第五十四話 いざ捜索と思ったら緊急事態発生した
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ううぅ、頭が割れそうだ。飲み過ぎたぜ。オレは朝からガンガンと痛む頭を抱えていた。昨日は結局、未成年の聖哉以外は社員寮には戻らず、孤児院でグエイグ達としこたま酒を飲んで泊まってしまったのだ。
孤児院では眠った子供達の迷惑になるからと、オフィスの方に移動して飲んでいたが、空になった酒瓶とつまみを入れていた食器が散乱し、涼香さんが何故かパンツ丸出しで床に転がっているかと思えば、クラウディアさんも床に丸くなって眠っており、エスカイアさんは胸元をはだけて寝ていた。
「やっと起きたのか。翔魔は酒が弱いのぅ。妾も久しぶりに飲んだがまだ全然余裕じゃな」
唯一、酒に飲まれなかったトルーデさんが、残っている日本酒の瓶を直に飲み干していた。明らかにザルを越えている酒量を飲んでいるのだが、顔色一つ変わっていなかった。隣では俺達よりも長く付き合わされたグエイグが机に突っ伏している。懇親会の時も飲むなぁとは思ったけど、ドワーフより酒豪とかって色々とヤバすぎる。
このままでは、今日から始める銀水晶龍の捜索を始められないので、解毒効果の含まれるエリアオールリカバーを発動させておいた。淡い緑色の光にメンバー達が包み込まれるとともに、オレの頭痛も治まっていく。こういった魔術が使えるエルクラストでは二日酔いにならないのが、とても魅力的だった。
「う、う~ん。おはよう……はっ、なんでスカート履いてないの!?」
「あらあら~。私も寝過ごしちゃいましたね。子供達を起こしてこないと」
「ふぇ!? 何で前がはだけているのかしら?」
床で寝転がっていた三人が魔術の影響で目を冷ましたらしい。三人とも慌てている様子でチラチラとオレの方を見ているが、誓ってやましいことはしていないと思う。多分、きっと。
「しておらぬわ! しておったら妾がぶん殴っておるのじゃ」
トルーデさんから思考を読んだツッコミが入ると三人があからさまに残念そうな顔をしていた。
「おはようございます。ああ、ずっと飲んでいたんですね。僕も飲みたかったなぁ……」
三人が身支度を終えた所で、オフィスに聖哉が出勤してきた。社会人であるが、未成年でもあり、赤沢主任の大事な子息に飲酒をさせる訳にはいかないので、帰らせておいたのだ。何かしらの間違いが起きて、オレが赤沢主任に指を詰められるのだけは勘弁して欲しいのだ。
「成人したら飲ませてやるよ。エルクラストの成人は一五歳だけど、聖哉は日本国籍だからな。日本の法律が適用されるぞ」
「ちぇー、残念。でも、翔魔さんにご迷惑をかけるわけにはいかないですもんね。成人まで我慢します」
聖哉は少し残念そうな顔をしているが、成人したら親父さんの赤沢主任とオレと聖哉で飲むのもやぶさかではない。
そんな風に考えていると、グエイグも目を覚ましたようであった。
「なかなかに良い酒をたらふく飲ませてもらったなぁ……トルーデ陛下には勝てなかったが……」
「小僧っ子が妾に勝とうとは、あと八〇〇年ほど早いのじゃ」
「ですな。ワシももっと精進せねば……」
グエイグは酒の飲み比べでトルーデさんに負けたのが、結構ショックなようで、何か別の決意をしていた。オフィスに常備される酒は会社の経費で落とせるようだから、いくら買い込んでもいいとクロード社長から言われているが、この二人がいると飲み代だけで結構な額になると思われた。
「そんなことより、今日からは銀水晶龍を捜索するんであろう?」
「そうでしたね。今から魔物探知を領内に掛けますよ」
ディスプレイを展開して魔物探知を選ぶと探知範囲をヒイラギ領内に指定する。探知系魔術は範囲を拡げると魔力の消費が激しく増えるのだが、かなりLVが上がったことで発動させても枯渇する事は無くなっている。
魔物探知を発動させると、ディスプレイ下部にあったミニマップがヒイラギ領内の地図に切り替わり、赤い輝点が拡がっていく。うちの領内にも害獣保護区指定された魔境があるので、その場所に赤い輝点が固まっていた。
一か所だけ、害獣がかなり密集した場所があり、かなり街に近い箇所にある魔境だった。魔境から害獣が溢れ出す前兆かもしれないので、早めに討伐をしておく必要があると思われるが、まずは銀水晶龍の位置を捕捉しなければならない。そのため、新たにSランク指定した魔物選別を発動させる。
魔物探知によって探知した、いくつもの赤い輝点が一斉に消えていく。残ったのは、先程赤い輝点が固まっていた街にほど近い魔境にSランクの害獣が五体もまとまって表示されていた。それ以外の場所の赤い輝点は消えているので、グエイグさんが噂で聞いた銀水晶龍はこの場所にいる可能性が高い。
「マズいね。Sランク害獣が五体もまとまっているよ。っていうか、害獣災害レベルじゃねえのかこれって」
自分の領地内にSランク害獣が五体もたむろっている事態に少しだけ焦りを感じる。ただ、Sランク害獣とはいえ、今のオレであれば、そう苦戦する相手でもないので、恐れ慄くこともないが、領民達がこの事態を知れば、下手をするとパニックを誘発する可能性がある。
グエイグの件が無くても可及的速やかに駆除をしていく必要があるな。
「翔魔、この狭い地域にSランクが五体など異常事態じゃぞ!?」
「そうですわ。これはエルクラスト害獣駆除機構にも連絡を入れておかないと、そしてクロード社長にも連絡してサポートチームを急行させてもらうべきです」
気色ばむエスカイアさんとトルーデさんであったが、Sランク程度の害獣であれば、さほど苦戦することもなく、葬れそうな気がする。でも、万が一に備えて天木料理長のチームに街で阻止戦を張ってもらうのも必要かもしれないと思った。戦いの余波で街が吹き飛ぶのだけは勘弁して欲しいからなぁ。
「そうか。二人がそう言うなら救援要請と機構に連絡してくれるかい。救援隊が到着するまでに、みんなは討伐準備をしてくれ。オレは街に防護障壁を張ってくるからさ」
「「「了解」」」
指示を受けたメンバー達はオフィスから飛び出してそれぞれ準備を始めていった。オレも孤児院を出るとSランク害獣に蹂躙されないように防護障壁を発動させるために街に向った。
Sランク五体でも結構余裕だと思うんだけどなぁ。大事にすると、またオレのチームかって言われそうだけど……(柊翔魔)
Sランクが五体だと!? どうなってるんだ。こんな地方の領地にSランクが五体も生息していて災害が起きていないなんてあり得ないぞ。(グエイグ)







