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第百七話 エスカイアさんとデートしてみたら色々と発生する

誤字・脱字ありましたらご指摘お願いします。

 しばらくは、何事もなく休日となり少し遅めの起床をしていた。今日はエスカイアさんが買いたい本があるから書店に行くと言っていたので、オレもお供することになっていたのだ。


 トルーデさんはヴィヨネットさんと撮影があるし、涼香さんはヒイラギ領の施策案を考えるため母校の大学の図書館に用事があると言ってすでに出かけていたし、クラウディアさんも孤児院の子供達が気にかかると言って休みの日はエルクラストに里帰りしている。


 なので、今日はエスカイアさんと二人きりのデートなのであった。例の眼鏡で日本人の容姿に変化してもエスカイアさんの綺麗さは際立っているので、隣で歩くのには結構気合がいる。まぁ、それもエスカイアさんが選んでくれた服を着ていれば、それなりに見られる部類の男に入っていると思い込んでのことであるが。


 美人で秘書として有能、ご飯も家事も完璧、服のセンスもフォーマルからカジュアルまで完璧に着こなし、男性の服まで選べるという完璧お姉さんのエスカイアさんによってオレも社会人として恥ずかしくない恰好をできていると言って過言ではない。俺のセンスじゃ絶対に選ばない服が置かれていた時は首を斜めに捻っていたが、着た後の女性陣からの高評価にそれもありなのかと思っていた。


 エスカイアさんが選んでくれる服は、俗に言う意識高い系の服であったが、平凡なオレにでも着こなせるようなチョイスをしてあったのだ。エスカイアさん曰く、『会社の役付きがある程度の身だしなみをしてないと会社自体が見下されますからね』と言っていた。そのために役付きには多めの給料も支給されているとも言っていた。

 

 会社の看板を背負う以上、普段からそれなりの物を身に付けて慣れておかねばならないと、エスカイアさんに言われているので、日本に居る時はそれなりの物を身に付けるようになっていた。


「エスカイアさん、これでいいかな?」

「襟がちょっと曲がってますね。今直しますからお待ちください。はい、これでオッケーです」


 エスカイアさんが新妻のようにオレの曲がっていたジャケットの襟を直してくれていた。今日はみんな夕方にしか帰ってこないと聞いているので、お昼はどこか二人で食べようと思っている。デートだし、用事を終えたらどこか行ってもいいかな。


「エスカイアさんが良ければ、書店行ったあとでご飯食べにいこうよ」


 オレが食事に誘うとエスカイアさんの顔が一気に赤く染まっていく。


「デ、デートですか? 本当にお食事行ってもいいんですか? 二人きりですよ」

「ダメなの?」

「いや、ダメとか全然違うんです。むしろ、行きたいです! でも、私でいいんですか?」

「うん、エスカイアさんと行きたいよ」

「翔魔様……ああぁ、尊い」


 何だか知らないけどエスカイアさんがオレを拝み始めていた。神様でもなんでもないんで、拝むのは勘弁して欲しかったけど、彼女がしたいなら文句は言えないので黙って拝ませてあげた。

 

 別にオレは拝まれるほどのことをしてないし、むしろオレの方がエスカイアさんを拝みたいほどなんだが。とりあえず、今度寝顔を拝んでおこう。


「エスカイアさん、そろそろ出ないとデートする時間もなくなっちゃうよ。さぁ、行こう」

「あ!? はい。わたくしは準備できておりますので」


 そう言ったエスカイアさんは黒縁の例の眼鏡を掛けて髪色と目の色、耳を形状を日本人のように変化させる。光り輝く金髪が艶やかな黒髪となり、宝石のように輝いていた碧眼は、全てを吸い込みそうな黒い瞳に変わり、尖って長かった耳は丸く短く変化している。


 エルフ姿のエスカイアさんはファンタジーのエルフそのものの容姿だが、眼鏡を掛けて日本人に変化したエスカイアさんは野暮ったい地味系のOLにも見えるが、よく見ると凄い美人という二律背反した容姿となり、不思議な魅力を感じさせる女性になっている。


 この不思議地味系事務OLが官公庁街を歩くと官僚や政治家が頭を下げて出迎えるらしいとの噂も東雲女史から聞いているけど、あくまでオレの前ではかわいいお姉さんという認識しか抱けないでいた。


「じゃあ、出発しよっか」

「はい」


 オレ達は管理人に外出を伝えて、電車に乗り、都内の大型書店へ足を向けていった。



 エスカイアさんの買いたい本がある書店は秋葉原の専門書店にあるそうで、そこでしか特典が付かないそうなので、整理券まで事前にゲットして予約をしていた書籍であったそうだ。


 オレも学生時代はラノベや漫画を買いに来ていた場所だったので、久しぶりに書店内のラノベコーナーをぶらついて、読んでたラノベの続刊がでてるかチェックをしてみることにした。


 久しぶりにきた書店の売り場は一変していた。『小説家へなれる!』発と書かれた大きなサイズの本が文庫と同じくらいの数、陳列されており、就活に入る前に通っていた一年前の売り場の位置が激変していたのだ。


 オレが慣れ親しんだ学園異能系文庫シリーズがある一方で、大きなサイズの本は異世界ファンタジーが棚いっぱいにならべられていた。


 一冊を手に取ると、人生に疲れたおっさんが事故で死んで神様によって違う世界に転生させられて、色々と好き勝手する小説のようだが、ハッキリ言って、転生こそしてないが、そこに書かれていることはエルクラストでオレがやっていることそのものであった。


 気になって著者名を見ると、例の作家先生の作品であった。オレはそっと閉じると棚に戻していく。


「『就活失敗した俺が異世界でハーレム王』とかタイトルがやばいな。早速、暗殺チームを例の先生には派遣せねば」

「何読んでいるのですか? ああ、これ面白いですよ。わたくし、例の先生のファンになってしまいました。実に上手くエルクラストのことを書かれてますよ」


 予約していた本を受け取ったエスカイアさんがオレの後ろから話しかけてきた。エスカイアさんは例の先生の作品を読んでいるようだ。絶対にオレたちのことを詳細に書いてあるはずだから、死んでも読みたくない。一般の人からみれば、オレは最低の三股野郎だからな。


「わたくしが今日買った『エルフ嫁と異世界から来たイケメン旦那様』だと、エルフのお嫁さんが異世界から来た素敵な男性とラブラブの新婚ライフを送っているんですよ! これはわたくし教材として買わねばと決意して予約までして手に入れたのです」


 完璧お姉さんであるエスカイアさんの鼻息が荒い。どうやら、今日ゲットした戦利品は『異世界物』と言われる小説のようであった。それに教材ってなにさ。別にオレは異世界でエスカイアさんとイチャイチャしたい訳じゃないし(いや、したいけども)日本でも婚約者としてキチンと……(まだ、お袋たちにはいってないか)


「さーせんっ! エスカイアさんの気持ちは痛いほど理解しております。不肖、柊翔魔。嫁としてなるべく早めにお迎えできるように精進いたします」

「あわわ! べ、別にそんな訳じゃ。いや、そうなんですけど。そうじゃなくて。予行演習しておこうと思いまして。色々と調べてたら、こういった書籍が見つかりまして。イ、イメージトレーニングにちょうどいいかなとか思ったり」


 アワアワして力いっぱい慌てているエスカイアさんだが、その顔は真っ赤に染まっていた。作品の中身がとても気になったので棚に置かれていた同名タイトルの本を手に取るとチラリと見ていく。数行読んでいくとこの作品が女性向け作品であることが判明していた。つまりはイケメンの転生者によってエルフの女性主人公がいいことされてしまうスローライフな小説であった。


「はわわ。読んじゃダメですって。翔魔様!?」


 俺はその小説に書かれていたイケメン主人公のセリフをエスカイアさんの耳元で囁いてみた。


「ずっと一緒にいろ。お前に拒否権はねえかんな」


 オレの言葉を聞いたエスカイアさんの体温が一気に数度は上がったと思われるほどの熱が発生していた。そして、エスカイアさんは袋に入れられていた本をグッと抱きしめると少し涙目になってウルウルしている。


 やべえ、エスカイアさんちょーかわいい。これはいかん破壊力高すぎるでしょ。その顔は。


 オレは改めてエスカイアさんの顔をマジマジと見ると心臓が高鳴るのを抑えきれないでいた。ここが自分の家なら完全にギュッと抱きしめてしまっているだろう。それくらい、オレの心を揺さぶる可愛さであったのだ。


「翔魔……様。わたくしもずっと一緒にいたいです。おじいちゃんとなっても一緒にいたい。お傍にいていいですか?」


 エスカイアさんは書店であることも忘れ、オレの胸に頭を埋めて小さく呟くと、身体をオレの方へ預けてきた。


「お前はずっとオレの傍にいろ」


 心の奥から湧き出た言葉が図らずも小説のイケメン転生者の言葉と重なっていた。エルフであるエスカイアさんは歳を重ねても容姿は衰えず、オレは人間であるため年老いていく。手にしているこの小説もそういったエルフと人間の時間の流れの差を描いた作品であり、エスカイアさんが一番気にしていると思われることだとも理解した。


 時間の流れは全然違うけど、オレは生きている限り、エスカイアさんの伴侶として一緒に暮らしていきたいと思っている。そして、一緒に同じ時を過ごせて良かった思い出を渡して最後を迎えたい。


 寿命的にオレの方が絶対に先に逝くことは間違いない。それまでにたくさんの思い出をいっぱいエスカイアさんに残していくのがオレの使命だと自覚した。エルフと結婚するというのはそう言うことなのだろう。ダークエルフの嫁を持つ天木料理長もその決意をして暮らしているに違いない。


「んんっ! 店内でいかがわしい行為はやめてもらえるでしょうか?」


 抱き合っていたオレたちに店員が咳ばらいをしながら注意をしてきた。見ると、店内にいた他の客の視線がオレたちに向かっていた。


「はっ! すみません」

「ああ、ごめんなさい。わたくしとしたことが」


 オレたちはバッと身体を放すとそそくさと書店を出て行くことにした。

エスカイア「翔魔様……さっきのセリフはお家でもう一回じっくりと聞きたいですわ。はふぅ」

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