幕間03
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※三人称
「そろそろ、動かすべきか――」
黒髪の年若い青年が薄暗い灯火によって照らされた室内で、有翼人の女性を前に椅子に座っていた。
灯火に浮かぶ顔は(株)総合勇者派遣サービスに勤める、柊翔魔の顔に酷似しており、ただ一つ違うのは目元にある黒子だけであった。
「光琉様……」
「その名は捨てた。今の俺はリュウだぞ。アマレーネ」
「そう……でしたね。あの日より名を捨てられたのでしたね」
アマレーネと呼ばれた有翼人の女性は視線を床に落とす。
リュウと名乗る男はすでに死んでいるとみなされた西園寺静流の弟、光琉であった。
「ああ、クロードと姉さんから袂を分けたあの日から俺は名を捨てた。だから、今はただのリュウだし、今後また名が変わるかもしれん。アマレーネだけが俺の本当の名を知ってれば満足だ」
アマレーネと呼ばれた有翼人の女性は、リュウに近づくと跪く。
そして、エスカイアたちが使う、日本人化する眼鏡をかけると、背中の羽根も消え、銀髪だった髪は黒い綺麗なストレートロングに変化し、瞳は碧眼から黒に変化して、三〇代前半のキャリア風の美女に変化していた。
「ありがたき幸せ。私の命はマイマスターに捧げております」
「すまないな。俺のわがままに付き合わせて」
「いえ、リュウ様の持つ力の一つである次元を繋ぐ力は、自分のために使われるべきです。そう、次元の狭間に閉ざされたお母さまを探し出すために使っていいのです。我慢する必要などリュウ様にはありません」
「すまない。本当にすまない。俺は全てを犠牲にしても、俺を産んでくれた人に会いたいんだ。この世界がすべて繋がることになったとしてもね」
リュウが感情を押し殺したように言葉を絞り出す。
その声は怨嗟を含んでいるのか、悲しみを押し殺しているのか、分からないが強い感情が宿った言葉であった。
「日本とエルクラストを一に……宿願のため、我々の成すことを致しましょう」
「ああ、そうだな。新型合成魔獣はどうなっている? アレがないと計画は進まないぞ」
「新型合成魔獣の量産は順調です。新工場も日本側に完成しましたので、更に数を揃えられるかと」
アマレーネは跪いたまま、リュウに進捗状況を報告し始めた。
「SSランク害獣も数体培養中で、あと数ヵ月あれば稼働可能となります。エルクラストと日本を繋ぐ強力な結界獣となってくれるでしょう」
「では、そろそろ。我等も日本政府、エルクラスト害獣処理機構、(株)総合勇者派遣サービスに反抗作戦を開始しないとな。また、工場や組織を破壊されかねん」
リュウは昏い笑みを浮かべる。
「まずは日本政府を揺さぶりますか?」
「そうだな。一番脆いところから突く方がいいだろう。イワノフを通じてロシアの諜報員から手に入れたコレで、外務省を揺さぶる。日本はメディアが祭りを欲しているから、餌を投じてやればそれに喰いつくだろ」
リュウは机の上に置いてあった書類を手にした。
中には異世界エルクラストとの間に結んだ協定が書かれており、この世界が一部だけ繋がった事件後に、エルクラスト側と日本政府が交わした密約文書であった。
日本政府は異世界エルクラストの存在を公式に認めていないため、この文章がマスコミに流れ、異世界の害獣が実際に日本に発生すればパニックに陥ることになる。
事態に即応できなければ、日本政府は機能停止に追い込まれ、二〇数年隠し通してきたエルクラストの存在が国民の目と、世界に晒されることになるのだ。
「御意。早速、日本側のメディアに情報の漏洩を始めます。一気にやると、(株)総合勇者派遣サービスの奴等に目をつけられるので、ある程度時間をかけて世論を誘導させて政府を揺さぶります」
「頼むぞ。アマレーネ。混乱こそ、我らが宿願を達成するために必要なことだ」
「はい。承知しております」
アマレーネはリュウから書類を受け取ると、光量の乏しい部屋から出ていった。
そして、残ったリュウこと西園寺光琉は椅子に深く腰を掛ける。
「母さん……俺は母さんに会いたい。そして、なんで俺をこんな化け物として産んだのか、直接聞きたいんだ……。こんな力……さえ無ければ……」
光琉は自らの手をジッと見つめ呟く。
「俺が二つの世界を救う力を持つなんて、クロードの与太話だろ。母さん、本当に俺は世界を救える存在だったの? 俺に備わったこの力はなんのために……分からない。分からないよ」
自らが行おうとしている二つの世界を完全に繋ぐ行為によって、双方の世界に夥しい数の犠牲者が出ることが予想されている。
光琉をその被害すらも受け入れ、それでもなお、母に自らが産まれた理由を問いたかった。
「だから、絶対に誰にも邪魔はさせない」
光琉は拳を握りしめると、椅子から立ち上がり、薄暗い部屋を出ていった。
というわけで、冬馬先生からのご厚意と編集様の許可がでましたので、キャラ表公開しました。
左から翔馬、涼香、エスカイア、クロード、静流、トルーデとなっております。
作者的には素晴らしいほどにイメージバッチリのキャラクターですが、皆様のイメージとは合致しましたでしょうか?
作者としては冬馬先生のイラストの続きが見たいので、二巻いけば水着・・・出させてもらうか(個人的要求)_:(´ཀ`」∠):_ 5/16にアース・スターノベルさんから出ますのでよろしくです(`・ω・´)ゞ
※キャラ表の著作権は冬馬来彩先生にあります。先生のご厚意で公開させてもらってますので無断転載はお断りいたします。ここでの公開は発売日までです。