第四十三話 レアスキルは美味しく頂きました。
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ドラガノ王国のクラウディアさんに任せた孤児院が軌道にのる頃には、入社して二ヶ月が過ぎ去っており、二度目のお給料日がやってきていた。ちなみにだが、クラウディアさんもうちのチームのメンバーとしてスカウトしており、主に孤児院の経営とドラガノ王国にもらった領地の運営役員として名を連ねてもらっている。彼女の人柄は領民となった人達からも受けが良く、オレ達が領地に常駐できないこともあり、彼女に連絡役を受けてもらう代わりに『(株)総合勇者派遣サービス』チーム『セプテム』の現地スタッフとして採用することにしたのだ。
現地スタッフ採用は、クロード社長からオレに一任されていたので、主任決裁でとりあえずFランク社員から始めてもらっているが、早々に社員ランクは上っていくことになるのは間違いないと思われる。その理由は彼女の持つスキル能力のおかげだからだ。
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クラウディア 年齢27歳 獣人(猫族) 女性 国籍:エルクラスト(ドラガノ王国)
社員ランク:F
勇者素質:B
LV5
HP:121
MP:153
攻撃:134
防御:123
素早さ:164
魔力:129
魔防:153
スキル:弓 ローブ 防護魔術 風属性 癒やす者+ 人望 栽培 加工 運営者
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社員証登録の際に【癒す者】、【人望】、【運営者】という三つのレアスキルを所持していることが判明したからである。本人申告では、『身分証登録』の際に【癒す者】は所持していたそうだが、色々な経験をしたおかげで【人望】、【運営者】を新規スキルとして取得していたらしい。
エルクラストでは、一般人の人は成人の儀式である『身分証登録』した後は、スキルの中身をあまり見ないのが通例らしい。なので、今回はクラウディアさんもレアスキルを取得していて驚いているようだ。とりあえず、レアなスキルらしかったので、オレもご相伴に預かり、美味しく(?)頂きました。いや、スキルをですよ。
コピーした【癒す者】は常時発動型のスキルで周囲の人の敵意を和らげる効果を持ち、【人望】は所属する組織の部下の信頼度が上昇しやすくするスキル、そして【運営者】は運営する施設に属する職員及び関係者の不満度を低下させるといった効果を持っており、彼女に領地や孤児院を任せておけば、とかくギスギスしがちな運営会議もほんわかとした彼女の雰囲気で和気あいあいとしたものに変わるのだった。
そのスキル能力をコピーさせてもらったが、スキル能力の根幹となる人格まではコピーできないので、彼女の域に到達するまでには、オレも更なる修練を重ねなければならなかった。
そんなことを思いながら、クロード社長から手渡された給料明細を孤児院に居たチームメンバー達に手渡していく。
「今月も残業多かったわねー。そういえば、今月分から私は社員ランク上っているんだったわね。お給料が楽しみだ――」
ニコニコとした顔で自分の給料明細を開けていた涼香さんが、中身を見て硬直していた。先月はバイト扱いのFランク社員であったが、残業やその他諸々の手当を含んで手取り一〇〇万は超えていたが、今回は社員ランクが上っているし、残業も多かったので、更に増えているはずだが。
「柊君!!」
「ひゃい! なんですかっ!」
急に涼香さんに大声で呼ばれてビックリして声が裏返ってしまった。
「あ、あのさ。特別報奨金って何? 二〇〇万くらい給料に上乗せされて凄いことになってるんですけど!?」
聞かれた意味が咄嗟に理解できなかったので、エスカイアさんに助けを求める視線を送った。オレの視線で意図を察してくれたエスカイアさんが説明を始めてくれた。
「あぁ、特別報奨金ですか。そちらは、この度、翔魔様が頂いた領地から運営予算を抜いた収入をチームメンバーで分けるとの書類に判子を頂きましたので、貢献度に応じて特別褒賞金という形で各メンバーに加算されています。涼香さんは予算見直しと税収構造の見直しでかなりの功績を挙げられていたので、多めの配分となっていますよ。あと、トルーデ様、クラウディアさんも多めに割り振ってます。わたくしや聖哉君、翔魔様はお手伝いがメインだったので、若干少なめに支給がされていますよ」
そういえば、少し前にエスカイアさんが、そんなような書類を持ってきたような記憶があるが、決裁資料に埋もれていたオレは中身も見ずに判子を押したような気もしていた。
「そ、それで手取りが三五〇万もあるのね……。これ、一カ月の給料よね? 私の前職の年収分以上あるんだけど……。この会社にいると金銭感覚がおかしくなりそうだわ……」
給料明細を見た涼香さんが頭を抱えていた。その様子を見ていた初めての給料組である聖哉、トルーデさん、クラウディアさん達も緊張の色を隠せないでいた。
「翔魔さん……僕もこの場で見ていいですか?」
涼香の給料額を聞いたことで、聖哉が恐る恐る給料明細を開けていいか聞いてきた。
「とりあえず、涼香さんよりは少ないはずだから安心して開けていいぞ。けど、ちびるなよ。それと、普通の会社じゃないからな。この会社は」
「……はい」
初めての給料明細を開けた聖哉がプルプルと震えている。
「本当にこの金額ですか?」
「ああ、月末には銀行に振り込まれるぞ」
「マジか……一二〇万が手取り……」
聖哉は初めての給料明細にショックを受けていた。バイト扱いの社員だが、手取り額がバイトの範囲を逸脱しているのである。それが、この『(株)総合勇者派遣サービス』における派遣勇者なのだ。
相変わらず、ここの給料は開ける度に心臓に悪いわね。来年の税金分が怖すぎるわ。せ、節税対策とかしないとダメかしら、投資用マンションでも買って……(青梅涼香)
一二〇万の手取りとか、どんな会社だよ。バイト扱いって聞いたけど、バイトでこの額だと主任の翔魔さんとか親父って、いったいいくらもらっているんだ。それにしても、悪人退治したり、害獣から弱い人を守ったりするカッコイイ仕事なうえに給料までいいとかって凄いモチベーション上がるわ。(赤沢聖哉)







