化物と化物
ここまでは凄く短いですが、次回からは文字数を増やす予定です。
林から飛び出して来た「ソレ」は、自分の記憶の中にあるどの生物とも共通しないものだった。
パッと見は犬の様であるが、額からは捻れて歪な形をした角が生えている。
何よりも犬とは比べ物にならない位にでかいのである。
頭から尻尾までを測ればゆうに3メートルを超えているのではないかと思う程だ。
「嘘だろ…」
目の前に現れた「ソレ」が何なのかは分からない。だが一つだけ言える事がある。
これはヤバイ。俺の力、いや、人の力では絶対に抗う事の出来ない存在である。
心が恐怖で埋め尽くされ、足は震え身体中の汗腺から汗と言う汗が吹き出してくる。
逃げようにも身体が言う事を聞かない。聞いてくれる訳が無い。
目の前の「ソレ」は、恐怖に震える俺を嘲笑うかの様にゆっくりと近付いてくる。
口から垂らした涎が地面に落ちる度、自分の命がじわじわと削られるだろう事を感じた。
もう終わりだ、こんなのどうしようもない。
一体俺が何したって言うんだ。ただ普通に、他人に迷惑を掛けないようにひっそりと学生生活を送っていただけなのに。
理不尽な現実から目を背けるように、俺は心の中で悪態を吐き続けた。
だがそんな時間は唐突に終わりを告げる。
「グルァァァァ!!」
恐ろしい叫び声を上げながら「ソレ」が俺に飛び掛ってきた時だ。
「そらぁ!!」
女性の掛け声が聞こえたと思った瞬間目の前で「ソレ」の首が胴体から離れ、地面に落ちたのである。
突然の出来事に、俺は何の反応も出来ないまま固まっていた。
「大丈夫だったかい?」
動揺して視線が定まらないままの俺を気遣う様に「ソレ」の首を切り落としたであろう女性が声を掛けてきた。
右手には成人男性と変わらない程の大剣を握り、優しそうに微笑む女性を見て俺の意識は遠のいていった。
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