた。


 その弾幕の中に突っ込んだ天木料理長は、驚いたことに黒い光球を紙一重で弾道を見切りかわすと、近づいてきた多数の棘を一刀のもとに斬り捨てていく。その攻撃はまるで魔術を見ているようにスムーズに行われていき、天木料理長に近づいてきた棘は全て斬り捨てられていった。


 すげえ、これが歴戦の派遣勇者の力か……。戦いは適性値だけが全てじゃないんだな……。経験の蓄積による勘やタイミングなどはスキルでは埋められない技術的な部分によってもかなりの違いを見せるんだ。やはり、オレに足りないのは圧倒的に戦闘の経験だろうな。いくら強力な魔術や攻撃を持っていても当てられなければ威力を発揮できないし、そのスキルや魔術が持つ特性を理解していないと最大限のダメージを害獣に与えることはできないんだろう。静流さんが言った『ハリボテ勇者』はあながち間違っていないのかもしれない。


「柊っ! ボサッと見てるんじゃねえぞ! 俺もギリギリでやってるんだから援護しやがれ! 静流は勝手にやる! お前はオレの援護だ」


 棘や光球を迎撃していた天木料理長から怒声が飛ぶ。甲羅の方はかなり濃密な弾幕が展開されており、中々、甲羅本体まで到達できないため、オレに援護を求めてきた。一方、頭部の方に回った静流さんは顔に笑顔を貼り付けながら、ギリギリの戦闘を楽しんでいる様子だ。オレ以外に全魔術を使える人物なので自らの身体を癒しながら戦いを続けられるため、援護の必要性は今の所は見られないでいた。そのため、オレは天木料理長を援護するべく、弾幕を撃ち上げる甲羅に向かいって豪雹嵐ギガンティック・へールストームを放つ。


 範囲と威力を極大化した豪雹嵐ギガンティック・へールストームは、バレーボールクラスの大きさの雹が混じった暴風を巻き起こして、甲羅の上に飛び出ている筒状の突起物や棘を次々にへし折っていた。豪雹嵐ギガンティック・へールストームが威力を発揮して弾幕の密度が薄くなると、その間を縫って天木料理長が甲羅の本体へ到達した。続けてオレも弾幕の隙間を縫って天木料理長の背後に降り立つ。


「やればできるじゃねえか。魔術の方はほぼ合格点だろうな。そっちは素質が物を言うからな。けど、こっちは経験を積まねえと上手く使えねえぞ」


 天木料理長が手にした刀を構えると、林立する棘や筒状の突起物を斬り飛ばしていく。


「ですね。オレも経験を積ませてもらいます」


 オレは手にした剣を構えると天木料理長を援護するように甲羅に生えている棘や突起物を剣を使って薙ぎ払ってついて行った。

柊の奴はあんなバランスの悪い剣を振りまわしてやがるのか。さすが無駄に適性値だけは高いな。俺だったら振り回せねえぞ。あんな剣で正確に斬れる刃筋を立てられるようになったら、俺もお役御免だな (天木志朗)

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