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第四話 初めての社員登録

誤字脱字がありましたらご指摘お願いします。


 翌日、オレは再び『(株)総合勇者派遣サービス』の本社前に来ていた。時刻はまだ七時を少し過ぎたくらいである。内定が貰えたのが嬉しすぎて、あの後、就職課の涼香さんのところに直行して内定取れたことを伝え、お祝いに飲みに行く話になって終電近くまで二人で飲んでしまっていた。そして、結局、家に帰って寝たのは二時を過ぎていた。


 けれど、約束の時間の前に会社の前でウロウロして時間を潰すハメに陥っていると、我ながら神経質な性分を恨めしく思う。


「あら、早いですね。おはようございます。柊君」


 昨日と同じく野暮ったい眼鏡をかけた美女事務員のエスカイアさんが自転車に乗ってこちらに向かってきている。


 試験で緊張していてよく見てなかったけど、改めてじっくり見るとカワイイというか、もの凄い美女だよね。アイドルって言われてもおかしくないし。


「おはようございます。エスカイアさん。すみません。緊張してあんまり寝られなくて早く来ちゃいました」

「ちょうど良かった。研修前に色々と採寸しておきたかったんですよ。制服の発注とかもありますし……社長はまだ出社してないようですから、先に採寸だけさせてもらっていいですか?」


 自転車を駐輪場に停めながら、自然な感じで話しかけてくる彼女に親しみを覚え始めていた。


 先輩だし、今後色々とお世話になると思うから、キチンと言うことを聞いて気に入ってもらわないと……待ってろ。オレのバラ色の新社会人ライフ。


「あっ、はい。よろしくお願いします」

「じゃあ、オフィスにどうぞ。鍵はわたくしが開けられますから」


 エスカイアさんの後に続いてオフィスに入ると、自分の事務机からメジャーを取り出した。


「はい、じゃあ。測りますよー」


 胸囲、腹囲、腕の長さ、股下、首の太さ等、色々と細かく計測されていったが、その度に彼女の身体が密着して、かなりいい匂いがオレの鼻孔をくすぐっていく。


「おほんっ! 私はお邪魔虫かな?」


 咳払いに気が付いて振り向くと、強面の社長であるクロードさんが立っていた。

 

 さーせん。めっちゃ調子に乗っていました。お願いですから殺さないでください。心を入れ替えてしっかりと仕事します。あひぃい。


 完全に怒っているようにしか見えないので、死への恐怖で膝の筋肉がガクガクと震えるのが止められなかった。


「いいねぇ。実に仕事熱心でいいねぇ。柊君みたいな子を私は待っていたのだよ。さぁ、採寸は終わったようだから、ちょっと早いけど就業前研修を始めようか。こっちへどうぞ。エスカイアもこっちきてくれ」


 クロード社長はオレの肩を抱くと、引きずり込むようにオフィスの奥にある小部屋の扉を開けて入っていく。中は窓が閉め切ってあるのか、三月下旬でもほんのりと温かく、床には薄い光を発する魔法陣に文字がびっしりと書き込まれていた。


「これは?」

「いーの。いーの。詳しい説明は派遣先の職場に行ってからね」

「お待たせしました。採寸データを一緒に持っていこうと思って遅くなっちゃいました」


 遅れてきたエスカイアさんはあの野暮ったい眼鏡を外し、黒髪から金色に光り輝く艶髪ポニーテ―ル、二重の瞼と長いまつ毛をまとった翡翠色の神秘的な瞳、そして、三角に尖った耳を持った女性に変貌していた。この姿形どっかでみたことがある。そうだ! ファンタジー小説のエルフだ! あのエルフにそっくりなんだ!


「エスカイアさん?」

「ええそうよ。こっちにいる時は眼鏡をはめているの。尖り耳は困るからって日本政府に言われているからね。本来の姿はこっちよ。あっちに行くから眼鏡を外してきたのよ」


 え!? あっちってどっちよ? マジで、そういう怖い発言はやめてくださいよ。嫌ですよ。片道きっぷのあっちの世界は……。


「さあ、いくぞ」


 クロード社長がブツブツと呟くと、魔法陣から眩暈がするほどの激しい光の明滅が始まり、オレの意識は遠のいていった。



「……くん……柊……柊君。起きて」


 目覚めると金髪翡翠眼にモデルチェンジしたエスカイアさんに膝枕されていた。


「あ、はっ!? すみません! 業務中に寝てしまうなんて……申し訳ないです」

「いや、いいさ。初めての転移で意識を保つやつなんていないからな」

「そうですね。失禁された方もいらっしゃいましたし」


 目覚めた先は先ほどまでいた雑居ビルの一室ではなく。大理石や黒曜石といった装飾石で化粧された神殿風の建物であった。


「さぁ、我が社の派遣勇者登録してもらうか。立って、目の前の黒い石に触れてくれるか?」


 クロード社長は指差す先に黒い三角錐状の石が置いてあった。言われるがままに手を触れていく。


――――


 ひいらぎ 翔魔しょうま 年齢22歳 人間 男性 国籍:日本


 社員ランク:F


 勇者素質:SSS


 LV1 


 HP:20


 MP:20


 攻撃:20


 防御:20


 素早さ:20


 魔力:20


 魔防:20


 スキル:スキル創造 スキル模倣 神の眼

 

――――


 石に触れた途端に目の前に透過型ディスプレイのような表示が浮かび上がった。


「えっ!? これって……」

「むぅ……これは……」


 表示された文字を見た二人の顔つきが険しくなる。なんだろう、とても不安なんだが……。そもそも、色々突っ込みたいことが山盛りだが、二人の真剣な態度に切り出すタイミングを失っていた。


「まぎれもなく、伝説クラスの『派遣勇者』だな……私も二十年この計画に携わってきたが、元々勇者の素質の高い日本人でも勇者素質が『SSS』なんて見たことないし、ましてや付与されているスキル三つとも前例が無いスキルだな」


 サングラスで表情を読み取れないもののクロード社長の声色は驚きに満ちている。

 

 やべえ、なんだろう。もしかして、能力的に物足りなくて就業前研修受けさせてもらえずに、このままお帰り下さいと言われるのか……LV1ってことはほぼ戦力外ってことだもんなぁ。確かに社会人としてはLV1だと思うが、これでも結構バイトではリーダーとかして切り盛りしてたんだけどなぁ。


「……クロード社長……柊君はしっかりと教育する必要がありますね……。わたくし、久しぶりに身震いするような社員に出会いました」


 エルフっぽくなったエスカイアさんが、何だか握り拳を固めて決意しているけど、しっかりと業務を教えてくれるならそれはそれで楽しくなりそうだ。


「あ、あの……それで就業前研修は受けさせてもらえますか?」


 どうも、オレの頭越しに話が進んでいくような気がしたので、二人に研修を受けられるか尋ねた。


「ああ、問題ない。むしろ、しっかりと研修を受けて欲しい。そうすれば、柊君はすぐにでも『S』ランク社員になれるだろう。君のような逸材が我が社に入ってくれているだなんて……長くこの業界をやってきたが、こんな日が来るとは……」


 な、泣いちゃったよ。オイ。別に泣くほどのことでもないでしょ。たかが、就活に失敗しかけた学生を一人獲得できただけで、即戦力のトッププレイヤーが入社した訳じゃないんだから。


「とりあえず、クロード社長の承認印もらえますか? 社員身分が確定しないと色々と研修が始められませんよ」

「そ、そうだな。よし、『(株)総合勇者派遣サービス』社長、クロードの命により、柊翔魔を我が社の派遣勇者と認める」


 透過型ディスプレイに社長が手を添えると、眩しい光を放ち、やがて光が収まると社員証のようなカードが浮かんでいた。もちろん、社名と俺の顔写真入りである。


「はい。これで、柊君はうちの社員よ。まだ、研修期間だけどしっかり頼むわね」


 カードを手に取ったエスカイアさんがニッコリと笑って社員証を手渡してくれた。その笑顔はやっぱり、アイドルと言われてもおかしくないほど、魅力的な笑顔をしている。


「あ、ありがとうございます。柊翔魔、この『(株)総合勇者派遣サービス』にて一生懸命に頑張らせてもらいます」

「期待しているぞ。柊君」


 クロード社長も満足そうな顔で肩をポンポンと叩いてきていた。


 社長にも気に入られて、美人の先輩事務員さんの業務前研修も受けられているなんて……やっぱ、残り物には福があったなぁ。オレの就活一五〇敗も無駄じゃなかったんだ。


「さぁ、柊君、社員登録も負えたから研修室に行くわよ。これから終業時間までわたくしがキッチリ教えてあげるわね。フフ」

「お、お願いします」


 オレは妖しく笑ったエスカイアさんの後について、神殿のような場所から研修室に向けて歩き出した。


チート勇者の爆誕です。でも本人は戦力外を危惧しておりますがw


ちなみに勇者適性は『SSS~F』ランクまであり、それぞれのランクにより成長値と最大上限レベルがきまるので、エルクラストでは最重要視される適性です。エルクラストは成人の際に全ての方がカード交付を受け身分証として体内に取り込まれます。

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