吸血鬼のいる城
2章終わって過去編に飛びます。
ドロがウツワと出会う5年前の話。ドロが駆け出しのコソドロにも満たない少年だった頃の話。
そして………ドロに大切な人と叶えたい夢が出来た話。
「ねえ、約束しよ?」
「は?」
上目遣いで見つめる少女に少年はポカンと口を開ける。
〜〜〜〜〜遡ること2日前〜〜〜〜〜
ラッドタウン。
いつも薄暗く、薄緑のレンガで町全体が覆われている。この地方原産のモスレンガなるものを使用していて吸水性が高く硬いから使用しているとのことだ。更にモスライスにモスジャケット、モスペン等々食べ物から日用品まで苔まみれの町だ。目に入るものは緑に緑に緑、まだこの町に来たばかりだが長居はごめんだ。
「モスタウンに改名すりゃいいのに。」
俺は一通り町を見下ろすことのできる苔むした協会のてっぺんで一人悪態をつく。
ラッドタウンにはそれはそれは目をみはるお宝が町のほど近い城にあるという。
それは緑一色の視界の隅にあった。黒ずんでいていかにも廃城、良い言い方で言えば古城といった体だ。
俺はそんな噂を聞きつけはるばる来たというわけだ。情報収集のため町で話を聞いてみればそんな物は知らぬ存ぜぬでろくに情報が集まらない。せいぜい分かった事といえば宝を守っているのは吸血鬼らしい。関わるとろくな目に合わないとの事で町人達は話さないようだ。吸血鬼と言われても会ったことはないし本当にいるのかとさえ思える。
そんな中で話をしてくれたただ一人のおばあさんに話を聞く。
「吸血鬼か、いるんだなそんなの。」
「ああいるさ、なんたってあの古城は吸血鬼の住んでいる場所だからね。」
おばあさんは椅子にゆったりと腰掛け話す。
「どれくらい前からあるんだ、あの城?」
「さあねえ。私の叔母の叔母の叔母のそのまた叔母が小さい時から建っていたそうだよ。相当昔から存在していたんだろうね。」
このおばあさんの叔母がどれくらい生きているかは知らないがざっと100年はくだらないんじゃないか?
「ありがとな、おばあさん。いい話が聞けたよ」
俺は話を聞き終えると早速古城の下見兼侵入をするための準備に取り掛かった。
〜〜〜〜〜そして現在〜〜〜〜〜
古城に侵入することは容易だった。だが窓から侵入して顔を上げれば上目遣いの少女が目の前に立っているではないか。実際には顔の半分を占めるくらいの大きな分厚い眼鏡をかけているせいで上目遣いなのかはわからないのだが角度的にこちらを見ると視線がそうなる。髪は暗い血のような赤色でひと括りに紐で縛っている。
「ねえ、約束しよ?」
「は?」
もう一度少女は同じことを言う。
周りには誰もいないので当然俺に言っているのであろう。
俺が真っ白になった頭を必死に働かせる中、少女はふいに下を向き体を震わせる。
「?」
「もーう!なんで効いていないの?魔法陣を書き間違えたのかな。何?どこを間違えたの?」
唐突に爆発したように喋る少女に俺は驚きを隠せない。爆発した後は俺のことなんてまるで見向きもせず右に左にうろちょろ歩いている。
「城全体にかかるようにしてあるから大丈夫なはず。あーでもあの術式とあっちの術式で……。」
何やらぶつぶつ言っている。一体この子は誰だ?人はいないんじゃなかったのか?頭の中で疑問符が次々と浮かぶ。
「えーっと?君は……。」
「書庫にあの術式を記述してる書あるかしら。」
だめだ。これは気づいてくれるまで待つしかないようだ。
俺はこの城のことを聞くために窓に腰掛け待つことにした。自分と同じ年くらいの少女がいるのであればこの城には他にも大人や召使いがいるに違いない。だったら慌てず堂々と聞けばいいんだ。
準備の際、城を下見に来たが何年も経っている歴史ある古城というよりは物語に出てくるような立派な城だと思った。
それほど綺麗な城だった。純白とも言えるほど白いレンガを敷き詰められた壁、色グラスの嵌めこまれた窓、庭は一流の庭師が選定したと思われる精緻な木々の数々、門は町の家一軒が入るほど巨大だ。だがそれに似合わず恐ろしく静かで人気が無い。でも流石に少女1人でこの城を切り盛りしてるわけはないだろう。
「あれ?どちら様?」
やっと少女はこちらに気づいた。
「俺は…。」
「あー分かった!言わないで。」
「!?」
待ったというように手の平をこちらに向ける。
「あれよね、わざわざ術式にかかりにきた召使いよね。術式書き直すからどっか行ってていいわよ。」
そう言うと手をしっしっと手をヒラヒラさせている。コロコロと態度が変わり全くついていけていない。少女はいつの間にか手には本を持ち目を通している。それでも視界に自分が入っているのか片手を未だ追い払うように振っている。これは埒が明かないなとと窓に足をかけ出直そうとした瞬間……
彼女は本から顔を上げ何かを思い出そうと顎に手を当てている。
「あれ、この城には私一人のはず。召使いなんて雇ったこと無いし……あなた誰!?」
そう行ってビシッと指を指してきたのだった。




