第百十一話 知らぬ間に役職が変更されてしまった
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俺が(株)総合勇者派遣サービスに入社してすでに半年以上が経ち、派遣勇者の仕事にも慣れ、ヒイラギ領も領民たちの暮らし向きは良くなってきていた。
孤児院の方も孤児だけでなく、教育の大切さを痛感した領民たちの子供が通い始めることとなり、孤児たちとともに勉学に励み始めている。
給与の方も領内から上がる様々な物産の売却代金や税収の領主としての取り分、(株)総合勇者派遣サービスから支払われる給料、魔結晶の売却代金など、各種の収入が入り、すでに給与振り込み用の通帳には二〇〇〇万近い金額の預金が印字されている。
驚くことに年末までには倍にまで増えている可能性もあるのだ。
エスカイアさんに確認したところ、主任クラスは副業収入込み年間で億単位稼ぐ人もいるそうだ。
定年までこの会社で働いたら、とんでもない資産が形成されてしまう気がするが……。
オレは改めて(株)総合勇者派遣サービスという会社の特殊さに驚きを感じていた。
「エスカイアさん、オレの給料もっと減らしくれないか。社会人一年生がもらっていい金額では無い気がするが……」
オフィスで仕事をしているエスカイアさんに給料が多すぎると懸念を伝えた。
すでに予測では年間四〇〇〇万の年収を手にすることがほぼ確定的であり、一社会人としては多すぎる収入だと思われる。
それにこれだけの収入を親父にはいいとして、お袋と妹にどう説明するか頭を悩ませてしまうのだ。
「その件でしたらご心配なく。すでに翔魔様の名前で会社を立ち上げており、(株)総合勇者派遣サービスの傘下入りしております。ええっと会社名は『(株)柊警備』ですね。給料や領地から上がる売り上げ等の資金はこのペーパーカンパニーに集約されます。決算書等は涼香さんがキチンと管理してますし、利益から発生する税金も納める予定です。来月からはそちらの会社の代表取締役社長となります。表向きはですがね。実際は(株)総合勇者派遣サービスの社員のままですが」
エスカイアさんが、デスクの上に置いてあった資料に目を落としている。
オレは知らぬ間に会社社長になっていたようだ。
「え!? 会社社長!! ちょ、ちょっとオレは(株)総合勇者派遣サービスの社員で」
「ええ、(株)総合勇者派遣サービスから出向という形での社長就任ですが、他の主任クラスの方も領地を持たれた方は、子会社の社長という形で出向してますよ。こうした方が節税もできますしね。子会社からの役員報酬という形で領地の収入を受け取るためです。籍は(株)総合勇者派遣サービスに残ってますのでご安心を」
「エスカイアさんが言ったことを捕捉すると、第七係全体が子会社に出向してるって形ね。私は(株)柊警備の総務部長らしいわ。エスカイアさんが副社長、傑作なのは聖哉君が人事部長なのよ」
エスカイアさんと同じように書類仕事をしていた涼香さんが会社設立に関して捕捉してくれていた。
聖哉が人事部長とかありえ――なくないか。わりと子供たち素質を見抜く眼を持っていたし。
「トルーデさんは?」
「トルーデ様は給与をアレクセイ様に送金しておりますので、子会社には在籍しておりません。あくまで税制上の措置なので、日本で納税する義務がある人のみの所属となります」
確かにトルーデさんは給与をアレクセイさんに送金され、アレクセイさんからのお小遣いの振り込みで生活をしているため、税の処理に関わらない存在であるな。
それにしても、オレが子会社の社長か……社会人一年目なんですけども。
知らぬ間に進んでいた子会社設立もすでに準備を終えているようで、俺は(株)総合勇者派遣サービス派遣勇者第七係主任という肩書きと、(株)柊警備代表取締役社長という二つの肩書きが存在することになったのだ。
「ですので、来月からは役員報酬という形で給与が支払われますので、税金に関してはかなり楽になったはずです。積み立て用と生活用に口座をお分けした方がいいですか?」
「できれば、そうして欲しい。普通のじゃない収入を見てると、落ち着かないし、いっそ目の届かないところで管理してもらい、オレには月二〇万の振り込みがあれば、それで何とかするよ」
膨大過ぎる数字が記された預金通帳を見るのは、結構恐ろしいし、とても落ち着かないので、できれば普通のサラリーマンが受け取るくらいの金額が払い込まれる通帳を見て、喜びを噛みしめたい気分になり始めていた。
「分かりました。翔魔様への振り込みは月二〇万円程度として、翔馬様名義のカードを作りますので、大きい買い物はそちらで決裁してください。限度額は無制限のカードにしておきますので、大概のものは買えるはずです」
まさか、クロード社長が使っている魔法のカードがオレの手にもくるハメになるとは。
ゼッタイに黒い奴だろ。
まさか、自分があのカードを持つだなんて……。
「余った資金の運用は私に任せて、色々と運用しておくから。日本でもエルクラストでもね」
涼香さんが目をランランと輝かせている。
すでに運用先の目星を付けているのか、その目に迷いの色はなかった。
ヒイラギ領での八面六臂の活躍を見ていれば、彼女の運用が多大な利益をもたらす可能性がとても高いと推測される。
誰かが言っていたが、金が一定額を越えると金が金を呼び始めるそうだ。
バイト代で四苦八苦しながら過ごした学生時代とは雲泥の差を痛感していた。
「出た利益は、極力ヒイラギ領の領民に還元していいし、みんなの給料にしていいからね。オレは億万長者になっても金は使い切れないから、みんなに回してくれよ」
「もちろん心得ておりますわ。ですが、最大限領民に還元してもまだ利益が上がってしまいますので、もう一つくらいオンボロ領地を頂いて真面目に経営をしてみますか?」
エスカイアさんが半分笑いながら提案してきた。
それほどまでにヒイラギ領は税が上がる領地に魔改造されつつあるようだ。
イシュリーナと聖哉の住むギブソンへも道が開通したことで、道路工事に参加したギブソンの民に多くの賃金が流れ、街が活気を取り戻し消費が上向き始め、ドワーフ地底王国の最大の港町ワズリンからはヒイラギ領で作られたオリハルコン製の武具を始めたとした輸出品が各地に売り出され、巨万の富を生み出している。
お金が余って仕方ないなら、どこかの滅亡しそうな領地を助けるというのも一つの手段か。
「柊君がその様子だと、もう一個くらい持ってもいいかなとか思っているわね。実はヒイラギ領の発展を見聞きした各国からお話が来ていてね。どの子がいい?」
突如、立ち上がった涼香さんが、書類の束を持って、オレのデスクの前にきた。
アーススター・ノベル様の公式サイトにて書影公開されました。
5/15に発売されます。
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