第百十四話 圧倒的パワーでなぎ倒してしまった。
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新たな領地候補のリーチウォールは、涼香さんが言っていた以上の素晴らしい土地であった。
交通の便こそかなり難があるが、城壁の代わりとなりうる8000メートル級の山々に囲まれた広大な盆地は、雪解け水が幾筋も川の流れを形成し、水量も豊富で、農業には最適の地を形成しているようだ。
護岸整備や水路灌漑施設を整備してやれば、きっとよい穀倉地帯になるだろうな。
高い山に囲まれた分、日照の問題もあるかと思ったが、盆地自体がかなりの広さを持っているため、さほど気になるものではなかった。
「これは良い土地じゃのぅ。妾の国よりも土は肥えておりそうじゃし、水もたんまりとある。大型の船は無理としても小型の船が川をさかのぼれるように急流を翔魔が整備してやれば、往来は活発になるであろうし、新たな仕事先も確保してやれそうじゃ。後は8000メートル級の山々に結界魔術を施してやれば、数万規模のシェルターになると思うぞ」
トルーデさんもリーチウォールの土地が持つポテンシャルを確認したようである。
「イシュリーナも住民に、仕事と土地と食料を与えられると喜びそうですよ。これは……。移住する人たちも土地が自分の物になるのであれば、喜んで開拓するだろうし」
イシュリーナから開拓事業先の土地を確認して欲しいと言われていた聖哉も土地を見て納得していた。
これほどまでに条件の良い土地が、交通が不便の一点だけで不良債権領地と化していたのだ。
「これは、いい土地だったね」
リーチウォールの視察をしていると、エスカイアさんから通話呼び出しがかかってきた。
『翔魔様、クロード社長の承認及びエロクサティム王国からの叙任通知を頂きました。その土地はすでに翔魔様の領地となりましたので、自由にして頂いて結構だそうですわ。領土の大まかな境界を示したマップを送りましたので、参考にして下さいませ』
ビデオ通話の画面でエスカイアさんが一礼をしているが、相変わらず仕事が早い。
涼香さんがすでに事前交渉を終えていたとも思えるが、俺のチーム事務方の処理能力はトンデモない処理能力を持っているようだ。
「了解した。じゃあ、移住者が来る前にある程度手入れして、開墾用の土地や建築資材とかを確保をしておくよ。何かあったら、通話で呼び出してくれると助かる」
『承知しました。しばらくはそちらに出勤されるということですね』
「ああ、開拓準備とシェルター整備のために、しばらくはこちらに来るから、オフィスはエスカイアさんと涼香さんに任せるよ。トルーデさんも借りておくってクラウディアさんにも伝えておいてくれると助かる」
『承知しました。聖哉君、翔魔様、トルーデ陛下はリーチウォール開拓組として直行直帰すると連絡しておきますわ』
「ありがとう。助かるよ」
エスカイアさんにオフィスを託すと、俺たちは開拓団が到着するまでに必要になりそうな物を準備することにした。
「で、トルーデさん。まずは何から必要になりますかね?」
帝国を一代で築き上げたトルーデさんに開拓村で必要になりそうな物を聞く。
ゼロから街を作ったことはないので、ここは経験者の意見を重視した方が効率的だ。
「木材の切り出しからじゃな。木材資源はいくらあっても困らん、建築資材にも使うしな。道具類は後で持ち込むにしても、まず農地の邪魔になりそうな雑木林は切り倒してよいぞ」
「木材切り出しか。おし、聖哉。手分けしてやろうか。切り出した木はある程度の個数まとめて、置いておけばいいだろうし」
「分かりました。じゃあ、僕は西側を担当します」
聖哉がすぐに飛空魔術を使って、西側の雑木林を伐り出しに飛んだ。
「俺は東側行くんで、トルーデさんは、開拓村の図面でも引いてもらえますか」
「妾に街割りまでせよと申すか?」
「ええ、そうしてくれれば、特別ボーナスか、専属メイド交渉を始めてもいいですよ」
ヴィヨネットさんが、機構の研究部に里帰りしているため、メイド喫茶建設へのメイド不足に悩んでいるトルーデさんに、人参をぶら下げることにした。
「なんじゃと!? それは本当か? ヴィヨネットが中々帰ってこぬから、新たなメイド候補探そうとしておったところじゃ。孤児院に中々の素質を持った子がいたので、声をかける許可が欲しいのじゃ」
一瞬、聞き捨てならないセリフを聞いた気がするが、メイドもキチンとした職業であることに間違いはないので、就労先として拒否はしないことにしておく。
「分かりました。この開拓村の街割りをしっかりと成し遂げたら、声掛けを許可します」
「翔魔は話の分かる奴だ。街割りはきっちりと図面引いてやるから、楽しみ待つのじゃ」
「頼みますよ。半端な仕事だったら、アレクセイさんにお小遣い減らしてもらいますからね」
「任せるのじゃ」
膨らんでいない胸をポンと叩いて、鼻息を荒くしているトルーデさんに街割りを任せると、俺は東側に広がる雑木林を伐り倒す作業にはいっていった。
しばらく飛び続けると眼下には、農地になりそうな平坦な土地に、ポツリポツリと雑木林が広がっており、開拓村の開拓資材にするため伐り倒すことにした。
地表に降りると、一個ずつ伐り倒すのはめんどうなので、探知を使い、木だけロックしていく。
範囲は周囲一キロ圏内にしていた。あまり、広範囲でやると、さすがの俺も精度に難が出るので、きちんとロックできる範囲に限定しておいた。
ロック数、四五六二本。すべて、地面から生えている木だ。
その一本ずつに向けて、順次風魔術の風鎌を発動させていく。
ロックに誘導された風鎌が次々と射出されていくため、俺の周りは竜巻が発生したように暴風が暴れ回っている。
「おぉお、どんどんロックが消えていく。現代だと環境破壊だって言われそうだけど、無人だから大丈夫だよね」
はっきり言って手抜き過ぎる木材切り出しであり、雑木林に住む生物たちにとっては災害というしかないが、外縁部から伐り倒すようにしているので、危機を察した動物たちは逃げ出してくれるだろう。
数十分後には、周囲に見えていた雑木林が綺麗に消え去り、伐り倒された木材が周囲に転がっていた。
「後はこれを一カ所に集めて、加工しておくか」
伐り倒した四〇〇〇本以上の木を念動力で集め、山と積むと長さを揃えてるため、風鎌でぶった斬る。
一気に建築用の木材が大量に入手できた。
ただ、一つの懸念は雑木林をぶった斬ったことで生態系の変化が起きたことだ。
開拓民が入れば、失われるのは分かっていたが、俺がその変化を一気に起こしたという気分になっている。
「少し派手にやり過ぎたか……」
目のまえに積み上がった建築用木材の山を見ながら、改めて自分の無茶苦茶な力の使い方に反省をしていた。
お久しぶりの更新です(`・ω・´)ゞ
転移物の新作書いてました。『成長チートを得た俺は、真の仲間とともにダンジョンの最深部を目指す』
お時間ある方は下部リンクより飛べますので、ご一読して頂けると幸いです。
ある程度書き溜めできたので、こっちも週一更新に戻していきたいと思います。







