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ドロボウは夢叶える為世界を旅する(過去編)  作者: フロッグ
ドロ過去幕:苔むした町と夢望む白城
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助ける方法

ドロ……大丈夫だよ……私が守るから。


耳に囁かれた声がいやに優しくて俺は涙を流すしかなかった。意識は曖昧で夢かもしれない。でも涙を拭ってくれた冷たくて優しい指の感触は今も頬に残っている気がする。


目を開けると部屋の至る所に戦闘の傷跡が見え所々に赤いシミが残っている。窓からは何も変わらない穏やかな日差しと平和な小鳥のさえずり。あまりにも雰囲気がそぐわなくて気持ちが悪い。現実感がなかった。重い体をなんとかゆっくりと起き上がらせる。血だまりに長時間転がっていたせいで血は固まり瘡蓋のようにペリペリと剥がれる。体に開いた風穴は綺麗に消え代わりに少し血色の悪い自分の肌が破けた服から覗く。あたりを見回すとシャル・バラト・ロゼの姿はない。動かない体に鞭をいれ立ち上がる。




見たくなかった……。本当は最初に気づいていた。


でももしかしたら見たものは本当は夢かもしれないって目を背けていた。


だが………………ボロボロのメリンが壁にもたれかかっていた……。


俺はよろよろとメリンに近づき抱き寄せる。その体があまりにも軽くて俺は唇を噛み締める。


「メリン?」


揺さぶっても起きない。絶望が胸中を埋め尽くす。


「おい、起きてくれ、起きてくれよ!メリン!頼む!」


嘆願するように抱き寄せるとくぐもった声が聞こえた。


「メリン!」


「苦しい…よドロ。でもドロの匂い。やっぱり落ち着く」


「ああっ。ああっ良かった!本当にもう目を覚まさないのかと思った!」


「大丈夫だよドロ。最後にあなたに何も言わずに眠るなんてしないから。ゲホッゲホッ」


「無理するなメリン」


俺はメリンの言った最後という言葉には触れない。触れたくない。


「もうシャル・バラト・ロゼは追い払ったんだろ?だったら眷属達を呼んで治療するために一旦移動しよう」


俺が努めて明るい声で言うとメリンは微笑んで首を振る。


「なんでだよ……」


「眷属達はもういないわ。シャルとの戦闘で皆居なくなってしまったもの。それに私も長くない」


「何…言ってんだよ」


俺は冗談だと笑おうとするけど顔は強張って動こうとしない。メリンは微笑んだままそれでも真剣な眼差しで俺を見つめる。


「ドロ…分かっているでしょ?」


諭すような声音に俺は叫ぶ。


「分かってるよ!分かってる……。でも明日だったんだぞ!!明日だったのにこんなことってあるかよ!」


「ドロ……」


「なんで…なんで俺は何もできない。一緒にいようって約束したのにこれじゃあ一緒にいられないだろ!メリンを守れるように鍛えたのに。俺は俺は……」


「ドロは私と一緒にいてくれた。それだけで充分だよ。でもごめんなさい、約束守れなくて」


「メリンはもっと我儘を言って良いんだ!ずっとずっとここに1人でいたんだ。俺に我儘を言ったって良いんだ!」


「もう沢山言ったよ。それにドロと一緒の日々は私にとってはかけがえのない大切な宝物だよ。だからもう大丈夫」


メリンは諦めたように笑う。それにどうしようもない怒りを覚えて怒鳴る。


「大丈夫なわけあるか!」


メリンはくっと唇を噛み締め悲痛な声で叫んだ。


「これ以上……望めるわけないじゃない!私だって嫌よ!でもこれ以上望んだら……目覚めた時にもっと虚しくなるじゃない。そんなのは嫌、嫌」


ふるふると首を振りメリンは最後に泣きじゃくる。


「ドロ…一緒にいてよ。目覚めてもいないなんて嫌。ずっとずっと一緒にいて。私を……1人にしないで……」


俺は黙ることしかできない。泣きじゃくるメリンを抱きしめることしかできない。


吸血鬼になる儀式は失敗した。


俺は……メリンといられない。


「そんなにこの娘といたいか?お主は?」


妙に大人びた艶のある声が聞こえる。とうとう幻聴まで聞こえてきたかと思ったが軽くみぞおちを殴られそうではないと下を見た。


今まで泣きじゃくっていたメリンは泣き止み理知的な瞳でこちらを見つめている。


「お前は……あの時の!メリンはどうした!」


「はあ、なんで妾が直々に出てこなければならんのじゃ。それもこれもあのシャルとかいう吸血鬼のせいか。吸血鬼も地に落ちたのう」


メリンが言っていたた化物はブツブツと文句を言いその度に軽くみぞおちを殴ってくる。


「質問に答えろ!」


「ああ、なんじゃ?ああそうじゃ。お主この娘を助けたいか?あまり時間はないぞ?質問に答えている間に時間が来てしまうかもしれん。眠る前の言葉くらい言える時間は欲しいじゃろ?」


飄々と答える化物はそれだけ言うと黙る。得体の知れないこいつの話を聞くのは癪だがメリンを助けられるのであれば何だっていい。俺は化物の提案に乗ることにした。


「どうすれば助けられる?」


「ふむ、いい小僧に巡り会えたな娘よ。して話じゃが多分この傷じゃと早くて200年。長いと300は眠り続けるじゃろうな。人間の生では待つことは出来ぬ」


「だからどうすれば良いんだ!」


俺はイライラして怒鳴るとうるさいと言うようにみぞおちを軽く殴られる。


「最後まで話を聞け。普通であれば待つことは不可能じゃ。この娘は時間に取り残されお主は骨になっとるじゃろう。じゃがこれは待てばの話じゃ。だったら限りなく待つ時間を限りなく減らす方法を探せばいい」


「そんなこと出来るのか?」


「出来る出来ないは探すお主にかかっておる。探すのか?探さないのか?」


迷うことなんかない。俺は首を縦に振った。


「探す。だから教えてくれ」


化物はそう言うと分かっていたようにニンマリと笑うと満足気に言う。


「いいじゃろう」


と。

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