3つをまとめる者
とある街で。薄ら赤い空の下薄暗い町並みに影が落ちる時間。3つの影が町に伸びる。あたりは静寂につつまれ3つの影以外に動くものはない。
「ふい〜。危なかったねー。」
「まあな。それもこれもお前がもちっと本気でやればすんだのによ。」
「あははぁ、すいませぇん。ちょっとあまりにもぉ面白かったのでぇついつい味わいたくなっちゃいましたぁ。」
口からは血を流し血塗れで笑う。元は紫だったドレスは赤黒く染まり今では見る影もない。
「うふ、うふふぅ。」
「おい、大丈夫か?血ぃ流しすぎておかしくなったか?」
「いいえぇ?興奮が収まらないだけですよぉ。」
恍惚とした笑みでクルクルと踊り出す血塗れの狂人にラビドーは溜息をつく。
「そいつあ良かったな。」
「マッシャー元気だね〜。すごーい。」
「いえいえぇ、それ程でもぉ。」
「いや褒めてないと思うぞ?」
「やあ、みんな。元気そうで何よりだね。」
そんな3人に爽やかに声を掛ける少女が一人。
「あ!お前来てたくせに逃げやがったな!」
「はっは、逃げてはないさ。出る幕はないと思ったからね。」
少女はまるで少年のように笑い話す。
「うん、なかったよー。私も〜まだ殴り切り足りなかったー。」
「今回はあまり殺れてないからね。しょうがないよ。」
「そうは言ってもナーギルはジャガイモの国で散々暴れただろ?」
「えー足りないよー。マッシャーに殴り切ってまだ息のあるジャガイモはあげたけどー。」
「素晴らしかったですよぉ。あの手に残る感っ覚!癖になりますねぇ。」
「マッシャーが気にいるとは余程楽しかったんだね。」
「俺は全然面白くなかったけどな。」
ラビドーが唾を地面に吐く。それに対して少女は苦笑する。
「でもドロって子といる時は楽しそうだったじゃないか。」
「あ?っはあ!てめえ見てやがったな!」
少女の襟首を掴みブンブンと振り回す。少女はその中でもはっはっはと笑っていた。ラビドーは荒い息を吐きながらイライラした口調で言う。
「お前いつまで他所行きの格好だ。」
「ああ、ごめんごめん、ついマッシャーと同じで興奮していてね。忘れていたよ。」
そういった少女に靄がかかったように歪むとそこにはニコニコと笑う少年が立っていた。
「さあ、久しぶりの4つ刃者集合だ。」
「お前が集めたんだろ?さっさと本題に入れよ。次はどの国を潰す?」
ラビドーは気を取り直すと口が裂けたように笑う。それに対して少年は軽く返答を返す。
「それもいいね。」
「でもまた遊ばないんでしょー?」
「ああ。僕は別に興味がないからね。僕の仕事は君達の暴れられる場所を探してきて提供することさ。」
「えー一緒に遊ぼうよ〜。」
物をねだるようにナーギルは少年に言う。それを軽く少年はあしらう。
「はっはたまにはいいかもね。」
「私はこの興奮を何かにぶつけたいですぅ。」
唐突にくねくねと動くマッシャーが少年の前に躍り出る。
「そうかじゃあ直近の国をお願いしようかな。ナーギルは何処がいい?」
「うーん面白そうなとこー。」
「難しいこと言うね。じゃあ木々が生き生きと生きている国は?」
「あーいいかもー。」
だらしなく笑いナーギルは頷く。それに少年は満足そうに頷く。
「よし決まりだね。さてラビドーはどうしたい。」
「片っ端から切り刻みたい。」
「ふむ、じゃあ領土をめぐって争う二国間の紛争に紛れるのはどうだい。」
「へえいいじゃん。切り刻む対象が多そうだ。」
「うん、きっと裂きごたえ間違いないよ。」
少年は笑顔でそう言った。4つ刃者を運営しているのはこの少年と言っても過言ではない。
「それで何に興奮してたのー?」
満足げに笑う少年にナーギルは問いかける。
「ん?ああそれは面白いものを見つけたと思ってね。」
少年は張り付いた笑顔を深める。それにはナーギルは首を傾げるがマッシャーは納得している。
「スーにはぁわかりますかぁ!あの素晴らしさがぁ!柔らかい中に芯を残し砕けた瞬間のあの快っ感!打てば打つほど伸びるあのしなやかさぁ!どれをとっても素晴らしいぃ!あああああああっ!今すぐにでもぉ搾搾したい。」
うっとりと半狂乱で語るマッシャーに変わらずに笑みをたたえるスーと呼ばれた少年は動じることなく笑う。
「はっは、相変わらずだね。その搾搾というのはあまり理解はできないけど興味深いとは思ったよ。」
「んで面白いものってなんだよ。」
「私も気になるー。」
「君らも見ただろう?あの人を精巧に模した機械を。」
「あーナナシのことか。お前もマッシャーと同じ口か?」
「いやいやただ興味が湧いただけだよ。戦ってみたいかは別さ。でもマッシャーをここまでさせるのだったら手合わせしてみたいけどね。」
「その時は教えてねー。スーが戦うところ見たいー。」
「俺も見たいな。」
「駄目ですよぅ。私のものですぅ。」
マッシャーは頬を膨らませ怒る。3人の反応にスーは苦笑するが気を取り直すように咳払いを1つするとまたいつもの笑顔に戻った。
「マッシャー怒らないでよ。君の獲物を奪う気はない。ただ僕としては興味が湧いたというだけだ。」
「本当ですかぁ?」
「本当さ。」
「……。」
「……。」
マッシャーとスーは目を合わせ少し沈黙する。するとマッシャーは顔をフニャッとさせて笑う。
「冗談だったんですねぇ。怒って損をしてしまいましたぁ。」
「はっは。ごめんよ。」
「それで、次はいつ集まる?」
とんだ茶番を見たとでも言いたげな顔でラビドーは言う。
「うーん、そうだな。大体3人が片付け終わったら僕がまた集合をかける。それでどうだろう?」
「ようするにいつも通りってことだな。」
「そうとも言うね。」
「了解した。」
半ば呆れたようにラビドーは返事を返し伸びをする。それにつられて肩がコキコキと小気味よい音を出し息を吐いた。
「場所はここから南、細かいところは追って伝えるよ。」
「ああ。じゃあ俺はもう行くぞ。」
「うん、気をつけて。」
「じゃあな。」
短く返事を返すとラビドーは一瞬でその場から姿を消した。
「それじゃー私も行く〜。」
「うん、いってらっしゃい。」
「行ってきまーす。」
ナーギルは軽く散歩に行くように言うとスーも気楽な調子で返す。
「あー何処だっけ場所ー?」
「ここから西に行って森が見えたら目的地。」
「なるほどー。わかったー。」
ナーギルは西に向かってスキップをしながら行く。おおよそ通常の人間がするスキップとは高さも距離も速度もおかしい。あっという間にナーギルは見えなくなっていた。
「私も行きますかねぇ。」
「そう?みんな仕事が早いね。」
「スーが面白い場所を見つけて来るからですよぉ。」
「はっは、ありがとう。」
「いえいえぇ。では私もそろそろ我慢が限界ですのでぇ。」
「ここから北に向かってすぐの町だよ。この街よりも規模は小さいからゆっくり楽しんで。」
「はいぃ、お気遣いありがとうございますぅ。」
「うん、次はもっと大きい場所を探しておくよ。」
「それはそれはぁ楽しみにしておきますねぇ。」
「楽しみにしてて。」
「はいぃ。ではいってまいりますぅ。」
「いってらっしゃい。」
マッシャーは片時も我慢できないといった調子で鈍器をだし鼻歌まじりに北に向かって走っていった。
最後にポツンと残ったスーはマッシャーの後ろ姿を変わらない笑顔で見えなくなるまで見ると1人はっはと笑う。
「3人を送り出したことだし僕もぶらぶらしよっと。それにしてもいいもの見つけたなあ。ギアボットか。この世界には知らないものがまだまだあるみたいだ。はっは飽きないねえ。」
スーは東に歩き出す。そこは1つの街中。4人が集まる場所だったために誰もいなくなった街。
「さて、それではお掃除といきますか。」
スーは笑って口笛を吹く。地面が石畳なのか木の板なのかわからないほど赤く染まった地面を歩く。
まるでその後ろ姿は血の泉に立つ悪魔のようだった。
4つ刃者の撤退後のお話でした。




